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暗号通貨で誰かを幸せにできるなら、僕はそれに挑戦したい -- 角谷茂樹さん

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10月10日は「日本銀行開業日」です。兌換銀行券の発行を一元化することで紙幣の乱発を回避し、通貨価値の安定をはかることを目的に、明治15(1882)年10月10日、中央銀行としての日本銀行が設立されました。

今回はそんな日にふさわしい「お金」がテーマです。

お金(いわゆる"通貨")とは「国家などによって価値を保証された、決済のための価値交換媒体」のこと。でも今回ご紹介する男性は、本来なら「国家などによって価値を保証される」はずの通貨を、独自に開発しています。一体どういうことでしょうか?

この謎を探るキーワードは"暗号通貨"。これは「特定の国家による価値の保証を持たない」「暗号で書かれている」「"どこへでも""簡単に""非常に低い手数料で"送金することができる」通貨を指します。このたびのインタビュー相手である角谷茂樹さんは、この"暗号通貨"の決済プロトコル(*「プロトコル」は広義にはシステムのこと)を独自に開発しており、しかもアジアにフォーカスした流通を目指しているのです。

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非常にスケールが大きい話に思えてきます。ただ角谷さんは、純粋に通貨の売買や取引の履歴を保存する"ブロックチェーン"の技術に惹かれ、気付いたら暗号通貨の開発を始めていました。

その一方で、いざ自身の暗号通貨を立ち上げた時は「すごく怖かった」と角谷さんは言います。新たなビジネスを始める時は"考えに考え抜いて"周到に準備し、機を見つけたら素早く着手すると言う角谷さん。そんな彼が絶え間なく前へ前へと走っているのは、暗号通貨が持つ可能性だけでなく、社会貢献分野にも暗号通貨の仕組みを応用できると感じたからでした。

*インタビュー@新宿

写真提供:角谷茂樹さん



■ 形も手触りも無いお金

私たちが独自に作ったお金、いわゆる"暗号通貨"は、一般の通貨のように、形があって手で触れるものとして世界に流通しているわけではありません。主にオンラインで取引が行われる、形も手触りも無いものが暗号通貨です。その代表が"ビットコイン"です。この名前は、昨今の報道などで耳にされたことがある方も多いと思います。

ビットコインに代表される暗号通貨の価値を保証するのは、国ではなく"通貨の利用者"です。利用者による暗号通貨そのものへの信用により、価値が保証されています。

オンラインで取引される暗号通貨は、その売買履歴や取引記録が保存されます。のちに詳しくお話しする"ブロックチェーン"という技術が、この履歴や記録の基礎となっており、それらは第三者が改ざんできないようになっています。記録は公開されていますが、誰かが勝手にブロックチェーンを書き換えることができません。

第三者により改ざんされないブロックチェーンの仕組みを利用した、独自の決済プロトコル「ベイジアコイン」を2015年5月25日に運営開始。そして先日9月15日にオンラインでの売買や取引を開始しました。

ベイジアのネットワーク内でも独自通貨が発行できるような仕組みも開発していますが、個人用とビジネス用に分けて、ビジネス用はコインの発行に対し、コインの保有者の承認が必要なシステムにする考えでおります。また与信枠に関しては、ゲートウェイ(インターネットのお金である暗号通貨の取引所)により信頼を持たせるため、 システム上の日本円の残高と実際に口座に入っている日本円が一致していることを示す公開制度や、ユーザーの評価機能なども検討しています。

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■ 代議士秘書から起業の道へ

私が独自通貨を開発したり、金融関連ビジネスに興味を持ち始めた背景は、私が20代の頃までさかのぼります。

鼻っ柱の強かった学生時代、当時の先輩に財務省や警察庁の方がいました。彼らの「国を支えるんだ!」という使命感をかっこよく感じて、自分もキャリア官僚になりたいと思いました。それから私は経済産業省を目指しましたが、勉強不足で志半ばのまま、一般企業に就職しました。

私が入社したのは、石油会社でした。その会社を選ぶ時も、油田を国内外で開発し日本のエネルギーを支えているというところに惹かれて入りました。油田開発が成功し、櫓(やぐら)に火が付く瞬間はすごく感動しましたし、海上油田の開発などは非常にロマンに溢れていました。

