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バーニー・サンダースの勢いが止まらない 若者の熱い支持は世界を変えるか

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BERNIE SANDERS
PHILADELPHIA, PA - APRIL 6 : Bernie Sanders pictured speaking at a rally at the Liacoris Center at Temple U in Philadelphia, Pa on April 6, 2016 photo credit Star Shooter / MediaPunch/IPX | Star Shooter/MediaPunch/MediaPunch/IPx
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何気ない日常生活の繰り返しにまぎれて、未知の時代の訪れを告げる「変化の芽」がぐんぐんと伸びてきたことに気づいた時に、瞼を見開いて「何が起きているのか」を見据えたくなります。「トランプ現象」に目を奪われている間に、もうひとつの米大統領予備選で風雲を呼び起こす「サンダース現象」が台頭してきました。バーニー・サンダース上院議員は7連勝を重ね、ヒラリー・クリントン上院議員を猛追しています。

サンダース氏、ワイオミングで勝利確実 直近は7連勝
米大統領選の民主党候補者指名争いで同党のワイオミング州党員集会が9日にあり、サンダース上院議員(74)が勝利を確実にした。AP通信が伝えた。これで同氏は、直近の予備選・党員集会が実施された8州のうち、7州で首位のクリントン前国務長官(68)に連勝したことになる。
同州で配分される代議員は14人。サンダース氏が55.7%の票を獲得し、クリントン氏の44.3%を上回った。ただし、代議員の配分では両者が7人ずつとなった。
 2月に始まった指名争いで獲得した代議員の総数では、依然としてクリントン氏が上回っているが、サンダース氏が少しずつ差を縮めている。(2016年4月10日朝日新聞)

民主党予備選の緒戦の段階では、サンダース候補が本命のヒラリー候補を、ここまで激しく追う結果になることを予測していた人はほとんどいなかったと聞きます。これまで政治に背を向けてきた若者層から圧倒的な支持を受けていることや、大企業やウォール街からの大口企業献金を受けずに、個人献金と草の根ボランティアで選挙戦を展開していることなど、これまでの大統領選挙の光景を一変させたのも「サンダース現象」の特徴です。

「サンダース世代」とは何か? 社会主義者・サンダース氏を若者が支持する理由
 サンダースを支持しているミレニアル世代(2000年以降に成人した世代)は、大恐慌以来最悪といわれる経済の中で生きてきた。(中略)
 ミレニアル世代は、大きな借金を抱えながら社会人生活をスタートさせる最初の世代だ。大学に通うために、たくさんのお金を借りねばならなかったのだ。共和党が国と州レベルで大学の予算をカットしたため、授業料と入学金が跳ね上がったのが大きな原因の一つだ。だから共和党により責任がある。しかし民主党も共和党も、大学の授業料を借金することを問題視していなかった。その点では共犯だ。
 学生や若者たちが、このひどい状態にいつ抗議の声を上げるのだろうと私は考えていた。2016年の大統領選挙で、ようやく彼らは抗議を始めている。公立大学の授業料無償化を掲げるサンダース氏への支持を表明することによって。(『ハフィントンポスト』ブログ ロバート・カット)

アメリカの若者たちが苦しむのは、高すぎる学費の負担だけではありません。卒業後の雇用先も不安定な非正規雇用が広がり、学費ローンを支払い続けながら、先が見えない閉塞感に陥る若者たちが増えています。この点で、日本もまったく同じ状況です。若者たちは、単なる「学費無料化」に突き動かされているわけではありません。「一握りの富裕層が富を独占して豊かになり、多くの人たちが貧困に苦しむ、格差を拡大している社会システム」に怒りは向かいます。

アメリカが「民主社会主義」に変わる?
 「民主社会主義者」を自認するバーニー・サンダースは、格差是正やTPP反対、LGBTの権利拡大を訴え若者から高い支持を集めている。そしてニール・ヤングやサイモン&ガーファンクルのアート・ガーファンクルが自らの楽曲を選挙運動に使用することを許可しているほか、哲学者ノーム・チョムスキーやアーティストのシェパード・フェアリー、人気ロック・バンドのレッド・ホット・チリ・ペッパーズらもサンダース支持を表明している。(webDICE「骰子の眼」2016年2月2日)

