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組合から始まった 三重の取り組み

2015年05月25日 00時08分 JST | 更新 2016年05月24日 18時12分 JST

前回記事 ⇒どう生かす?2つの新制度

「安心の橋」を架ける地域の実践

2015年4月1日、全世代支援型社会保障へのモデルチェンジの柱として検討され、社会保障・税一体改革の中で実現した「子ども・子育て支援新制度」「生活困窮者自立支援制度」の2つの新制度がスタートした。連合がめざす「働くことを軸とする安心社会」を具体化する「安心の橋」を架ける第一歩でもある。

誰もが働くことを通じて社会に参加できる「働くことを軸とする安心社会」の実現にむけて、地域ではすでにさまざまな取り組みが広がっている。

障がい者がいきいきと働ける場をつくろうと、連合三重の呼びかけで実現した「ステップアップカフェCotti菜」、労働組合が立ち上がり「労働者・市民立」の児童養護施設「一陽」(を設立した越前自立支援協会)の取り組みをご紹介。

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ステップアップカフェ Cotti菜  障がい者がいきいきと働ける場

障がい者が働ける場の拡大に向けて社会全体で意識のステップアップを

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藤森久次 連合三重事務局長

 連合奈良の取り組みをモデルに

─設立までの経緯は?

三重県内における障がい者実雇用率は、過去10年間で4回も全国最下位を記録するほど低迷を続けていた。何とかしなければ、何か良い手立てはないかと頭を悩ませていると、2010年9月に隣の奈良県で、連合奈良が中心になって障がい者雇用促進のためのアンテナショップKIZUNA Caféが立ち上がった。

さっそく視察させてもらうと、行政、社会福祉団体、経営者団体と労働組合が互いに協力することで障がい者雇用を前進させていくという画期的な取り組み。これは素晴らしい、ぜひ三重県でも導入できないかと。

そんな折に、鈴木英敬三重県知事を座長とする「三重県雇用創造懇話会」が11年12月に設置され、その意見交換の場で連合三重の土森弘和会長より、低迷している県の障がい者雇用の現状を改善するため「奈良県と同様の取り組みを行えないか」と提案。すると知事をはじめ委員の方々も「KIZUNA Caféを見に行ってみましょう」ということになり、現地視察を踏まえて検討を重ねた結果、三重県として正式に進めていくことで一致した。

ワーキンググループでの議論を踏まえて、①「訓練の場(障がい者がいきいきと働く姿を発信する場)」、②「チャレンジの場(障がい者が作った商品を展示・販売する場)」、③「交流の場(障がい者に対する関心と理解を深める場)」の3つの機能を持った「ステップアップカフェ」のコンセプトが固まった。この「ステップアップ」には、障がいを持つ方に「働く」というステップを踏むことで自信をつけていただき、さらにその姿を多くの方に見てもらい交流を図ることで、障がい者が働くことに対する社会の理解を深めていくという意味合いが込められている。

レストラン・カフェの運営については、14年7月に県が運営事業者をコンペ方式で公募して、社会福祉法人朋友が提案したCotti菜のプランが採用された。朋友では、障がい者が社会的・経済的に自立するための就労支援A型作業所として、県内で自動車関連部品の組み立て加工を行っているほか、水気耕栽培で約8種類の葉物野菜を無農薬で育てて販売するなどの実績があり、その野菜を使ったメニュー(サラダバー、スムージー)がCotti菜で提供されている。

ちなみにCotti菜のネーミングは、「こちらへお越しください」という意味の三重弁と、お店で提供される野菜を掛け合わせたものだ。またCotti菜の立ち上げに当たっては、連合の「トブタカンパ(雇用・就労自立支援カンパ)」からも助成を受けた。

少し工夫するだけで働けるようになる

─オープン後の反響は?

12月24日のオープニングには県の内外から多くの方が訪れ、また新聞各紙にも取り上げられるなど大きな反響があった。連合三重の女性青年委員会の主催で、クリスマスにちなんだお菓子づくりを通じた、障がい者との交流イベントも行ったのだが、それも大好評だった。

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Cotti菜が入っている三重県総合文化センターには会議室もある。執行委員会などの会議はそこで行い、終了後には皆でお店に行って昼食をいただくなど、一人でも多くの方にCotti菜を知っていただく努力を続けているところだ。

─今後に向けては?

三重県における障害者実雇用率は、2014年6月1日時点で1・79%。前年の1・60%からは改善したものの、法定雇用率の2・0%を達成するまでには大きな隔たりがあり、全国平均の1・82%にも届いていない。

また、2013年度に県内約1万4000事業所を対象に実施した『障がい者雇用実態調査』によると、約75%の企業が「障がい者に適した仕事をみつけるのが難しい」、約25%の企業が「障がい者雇用についての従業員や取引先の理解が必要」と答えている。Cotti菜の取り組みが始まったことで、今後はこれらの数字が改善することを期待したい。でも数字のこと以上に大事なのは、働きたいと願う人が働ける場が確保されることだ。障がいを持っていても、働き方を少し工夫するだけで、「こういう形なら働ける、働き続けられる」ということは多い。Cotti菜で働く皆さんの明るい笑顔を見れば、そのことを感じ取ってもらえると思う。ぜひ一人でも多くの方にお越しいただきたい。

■ステップアップカフェ Cotti菜(こっちな)

http://www.cottina.jp/cottina.html

連合三重の働きかけにより、三重県が2014年12月24日に三重県総合文化センター内に開設した、障がい者が働くレストラン・カフェ。障がい者がいきいきと働く姿を多くの人に見てもらい、障がい者が働くことへの理解を深めることで、社会における障がい者雇用の促進につなげていくことを目的としている。

42席の店内で提供される和食中心の定食や、水気耕栽培の無農薬野菜を使ったサラダバー、スムージーなどが好評を博している。また店内のスペースでは、福祉施設で作られた商品も展示・販売されている。

※こちらの記事は日本労働組合総連合会が企画・編集する「月刊連合 2015年5月号」に掲載された記事をWeb用に編集したものです。「月刊連合」の定期購読や電子書籍での購読についてはこちらをご覧ください。

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