BLOG

幹細胞発生の抑制因子

2017年08月21日 00時42分 JST

Mek1/2とGsk3βの阻害剤は、着床前胚の内部細胞塊に非常によく似た、基底状態の多能性を持つマウス胚性幹(mES)細胞の樹立を亢進させる。

しかし、こうした条件下での長期培養がmES細胞の発生能へ及ぼす影響についてはよく分かっていない。

K Hochedlingerたちは今回、こうした培養条件が、mES細胞のエピジェネティック特性、ゲノム安定性およびin vivo発生能に有害な変化を引き起こすことを示している。

彼らは、Mek阻害剤が、観察された異常と関連するDNAメチルトランスフェラーゼの発現を変化させることを見いだし、代わりにSrc阻害剤を用いると、これらの異常は起こらず、mES細胞のゲノム完全性と発生能が保たれることを見いだした。

また、別の論文では山田泰広(京都大学)たちが、このような培養条件下で雌のmES細胞を樹立すると、DNAメチル化やゲノムインプリンティングの消失が引き起こされ、分化後も回復しないことを示している。

このようなmES細胞は胚や胎盤への発生能が損なわれていることも分かった。山田たちの研究チームはさらに、雌ES細胞のゲノム特性を保持する培地の開発も行っている。

Nature548, 7666

2017年8月10日

原著論文:

Prolonged Mek1/2 suppression impairs the developmental potential of embryonic stem cells

doi:10.1038/nature23274

Derivation of ground-state female ES cells maintaining gamete-derived DNA methylationdoi:10.1038/nature23286

【関連記事】

視床下部は老化速度を制御する Nature548, 7665 2017年8月3日

ヒト誘導多能性幹細胞の変動をマッピングする Nature546, 7658 2017年6月15日

P53変異を持つヒト多能性幹細胞の増幅 Nature545, 7653 2017年5月11日

骨髄の緊急時の血液バンク Nature544, 7648 2017年4月6日

代謝と腸の再生 Nature543, 7645 2017年3月16日