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もし日本が資源大国になったら(上野剛志)

2013年07月31日 22時26分 JST | 更新 2013年09月30日 18時12分 JST

「資源大国」は資源の乏しい日本から見ると羨ましい存在だ。何より裕福なイメージがある。

実際、豊かさを示す一つの指標である2012年の世界の一人当たり名目GDPランキング(出典:IMF)を確認すると、中東産油国のカタール(2位、9.97万ドル)、アラブ首長国連邦(6位、6.48万ドル)のほか、北海油田を持つノルウェー(3位、9.95万ドル)、鉄鉱石や石炭等が豊富なオーストラリア(5位、6.77万ドル)といった資源大国が軒並み上位に名を連ねている。日本(13位、4.67万ドル)も上位ではあるが、一人当たりGDPの金額では大きく水をあけられているのが実情だ。

しかし、わが国についても最近では資源・エネルギー関連の明るいニュースが多い。日本近海において、年間天然ガス使用量の100年分に相当する膨大な量が存在すると言われてきたメタンハイドレート(メタンが水と結合してシャーベット状になったもの)の試掘では、今年3月に世界で初めて海底からの採取に成功し、採取量も目標を上回った。また、シェールガス、オイルの生産テストでも、昨年10月にガス、今年7月にオイルの生産に成功している。さらに、日本近海の海底には大量のレアメタルやレアアースが眠っていることも最近確認されている。

それでは、もし日本が資源大国になったら、どのような変化が期待できるのか、考えてみたい。

考えられるメリットは多い。震災後の日本の貿易収支は赤字だが、原油・天然ガス等の輸入増大と価格の高止まりの影響が大きい。つまり、日本の富が資源国に大量に流出しているということだ。2012年度における日本の資源(鉱物性燃料、鉄鉱石、非鉄金属鉱)輸入額は27.5兆円にものぼる。もし、自前のエネルギー・資源を開発できれば、その分富の流出を抑えられる。その際、一人当たりGDPも上昇するはずだ。また、わが国の優先課題である財政赤字の改善にも寄与する。ロシアやサウジアラビアのように資源開発会社を国営にすれば直接的に歳入が増え、民営であっても税収入の増加が期待できるためだ。加えて、現在のように海外の地政学リスクや国際商品価格の動向に国内経済が左右されにくくもなるだろう。

反面、デメリットも考えられる。物事の仕組みが変わる際には、往々にしてメリットと同時にデメリットも生じるものだ。その一つは円高リスクである。現在の日本は資源を輸入して、それをもとに工業製品を製造し、輸出する貿易構造だが、資源を輸入しなくてもよくなると大幅な貿易黒字となる。貿易黒字は為替取引において恒常的な円買い需要を発生させるため、円高圧力になる。円高が進めば、わが国製造業が輸出競争力を失う懸念がある。

また、自前の資源を手にすることで、太陽光や風力など新エネルギーや省エネルギー技術の開発・普及の意欲が削がれ、現在の技術優位性を失うかもしれない。「必要は発明の母」と言う。資源が少ないことが、日本の新エネ・省エネ技術を研ぎ澄ましてきた。

つまり、資源大国化することで、現在の日本経済を支えている工業製品や新エネ・省エネ技術での優位性が失われる懸念がある。

このようにいいこと尽くめではないと思われるが、日本経済の成長や構造問題解決の切り札にもなり得るという点に加え、将来的に世界で資源・エネルギー不足が発生するかもしれないというエネルギー安全保障上の観点からも、資源大国化のメリットは捨てがたい。少なくとも、国策として「開発出来る」体制を整えていくことは有意義だろう。

現在のところ、開発技術はまだまだ発展段階にあり、こうして資源大国化後のことを考えるのは「宝くじに当たったらどうしよう」的な面があるのも否めない。しかしながら、米国ではシェールガス、オイルの生産が順調に拡大しており、近い将来には純輸出国になることが予想されている。少し前には予想できなかったことだ。わが国についても、将来資源大国になれる可能性はある。実際、日本は今でこそ資源に乏しい国だが、数百年遡れば「黄金の国ジパング」であった。

ここで鍵を握るのはやはり技術力だ。米国のシェールガス実現も水圧破砕法という技術の開発によるところが大きい。具体的には、「生態系に悪影響を与えず、大量にかつ安く生産できる世界最先端の技術」が不可欠である。生態系を破壊してしまったり、1万円分の資源を取り出すのにそれ以上のコストが掛かったりしては元も子もない。

一般的に「日本の技術力」というと、自動車や家電などハード面における製造技術がぱっと思い浮かぶが、こうした資源開発面においても最先端技術を生み出す力が必要だ。ある意味、国全体の命運を左右するテーマと言っても過言ではない。

2013年07月31日の「ニッセイ基礎研究所 研究員の眼」より転載しました)