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ロシア見聞録 -「ソ連」から「ロシア」へ:研究員の眼

2016年04月18日 15時17分 JST | 更新 2017年04月18日 18時12分 JST

前回:ロシア見聞録(その2)-「芸術の都」サンクトペテルブルク

1991年に社会主義のソ連が崩壊、新生ロシア連邦の誕生から四半世紀の間にロシアにどんな変化が起きたのだろう。

モスクワ空港の入国審査官の無表情な対応やロシア国内線の客室乗務員の無愛想な機内サービスは、かつての社会主義国のイメージそのものだった。

一方、到着したホテルでは笑顔で出迎えを受け、そのギャップに「ソ連」から「ロシア」へ移行しているこの国の現状を見た思いがした。

ロシアの人々は、新生ロシアをどのように思っているのだろうか。

現地のロシア人ガイドに聞くと、年金暮らしの高齢者の多くは、旧ソ連時代を懐かしんでいるという。ソ連時代は住宅、医療、教育、雇用から老後の生活まで国が保障してくれる安心社会だったが、ロシアになってからは市場経済の下で自助努力が求められるからだろう。

一方、若い世代を中心に、社会生活の自由度の拡大や生活水準の向上、消費の多様化などを評価していることも確かだろう。

ソ連からロシアへ、計画経済から市場経済への移行過程で、ロシアでは人口減少や平均寿命の変動が著しい。

ロシア人の平均寿命は2013年で男性66.0歳、女性76.4歳と先進諸国に比べて非常に短い。その推移をみると、ソ連が崩壊した1991年以降は男女共に急速に寿命が低下し、94年の男性の平均寿命は57.8歳と年金受給年齢の60歳にも満たなかった。

その後、95年から上昇に転じ、通貨危機のあった98年以降は再び低下、2006年から現在まで上昇している。戦争や伝染病、飢餓等の特殊要因を除き、これほど短い周期で平均寿命が上下することは極めて珍しいのではないだろうか。

ロシア人が短命である大きな理由は、ウォッカなどのアルコール度数の高い酒類の過剰摂取のためと言われている。アルコールに起因する心疾患に加えて、自殺、他殺、事故も多い。また、ソ連からロシアへの社会経済体制の転換による生活環境の変化が、心理的ストレスにもつながっているだろう。

さらにロシアでは公的医療費は無料だが、所得格差の拡がりにより富裕層は高度な有料医療サービスも受けることができるようになり、社会階層による健康格差が生じている。

旧ソ連時代はモノ不足で、市民は日用品を買うにも長い行列に耐えた。モスクワなど大都市郊外にはダーチャと呼ばれる菜園付きの小さな別荘が多数あり、そこで多くの市民は週末や長い夏の休暇を過ごす。ソ連崩壊直後のモノ不足の時も、ダーチャの自給自足的な暮らしと人々のつながりで苦境を凌いだという。

市場経済化が進み格差と貧困という新たな課題に直面するロシアだが、今後とも社会主義時代の市民の暮らし方が課題解決の一端を担うのかもしれない。

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(2016年4月12日「研究員の眼」より転載)

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社会研究部 主任研究員

土堤内 昭雄