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「改憲ステルス作戦」による「3分の2議席」を与えてはならない

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時事通信社
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7月10日の参議院選挙投票日が迫っています。今回の選挙では、18日間もの選挙期間にもかかわらず、テレビでの党首討論が6月24日(TBS)を最後に、2週間以上も行なわれないという「異例の事態」となっています。野党4党は、NHKや民放5局に対して党首討論を要請する申し入れを行ないましたが、実現していません。この間、「イギリスEU離脱」「年金運用損5兆円」「ダッカ人質テロ事件」と、今後の政治に大きな影響を与える事態は続いています。

党首討論を回避することで与野党対決の焦点をぼかし、参議院選挙を意識させない「ステルス作戦」なのでしょうか。実際、投票率が低いのではと心配されてきました。ところが、ニュース番組で、今回の参議院選挙に関して驚くべき数値を見たのでツイートしました。

報道ステーションのホームページによると、参議院選挙公示直前の6月18, 19日の調査で「あなたは参議院選挙で投票に行きますか」という質問に対して63%が「必ず行く」と答えています。 そして、7月2, 3日の直近の調査では、同じ質問に対して、「必ず行く・すでに投票した」が75%と12ポイントも上昇しています。調査対象の人数が1625人(電話調査・RDD方式)の世論調査ですが、数値上は参議院選挙への関心は高まっているように見えます。一方で、まったく正反対の世論調査結果もあります。

NHKが(7月)3日までの3日間で行った世論調査では、投票に「必ず行く」と答えた人と、「期日前投票をした」と答えた人が、合わせて64%で、前回の選挙の同じ時期と比べて、2ポイント低くなっています。さらに、各党や各候補者の陣営からは「選挙戦が終盤にさしかかっても、有権者の関心が高まっておらず、投票率は前回をさらに下回るのではないか」という指摘も出ています。(7月5日NHKニュース)

NHKの調査対象は3098人(電話調査・RDD方式)です。報道ステーションの調査結果が「関心上昇」であるとすれば、NHKは「関心低下」です。前者の結果に近づくことを望みたいと思いますが、今回の選挙の隠された大きな争点は「改憲可能議席3分の2」をめぐる攻防です。

与党とおおさか維新等、改憲に前向きな政党が参議院の議席の3分の2を超える結果となれば、すでに3分の2を確保している衆議院とあわせて「改憲の発議」が可能な状態となります。有権者の中で、安倍首相の進める「改憲路線」には警戒感もあって、「選挙の得票にならない」(与党幹部)として参議院選挙の政策として大きく掲げてはいません。ところが、2016年の年頭の記者会見等では、安倍首相自身が参議院選挙の目標として、「3分の2改憲議席の獲得」を掲げています。

「改憲の入口」は「緊急事態条項」という罠 (2016年1月12日)

年明け早々から、参議院選挙のテーマは「改憲」であると、安倍首相は自ら争点設定を急いでいます。1月4日の年頭記者会見で「今夏の参院選で改憲を争点にする考えを表明」(東京新聞) しただけでなく、1月10日放送のNHK番組でも、自民・公明の与党に加えて「おおさか維新の会」等を合わせて「3分の2」の改憲議席を狙うと表明しました。

また、参議院選挙前の党首討論の中でも、改憲についてと意欲あり、と安倍首相は本音を語っています。

安倍首相「次の国会から改憲議論」 参院選後 具体的に条文審査(東京新聞6月19日)

安倍晋三首相は19日、インターネット動画中継サイト「ニコニコ動画」の党首討論会で、改憲について「参院選の結果を受け、どの条文を変えていくか、条文の中身をどのように変えていくかについて、議論を進めていきたい。次の国会から憲法審査会を動かしていきたい。自民党の総裁としてぜひ動かしたい」と秋の臨時国会から、衆参両院に設置されている憲法審査会で、具体的な改憲項目の議論を与野党で進めたい考えを示した。

安倍首相が参議院選挙の街頭演説でも語らずに封印している「改憲への意欲」が、ここにあります。参議院選挙の投票日が近づいていますが、「改憲」についての議論は、ほとんど行なわれていません。参院選の結果を受けて、国の最高規範である憲法の「逐条審査をぜひやりたい」(安倍首相)と言うなら、どのような視点で審査を始めるのかを最優先の政策として語る責任があります。選挙中は、徹底した「ステルス作戦」で改憲を語らず、「改憲可能3分の2議席」を得たとたんに、憲法審査会で憲法の逐条審査から改憲の発議まで走り出そうとするのは、有権者の審判としての選挙結果と民主主義に背を向ける態度です。

私はここで、もうひとつの「永田町伝説」を思い出します。昨年9月の安保法の強行採決から9カ月。まさに「憲法解釈」を正反対にした重要な法案群が国会を突破していきました。「改憲」の前に「現行憲法の解釈」をねじまげる手法に対しては、与野党が憲法審査会に呼んだ参考人は全員が「憲法違反」と指摘しました。多くの人々が反対の声をあげました。

安保法成立、「国民はやがて忘れる」永田町伝説が崩れ去る日を(2015年9月21日)

与党国会議員の間で、語り継がれている経験則があります。「どんなに反対の声が強まっても、数カ月すれば国民は忘れてくれる」というものです。来年7月の参議院選挙の頃には、「記憶の断片」と収縮していくので影響は限定的だと、みずからに言い聞かせている言葉のようにも受け取れます。ところが、これはどんな時にもひっそりと永田町に棲息してきた「伝説」だったのですが、今回は活字となり、テレビで報道されています。

「忘れない」「問い続ける」のはメディアの役割です。そのメディアが、政権の意向を忖度(そんたく)して参議院選挙の報道を控え、「国民はやがて忘れる」という「永田町伝説」に追随していくような傾向が強まっています。それでも、有権者の間では「改憲可能議席3分の2」への警戒感も強まっています。

「改憲勢力3分の2」反対49%=アベノミクス半数評価-時事世論調査【16参院選】2016年7月4日

時事通信が1~3日行った世論調査によると、10日投開票される参院選で憲法改正に前向きな自民党など4党が改憲発議に必要な3分の2の議席(162)を確保することに「反対」と答えた人は49.6%で、「賛成」の31.5%を大きく上回った

イギリス国民投票では、「EU離脱」を先導した保守党のポリス・ジョンソン(前ロンドン市長)が土壇場で党首選への立候補を取りやめ、イギリス独立党のナイジェル・ファラージ党首が辞任表明する等、勝利したはずの「離脱派」の混迷が続いています。参考→EU離脱派の主役、また逃亡 ナイジェル・ファラージ氏「イギリス独立党」党首を辞任(2016年7月4日)

それでも「EU離脱」という投票結果は変わりません。「改憲可能議席3分の2」 が現実となってしまってからでは、「後悔、先に立たず」なのです。3年に1回の国政選挙での議論なき改憲へのステルス作戦に惑わされず、このような手法に強いブレーキをかける必要があります。

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