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魚を食べる菜食者は大腸がんになりにくい

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これまでの研究から、ベジタリアン(菜食主義者)は大腸がんのリスクが低い可能性が推察されていましたが、明らかにはされていませんでした。2015年5月、米カリフォルニア州のロマリンダ大学(Loma Linda University)の研究者たちは、実際にベジタリアンは大腸がんリスクが低いこと、ベジタリアンのタイプによってリスクが異なることを見出し、医学雑誌「JAMA Internal Medicine」に発表しました。ベジタリアンの何ががんリスク低減につながっているのかを知って、私たちの食生活にも取り入れてみましょう。

大西睦子の健康論文ピックアップ110

大西睦子
内科医師、ボストン在住。医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月から7年間、ハーバード大学リサーチフェローとして研究に従事。著書に「カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側 」(ダイヤモンド社)。

大西睦子医師に、食やダイエットなど身近な健康をテーマにした最新学術論文を分かりやすく解説してもらいます。論文翻訳のサポートと編集は、ロハス・メディカル専任編集委員の堀米香奈子が担当します。

菜食プラス魚が最も低リスク

大腸がんは、米国ではがんの死因第2位となっており、予防が重要視されています。これまでに、赤身肉を多く摂取すると大腸がんのリスクが高まり食物繊維を多く摂取すると大腸がんのリスクが下がることが研究によって明らかにされています。そのため、肉の摂取量が少なく、野菜や果物等を多く摂る食生活を送っているベジタリアン(菜食主義者)は、大腸がんが少ないと推察されていました。2015年5月、米カリフォルニア州のロマリンダ大学(Loma Linda University)の研究者たちは、ベジタリアンは実際に大腸がんリスクが低いこと、ただしベジタリアンのタイプによってリスクの程度が異なることを報告しました。

Orlich MJ, Singh PN, Sabaté J, Fan J, Sveen L, Bennett H, Knutsen SF, Beeson WL, Jaceldo-Siegl K, Butler TL, Herring RP, Fraser GE.
Vegetarian dietary patterns and the risk of colorectal cancers.
JAMA Intern Med. 2015 May 1;175(5):767-76.
doi: 10.1001/jamainternmed.2015.59.

この研究では、タバコやアルコールの節制やベジタリアンダイエットなど、健康的な生活を推奨している「セブンスデー・アドベンティスト教会(Seventh-Day Adventist church)」の米国とカナダにおける支持者を対象として2001~2007年に行われた疫学調査(Adventist Health Study-2:AHS-2)の結果が解析されました。AHS-2では、参加者に対し200以上の食品を含む食生活のアンケートと、その後も1年おきに追跡調査が行われました。研究者たちは、AHS-2に参加した成人のうち、25歳以上でがんに罹患したことがなく、健康な食生活を送っている7万7659人について、食事のパターンと大腸がんの発症の関係を調べました。対象者の52%がベジタリアンで、そのうち29%がラクトオボベジタリアン、10%がペスコベジタリアン、8%がビーガン、6%がセミベジタリアンでした(ベジタリアンの分類は表の通り)。

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平均7年間の追跡期間中、490 人が大腸がんを発症しましたが、ベジタリアンはベジタリアンでない人よりも大腸がんのリスクが22%低くなりました。中でも、魚も適度に食するベジタリアン(ペスコベジタリアン)は相対的な大腸がんリスクが43%も低くなりました。続くラクトオボベジタリアンは18%、ビーガンは16%、セミベジタリアンは8%、それぞれ相対リスクが低くなりました。

問題は肉だけじゃないかも

ベジタリアンが大腸がんになりにくい理由はどこにあるのでしょうか? 

大腸がん以外のデータを見てみると、ベジタリアンはBMIが低く、赤身肉や加工肉、脂質、飽和脂肪酸の摂取が少なく、食物繊維の摂取量は多いことが示されました。エネルギー摂取量は、特にセミベジタリアンで低い結果となりました。

以上も踏まえ、研究者たちはベジタリアンの大腸がんリスクが低い理由を次のように推察しています。

1.赤身肉そのものに含まれる、または調理の過程で生じる発がん物質のリスクを軽減できている。
2.様々な野菜や果物を皮付きのまま、丸ごと調理して摂取することも多く、食物繊維やその他ビタミン、ミネラル等の栄養素を多く摂取している。
3.精製された炭水化物、脂質、お菓子やスナック、砂糖入りの甘い飲み物の摂取が少ない。
4.2や3の食事は、リスク要因として懸念される高インスリン血症(血中の糖を体に取り込んで血糖値を下げたり、中性脂肪分解を抑制する作用を持つホルモンであるインスリンが、異常な高値示し続ける状態)や、インスリン様成長因子(細胞の成長や分裂を促進し、細胞死を抑制している重要なホルモンだが、過剰摂取ががん化につながることも懸念されている)の過剰な増加を回避できている。