その後、縁あってある議員の秘書を3年ほど務めさせていただき、政策立案や、日本の経済と政治の関わりを現場レベルで見てきました。支援者や議員の先生方にご指導いただきながらも、休みがろくに取れない大変な仕事でしたが、代議士だけではなく、秘書である私自身も国の政策立案に自分も携わっているんだという自負がありましたし、使命感の炎のようなものも小さいながら燃えていました。地域の方々や代議士の方々からいただいた厳しいご指導に歯を食いしばって耐えてこられたのも「自分もいつか代議士として立候補しよう」という気持ちがあったからだと思います。

しかし、私にはあるものが心に残っていました。"経営の神様"であり、後に松下政経塾を創設した松下幸之助氏の「政治家たる者、自分で自分の飯を作れ」という言葉です。先ほども申したように、政治の道に行くことを考えていましたが、松下氏の言葉が示すように、ビジネスも経験した視野の広い議員になりたいと思いました。 だから私は"自分で自分の飯を作る"ために、起業の道を選びました。



■ 暗号通貨に出会う

まずは少ない資本で始められるIT関係の仕事で起業しました。ウェブ制作に始まり、やがてシステム開発を請け負うようになりました。代議士秘書時代の人脈をビジネスに活かそうなどとは全く考えていませんでしたが「代議士秘書という肩書きがあったからこそ偉い方々と会えていたのだ」と痛切に感じました。ビジネスの難しさや奥深さを学ぶうちに、どんどんビジネス全般やIT関連業務に惹かれていきました。

そのうちFXなどのオンライン金融取引システムの構築を受注するようになり、徐々に金融の世界に近づいてきました。

昨年(2014年)のある日のこと。「"Ripple"という暗号通貨の決済プロトコルを使った取引システムを作ってほしい」という依頼が私のもとに来ました。

それが暗号通貨との出会いでした。当時はあまり興味がありませんでしたが「しょうがない、仕事だからやるか・・・」と割り切り、システム開発のために暗号通貨について徹底的に調べ上げました。

それは非常に難解で、それまで携わってきた仕事の中で一番大変だったと言っても過言ではありませんでした。何とかシステム稼働にこぎつけましたが、それもFXなど金融系のシステム構築をすでに経験していたからこそ可能だったのだと思います。



■ 独自に暗号通貨の決済プロトコルを開発

この業務を経て、暗号通貨への興味が湧いてきました。しかも私が開発に携わった決済プラットフォームは、オープン後、値段が上がっていったのです。「価値を感じる人がいるから、それに対する価値が生まれたり、価値が上がるのだ」ということを肌で感じました。江戸時代に持って行っても誰も価値を感じてくれないかもしれない1万円を、私たちが価値を感じるというのと同じですね。

思い返せば代議士秘書時代、ある大手銀行のトップの方々と名刺交換をさせていただき、彼らのスマートな立ち振る舞いを見て「自分もいつか銀行を作れたら・・・」と秘かに思ったりしました。

その頃の記憶が蘇ったのです。そして暗号通貨への興味がフツフツと湧き「自分も独自の決済プラットフォームを作りたい!」と思いました。

でも踏ん切りがつきませんでした。それは皆さんのご記憶にまだ残っているであろう、2014年に起きたマウントゴックス取引所(東京・渋谷)での大量ビットコイン消失事件に、私も引きずられていたからです。

ハードな開発が一段落つき、小休止後に精神的にも体力的にも回復した頃、ビットコインをもっと勉強したいと思い、勉強会などに顔を出し始めました。そしてビットコイン関連でいろいろなスタートアップがあることを知り、ビットコインへの理解を深めていきました。

それとともに、ブロックチェーンの可能性を感じました。ブロックチェーンとは、分かりやすく言えば「どのアドレスからどのアドレスへ通貨が移動されたか」というトランザクション(取引)の履歴を保存するシステムです。海外の銀行ではブロックチェーンのテクノロジーに目を付け、実験的にそれを取り扱うところも増えてきています。世界的クレジットカード会社であるVISAも、インド第3の都市バンガロールにブロックチェーンの開発チームを数百名も擁していると聞いています。

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またブロックチェーンから派生して、コントラクト(契約)に関するオープンソースであるethereum(イーサリアム)や、市場予測のオープンソースであるAugur(オーガー)といった革新的なプロジェクトも生まれています。

