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大気汚染問題で中国人が政府を批判しない理由

2013年10月23日 22時39分 JST | 更新 2013年12月23日 19時12分 JST

中国のPM2.5問題がかなりひどいことになっていますが、これをまともに考えれば、きちんとした環境対策をとらない政府が悪いという発想になるわけですが、どうも中国ではそういう方向にはいっておりません。

これについてまず中国政府そのものがいろいろ責任転嫁をしているという側面は確かにあります(中国のスモッグと中国政府の責任回避)。しかし、それ以外にもいろいろ理由が考えられ、その点が如何にも中国的だったので、これについて少し。

1 責任の所在

中国の水質汚濁や空気汚染がひどいことは既に周知の事実ですが、これについても、取り締まりをきちんとしない政府というよりも、排水等を違法に流した企業が悪いという形で処罰されておしまいです。

ただ、大きい企業は地域の官僚と結びついているので、かなり大きな話題となって中央が直接乗り出してくるということでもない限り、内々で処理をしてしまうということもよくあるようです。

斯様に、誤魔化せる可能性が高いとなれば、何も無理に高い金をかけて、処理施設などの整備などを行おうという発想にはなりません。

実際問題、中国人一人一人の環境に対するモラルというか、意識が低いことも事実で、これをどうにかしなくてはならないという問題もあります(環境保護を訴える幕の下に立ち小便をする警官(写真))。

それに、排水の場合であれば、ある程度の目安を付けることが可能ですが、大気汚染となると特定の一社だけの責任ということは難しく、また車の排気ガスも有力な原因となっています。

そのため、責任が分散され、自分たちに帰ってくるという話で、特定の誰を追及することも難しくなります(中国の公害問題と中国人一人一人の責任)。それに、あまりこれを追及していくと、大気汚染を減らすために車に乗る回数を減らせという話にもなりかねません。

実際、北京オリンピックの時には、北京で車のナンバーによる交通規制が行われており、自分たちに不利益が返ってくる可能性が高いので、これもあまり強く言えないようです。

2 日常の生活

あれだけ大気汚染がひどい状態で、一般の人たちは、何もしないのかという話も聞きますが、泣き寝入りするのが殆どです。

人は守るべきものがあると、冒険しなくなるというのは良くあることです。それなりの仕事を持って、それなりの生活をしている中国人が考えるのは如何に現在の生活を維持するかということです。

多少水や空気に問題があっても、水は金を出して買ってくれば何とかなるし、空気は時間が経てばある程度回復します。

それに対して、これらの不満を下手に政府にぶつけたりして、目をつけられたら仕事も今後どうなるかわかりませんし、日常生活でもいろいろ不利益を被ることは明らかです。

これらはすぐに目に見える形で現れるわけですが、それに対して公害による被害は、長い年月をかけて少しずつ体を蝕んでいくので、今すぐどうこうということはありません。そうなると一般の方がどちらを選択するかは明らかかと思います。

80年代バブル華やかなりし頃、日本でも地上げが盛んに行われましたが、高度経済成長が続く、中国でも再開発は盛んで、かなり安い値段で強制収用が行われています(地上げに反対する老人をショベルカーで圧死させる中国(写真))。

こうした、強制収用で土地を無くした元農民などであれば、今更無くすものなど何もないので、デモだろうが、中央に対する抗議運動など何でもできますが、やはり普通の人はそうはいきません。

3 最後に

もちろん中国には言論の自由がないので、政府批判が自由にできず、普段から何かあると政府を攻撃するというパターンに慣れているどこかの国とは行動様式が違うということも考慮にいれなくてはなりません。

日本も「環境問題は政府の責任」という認識を国民が持っているから、こういう行動ができるという話で、以前(戦前から終戦直後位まで)はこういう発想そのものがなかったので、政府に賠償を求めるということを考える人もいませんでした。

中国の場合、共産党は人民の代表であり、人民の要望を取り入れて政策を行っていることになっているので、抗議を行うということは、共産党が人民の要望をきちんと取り入れていないということにもなりかねないという側面もあるため、いろいろ難しいという側面もあります。

2013年10月24日の「政治学に関係するものらしきもの」から転載しました。)