大腸がん関連に限らず、AHS-2では、ベジタリアンはベジタリアンでない人に比べて以下の特徴が見られました。▽アルコールやタバコの摂取が少ない▽S状結腸鏡検査や大腸内視鏡検査などの精密検査を受けた回数が少ない(特にビーガン)▽アスピリン(鎮痛剤)やスタチン(コレステロール降下剤)などの薬の使用が少ない▽1年以内に糖尿病を治療した人や、消化性潰瘍を経験した人も少ない。実際、ベジタリアンはがんリスクに加え、肥満や高血圧、メタボリックシンドロームや2型糖尿病の割合も低いことが示され、健康的であることが報告されています。

またベジタリンの人物像としては、高齢で高学歴、身体活動が高く、ビーガン以外はカルシウムのサプリメントを使用している傾向が強く見られました。日常的に健康意識が高いことが読み取れます。

タンパク質などの栄養不足に注意

ただし、ベジタリアンには健康上の懸念もあります。米ブラウン大学のヘルスサービスのホームページによれば、ベジタリアンは、特に以下の5つの栄養素の不足に注意が必要です。

・タンパク質
植物性食品にも含まれますが、動物性食品に比べて一食あたりの含有量が少ないことに注意。豆類の他、タンパク源となる様々な食品を組み合わせることが役立つ。

・カルシウム
成人は一日あたり少なくとも1000mg摂取する必要がある(厚労省「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、成人男性650~800mg、成人女性650mgを推奨)。牛乳やヨーグルト、チーズなどの乳製品に多く含まれる他、ホウレンソウやケールなどの濃緑色の野菜、ブロッコリーや豆類、乾燥イチジク、ヒマワリの種などにも含まれる。乳製品を摂取しないビーガンは不足しやすく、注意が必要。食事からの摂取が最もよく体に吸収されるが、無理な場合はサプリメントの利用も考える。

・ビタミンD
カルシウムの吸収と利用を助ける。魚肉やキノコ類などの食品に比較的多く含まれるものの、量的には少なく、米国では乳製品で強化されている。屋外で10~15分の日光浴を行うことで皮膚でも合成される。食事から摂取できない人や日光を浴びない人はサプリメントを検討する必要がある一方、過剰摂取は毒性があるので注意が必要。

・鉄
不足すると貧血を引き起こす。濃い緑の野菜(例えばホウレンソウ、ブロッコリー)やドライフルーツ、プルーンジュース、カボチャの種、ゴマ、大豆、ナッツ類などに含まれる。ビタミンCの摂取は植物性食品に含まれる鉄の吸収を助ける。鉄鍋や鉄のフライパンで調理することでも補給できる。

・ビタミンB12
核酸(遺伝子を構成)や赤血球の合成、エネルギーや脂質の代謝などに欠かせない栄養素。乳製品や卵を摂取しているベジタリアンは充分に摂取できていると考えられるが、ビーガンでは不足のリスクがある。マルチビタミンとミネラルのサプリメントを日常的に利用することで補給できる。

昔ながらの和食も見直して

日本でも大腸がんは増加し続けています。厚生労働省のデータによると、日本人の大腸がんによるがん死亡率は、男性は2007年に肝がんを抜いて第3位となり、2013年の時点でもさらに上昇傾向にあります。女性も2003年に胃がんを抜き、以降第1位となっています。

日本では、戦後の高度成長期を中心に食肉の消費量が急増しました。しかしながら日本の伝統的な和食は、ご飯と汁物、魚介類を中心としたおかずで構成されており、まさにペスコベジタリアンの食事に近いものでした。そこに私たちの食生活改善のヒントがありそうですね。

のみならず見直すべきは、高インスリン状態やインスリン様成長因子の増加を招く、精製された炭水化物や動物性食品の取り過ぎです。野菜などに多く含まれる食物繊維は、インスリン感受性改善やインスリン様成長因子を軽減する効果が分かっています。

とはいえ今日からいきなり「ベジタリアンになりましょう」とお勧めするわけではありません。むしろベジタリアンを志向するとなると、メリットだけでなく上に挙げたような健康上のリスクを把握しておく必要があります。アスリートや成長期の場合、とりわけビーガンは、必要なエネルギーや栄養素を摂取することが難しい可能性があります。なお、ベジタリアンの若者は一般に比べて摂食障害傾向が懸念されたこともありましたが、近年のデータは否定的です。

まずは精製された炭水化物、お菓子やスナック、砂糖入りの甘い飲み物の摂り過ぎに注意してください。そして牛や豚などの赤身肉、ハムやソーセージなどの加工肉、それらに含まれる動物性脂肪を控えめにして、野菜や果物、豆類や魚を毎日の食事に多く取り入れるところから始めてみてください。

(2015年6月11日「ロバスト・ヘルス」より転載)

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