格差是正と公平で平等な社会の実現を掲げて、アメリカ社会の病理に立ち向かうサンダース氏の政策が、社会システムから排除されて疎外感を持ってきた若者たちを引きつけました。そして、政治から最も遠い距離にいると見られていた若者たちが、政治光景を塗りかえようとしています。

bernie sanders

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サンダース氏への献金、勝ち目薄くても衰え知らず
 米大統領選の民主党候補指名を争っているバーニー・サンダース上院議員は、勝ち目が薄い状況に変わりはないものの、依然として潤沢な献金を集めている。あと数カ月間はヒラリー・クリントン氏との指名争いを続けられることが確実とみられる。
 党指名への道は著しく狭まっているサンダース氏だが、3月には4400万ドル(約49億円)の資金を集めた。選挙資金の専門家たちは、こうした現象は政治的重力に逆らうものだと指摘する。つまり、通常は候補者が予備選や党員集会で負け始めると、選挙資金の流れが著しく鈍化するということだ。
 しかし、サンダース氏の資金集めは小額のネット献金を中心に、一定のペースを維持している。3月後半に西部各州で勝利を続けたこともあり、4月に入って献金と新たな勢いの両方を得ている。リアルクリアポリティックスの世論調査の平均を見ると、サンダース氏は5日予備選が行われるウィスコンシン州では支持率でクリントン氏を小幅リードしており、その2週間後の19日にはニューヨーク州予備選という天王山を迎える。
 サンダース氏の集めた献金額は今年に入って毎月伸びており、1月は2130万ドル、2月は4350万ドルだった。クリントン氏は3月の選挙資金額をまだ公表していないが、1月と2月についてはサンダース氏を下回った。(『ウォールストリート・ジャーナル』2016年4月4日)

小口の草の根献金が、大きく膨張していく勢いには驚きます。「サンダース現象」は、これまで沈潜していたマグマが表出して、時代の変化の始まりを告げてきているようにも思えます。アメリカ社会に広がる格差と貧困の不条理を前に抑えつけられてきた若者たちが、イラク戦争開戦にも信念を持って反対票を投じた平和と平等の闘士に、世代を超えて共鳴共振する回路を構築させているように感じます。

組織票を持つ大企業や業界団体の力が政治を決める時代が長く続いてきました。巨額の選挙資金が動き、組織がフル回転し、権力を争奪するパワーゲームとして選挙戦が展開してきたのは、アメリカ大統領選挙だけではありません。けれども、もっとも熾烈なパワーゲームが繰り広げられるアメリカ大統領選挙で、「無数の個人」「草の根の支持」の力が従来考えられなかったほどに強くなり、そしてリアルパワーとなってきたことは「大きな変化」です。

「政治家の質」も企業・団体や有力者に依存するタイプから、「無数の個人」「草の根の支持」に呼応して水平的な協働関係を紡いでいくタイプへと変わっていくべきだと思います。日本でも、若者たちの前に広がる格差と貧困の壁はアメリカと同質同様です。安保法をめぐっては昨年来、自分の言葉と感性で「政治に異議申し立て」をする若者の姿も、全国に登場してきました。

私も1996年に衆議院議員として政治の世界に足を踏み入れて20年、大きな組織・団体に頼らずに、「無数の個人」「草の根の支持」に支えられて政治活動を継続してきました。上下関係やピラミッド構造を持つ特定の支援団体は持ちません。今回の「サンダース現象」を見ていて、政治をめぐる社会システムや参加の構図が動き出していると感じます。思いを言葉に、言葉を政策に、政策を総合ビジョンへとまとめあげていくことで、ほんの少し開いてきた政治の質を変える「大きな扉」を開きたいと思います。

3月26日、オレゴン州ポートランドでの演説会場で、熱弁をふるうサンダース氏が演説を中断して微笑む出来事がありました。

米大統領選に民主党から出馬しているバーニー・サンダース上院議員(バーモント州選出)が26日、オレゴン州ポートランドの支援者集会で演説中、小鳥が演台の上に舞い降りて、場内は大いに盛り上がった。 (2016年3月26日 BBC NEWS JAPAN)

サンダース氏の前でしばし羽を休めた緑の小鳥は、やがて勢いよくはばたいていき、会場を大きく沸かせたそうです。すかさず、サンダース氏は、「そうは見えませんが、あの鳥は白いハトなんですよ。世界平和を求めている! 戦争反対!」とアドリブをはさんで熱い喝采を受けたといいます。

アメリカ大統領選挙で起きている予想外のドラマは、私たちの生きている時代をよく表しています。力より知恵を、組織より個人を、集中より分散を、憎悪より愛を、戦争より平和をつくりあげていく「可能性のドラマ」を、日本でもつくりたいと思います。

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