特にethereumが描いている未来を最初に聞いた時は驚きました。
「ほぼゼロのコストで、特別な中央機関を要せず、デジタルで表現できるあらゆる権利や契約といったことが低コストで実現できる。ほぼゼロのコストで、デジタルコンテンツから株券、不動産登記の契約書などの所有権の移動を特別な中央機関を介さず実現できる」

つまり、行政などが行う業務も私たちだけで可能になる - まさに衝撃でした。そのような大きな可能性を秘めたブロックチェーン、そしてその仕組みを利用した暗号通貨に、私は次第に惹かれていきました。

私が前に開発を受注した取引システムで流通される"Ripple"という暗号通貨を調べた時 「通貨の取引を特別な中央機関を介さず実現できる」というコンセプトに共感を覚えました。しかし、他の誰かが作ったプラットフォームの上で運営するものは、自分としてはもはや興味はありませんでした。それより、自分がRippleやethereumのような独自のシステムを作ったほうが面白いと思いました。

こうして2015年、遂に私は独自の暗号通貨を開発しました。「マーケットや発行通貨枚数を絞り、アジア地域に根ざす通貨を作りたい」という思いを込めて、私はその通貨に「ベイジア(Baysia)」という名前をつけました。

現在は私が開発を指揮しています。将来的にはブロックチェーンの技術を活用し、暗号通貨の決済プロトコルだけではなく、株式や他のデジタルコンテンツに活かせるプラットフォームを開発していきたいと思っています。また、アジア地域だけでなく欧米にもアジア人がたくさん住んでいますが、将来的にはその人たちにも、私たちの決済プロトコルを使っていただきたいと思っています。

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■ 現実と誠実に向き合う

私はこれまで商売を、自分の身元も顔も全て表に出して営んできました。そんな私のビジョンに共感してくれた開発メンバーや元グローバル金融機関ファンドマネージャー、私が今も代表を務めるIT関連会社と付き合いのある営業チームなどが集まってくれたからこそ、ビジネスの輪が広がっています。だから絶対に悪いことはできません。

しかも、もし暗号通貨のビジネスを始めたら、お客様からの資産の一部をお預かりすることになり、故にとても大きな責任を伴います。生半可な知識や覚悟では扱えない代物です。

とは言え、このビジネスを立ち上げたのは私です。だから私が前面に立たないと何も進みません。「とにかく誠実に暗号通貨、そして暗号通貨を取り巻く現実と向き合おう」と思っています。

通貨取引のための口座開設の受け入れを始めたのは、2015年5月25日。まだそれほど時は経っていません。しかも口コミだけで広めているにも関わらず、国内外に「ベイジアコイン」の名前が徐々に広がっているのを感じます。

ただ一方で日本国内では、人に私たちの暗号通貨のことを伝えたら、冷たい対応をされたこともありました。暗号通貨に関する一連の報道の影響だと思います。このような方がいらっしゃることを常に意識して、誠実に説明を尽くしながら、私は前進していこうと思います。



■ "裸足の少女"が投げかけた疑問

私たちが開発した「ベイジアコイン」を、世界の人口の約半分が住むアジア全域に広めたいと考えています。そのために、日本国内に限らず香港やインドでも、暗号通貨の市場開拓のディレクションや、現地のビジネスパートナーとの関係構築を行いながら、彼らとガップリ四つになって海外展開を進めています。そのような私たちの積極性に共感していただいたからか、台湾やシンガポール、オーストラリア、ニュージーランド、カンボジア、韓国などの事業者から、それぞれの地域で私たちの通貨を広めたいという、大変ありがたいオファーを受けています。

そんな私たちの海外展開で特に重要視しているのが、人口12億5000万人の大国・インドです。

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Baysiaインドオフィスがあるビルの食堂の様子

インドはマーケットとして非常に成長しているだけでなく、英語の話せるハングリーな人材や優秀なエンジニアがたくさんいる国です。最近では、グーグルの新しい社長にインド人のサンダー・ピチャイ氏が就任しましたね。

しかし、私がインドの人たちにも自分たちの決済プロトコルを使っていただきたいと思っているのは、そのような経済的な理由だけではありません。

19歳の頃、私の姉とインド人男性との結婚式で初めて渡った異国の地 - それがインドでした。その後何度もインドに渡り、学生時代は半年ほどかけて北から南を縦断しました。その間、親戚の家に泊めさせていただいたりしながら、インド人の温かさや文化に触れました。

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インドの親戚たちと。左端はベトナム企業での最高技術責任者などを担当してきた日本人開発エンジニア

時は過ぎ、暗号通貨の開発と運営に着手し始めてから1か月ほどが経った2015年6月末頃、私は再び現地に行きました。

エンジニアである義兄の弟さんに会うために、インド西部の街・プネーに行った時のこと。ある日私がジョギングをしていると、裸足で歩いている3歳くらいの女の子がいました。よく見ると、汚れた服装をした近所のおじさんがそばにて面倒を見ているような感じがしたので、そのおじさんに少し話しかけてみました。「この子にはお父さんやお母さんはいないのですか?」と聞くと、理由はわかりませんが「いない」と言われました。

家を持たないリキシャ(いわゆる"人力車")の運転手が、夜は路上で寝ている国。人口12億5000万人のうち、上位半分が富裕層と中間層であり、残り約半数の6億人が貧困層と言われる、貧富の差が激しい国インド。カーストが上位の人でも貧しかったり、カーストが下位の人でも裕福な人がいる。そのような状況も分かっていました。貧しい暮らしから抜け出すために子供を売ったり、子供に物乞いをさせるということが貧困層で行われていることも知っていました。

でも、何か腑に落ちませんでした。



■ 生まれた使命感

私はふと、起業したばかりの頃を思いました。当時はお金もなく、シェアオフィスに置いていた私の事務所に寝泊まりしながら仕事をし、サウナを自宅のように使う生活をしていました。でも私は、豊かな日本で両親から教育をしっかり受けさせてもらったし、社会に鍛えられて自習の精神と自立心を培ってきたからこそ、ビジネス立ち上げ時の辛い時期を乗り越えることができました。

でも一方で、あの裸足の少女や、売られたり物乞いをさせられる子どもたちには、自立するための教育を受ける機会も、教育を受けるためのお金もない・・・私は絶望にも似た感情に襲われました。

私は日本に戻ってからもずっと自問自答を繰り返していました。いろいろとインドでお世話になっている、私にとって"兄貴"のようなインド人に聞いても「まぁ、仕方ないよ」と返ってくるだけでした。

それからというもの「社会に何か還元しないといけないのではないか?」という疑問が私の脳裏を去来しました。ビジネスをしていても、一方で社会性を意識するのは、先ほど申したように代議士秘書の経験があったからかもしれません。

それに、そもそも自分から誰かの役に立とうとしなければ、社会に受け入れられるわけがありません。今自分が立ち上げている暗号通貨の決済の仕組みを用いて、通貨に投資する人と貧困層をマッチングさせることができるのではないか?と考え始めました。

また、暗号通貨に投資する人たちとの合意次第では、投資していただいた資金の一部をマイクロファイナンスや、クラウドファンディングに充てていけるのではないか?と考えたのです。もちろん、お金をただ寄付するだけでは意味がありませんが、自立や教育への支援を目指し、中長期的な発展を視野に入れた循環型システムができると考えています。

さらに「ベイジアコイン」の販売・市場開拓パートナーを買って出てくださっているカンボジアの事業者さんは、現地で学校を経営しています。私は彼らに、一緒にインドで子供たちに教育機会を提供していただけないか、ご相談しているところです。

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社会は"助け合い"で成り立っており、その輪は同じ国の中だけに留まりません。国境を越えて人は助け合っていくものだと思います。私がそのようなインドの闇の部分を目にした時「今こそ、その時ではないか」と思いました。そして暗号通貨は、ひとつのソリューションになるのではないか、と思いました。

社会的弱者に目を向けるのが政治だと思います。そのような視点を養ってきたからこそ、目の前に困っている人がいたら助けられないかと私は考えます。それが、あらゆる人たちが共存する社会のあるべき姿だと思います。

どのようにして暗号通貨を通じて循環型社会や、それに向けてのインフラを作っていけるか。私はこれからも、試行錯誤しながら改善を続け、具体的な方法を模索し続けたいと考えています。

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【関連リンク】

ベイジアコインHP:http://japan.baysiacoin.com/



(2015年9月15日「My Eyes Tokyo」に掲載された記事に加筆の上転載)

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