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引越した人必見!敷金を取り戻すために今やるべき3つのこと(加藤梨里 ファイナンシャルプランナー)

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120年ぶりとなる民法の改正案が31日、閣議決定されました。

不当な約款無効 敷金定義を明文化 民法改正案閣議決定

政府は三十一日の閣議で、企業や消費者の契約ルールを定めた民法の債権分野を大幅に見直す民法改正案を決定した。買い物の際に売り手側が契約内容として示す「約款」の規定を設け、消費者の利益を一方的に害する不当な約款は無効になる。債権分野では明治時代の一八九六年の民法制定以来、約百二十年ぶりの大改正で、政府、与党は今国会中の成立を目指す。 (2015年3月31日 読売新聞)

社会・経済の変化へ対応し、国民にわかりやすい法律を目指して、私たちの日常生活のさまざまなシーンに即した内容に改定されます。インターネット通販などの契約で使われる約款や、商品が壊れていたときの売り手の責任のあり方、認知症の人が交わした契約や連帯保証、未払金の時効など、200項目に及ぶ改正の中でも、特に注目されているのが、敷金の取り扱いです。

■民法改正で敷金が戻りやすくなる?


部屋を借りるときに大家さんに払う敷金。賃貸期間中に大家さんに預けるもので、原則として退去するときに借主(入居者)に戻ってくるものですが、これまではそのルールが明確に定められていませんでした。そのため返還を巡ってトラブルが起きやすく、国民生活センターには2014年に11,239件の相談が寄せられています。そこで今回の民法改正では、敷金を「借主が支払う家賃の担保」と定義し、大家さんは「賃貸借契約が終わった時に借主に返金しなければならない」という義務を初めて規定しました。

敷金を巡るトラブルの多くは、ハウスクリーニングやクロス張替え、畳表替えや襖張替えなどの原状回復費用として高額な料金を請求され、敷金が返金されない、または敷金以上の支払いを求められるケースです。この中には、本来は大家さんが負担すべき費用を借主に請求しているケースも見られることから、今回の改正では大家さんと借主の責任を明確に区分します。時間の経過や日常生活によってできた床や壁紙、畳などの自然な傷みは「経年劣化」として、修繕費用は大家さんが負担することとされます。

■「原状回復」とは何なのか?


ところで、敷金を巡ってたびたび問題になる「原状回復」とはどういうことを指すのでしょうか? これは、お部屋を借りた人は入居する前と同じ状態にして大家さんに返す義務のことです。ここまでは誰もが知っているでしょうが、問題になるのはどこまでを「入居する前と同じ状態」とするか?ということです。単純に考えれば、「入居する前と完全に同じ状態」と考えられますが、それでは借主にとって極めて不利な条件になってしまいます。

通常、借主が部屋に入居してから退去するまでは最低でも2年、人によっては十数年以上の時間がたっています。その間には、住んでいた人に過失や故意がなくても、日光が当たって壁紙や畳の色が変わったり、自然に壁紙がはがれたり、ふすまやドアの取っ手が寿命で外れたりすることが起こりえます。築年数が古い物件に入居したら、入居してすぐに不具合が出ることもあるでしょう。

にもかかわらずこのような劣化や損傷を借主の責任にされたのではたまったものではありません。ですから、「原状回復」には自然にできた損傷や経年劣化の修理は含まれません。「入居する前と同じ状態」というのは私物や家具を引き揚げ、重大な汚れや傷などを元通りにすることであって、部屋を全く使わなかった状態に戻すということではありません。

■自然災害での損傷は実証が大事


原状回復でもうひとつ問題になるのが、自然災害によって窓ガラスや壁などが割れた場合です。今回の民法改正の原則では、自然災害による損傷は借主の責任にはならず、修繕費用が敷金から差し引かれることはありません。しかし、傷が本当に自然災害によるものかどうかは、損傷ができた瞬間に大家さんがいなければ疑われることもあり得ます。

我が家でも先日、入居している賃貸マンションの窓ガラスが突然割れるアクシデントがありました。ある日気が付いたら、ワイヤー入りの窓ガラスに縦30cmほどの亀裂が入っていました。すぐに管理会社に連絡すると、担当者が自宅の窓を見に来ました。そこでいきさつを説明し、修理を依頼しました。管理会社は大家さんに費用の負担が可能か確認したうえで、修理業者を手配するといって帰っていきました。

ところが、1ヶ月たっても連絡は来ません。2ヶ月以上音沙汰がないのでしびれを切らして再度連絡すると、管理会社がこれから現地調査のため部屋を見に来ると言うのです。窓ガラスが割れてすぐにやってきた時のことは全く忘れられているようなのです。仕方なく承諾すると、今度は管理会社の下請け業者がやってきました。

下請け業者はガラスが割れた状況を事細かに聞いてきて、管理会社が見に来たことは全く知らない様子でした。しかも、亀裂は自然にできたものではなく、こちらの過失で割れたものだとすら思っているようでした。

このままでは修繕費用をこちらが負担させられてしまう勢いだったので、下請け業者に改めていきさつをゼロから説明し直しました。そこから再度大家さんに連絡を取ってもらい、大家さんの許可を得て窓ガラス業者を手配してもらい、ようやく新しい窓に取り換えてもらうまで3ヶ月もかかりました。

我が家のケースでは、マンションの管理会社と大家のほかに、管理会社の下請け業者、さらに下請け業者が提携するガラス業者が絡んでおり、4者間で連携がうまくとれていないようでした。このため何度も事態を説明してもなかなか窓ガラスを直してもらえず、しまいには費用を負担させられかける羽目になったようです。

とりあえず今回は修繕費用を払わずに済みましたが、また退去するときに敷金から費用を差し引かれるかもわかりません。トラブルにならないよう、今回のやりとりはしっかり記録しておかねばと痛感しました。

■敷金トラブルを防ぐためにやっておくべき3つのこと


そこで、このような敷金トラブルを防ぐために、入居中からできる対策をご紹介します。


(1)最低限の掃除や手入れはしておく

当たり前のことですが、日常生活の汚れは日ごろから掃除をしておきましょう。きれいに使っている、という印象を与えると、不具合が起きたときにこちらの責任と疑われるリスクは低くなるでしょう。

壁に刺した画鋲の穴やテープの跡など小さな傷のような些細なものは、自分で直しておきましょう。100円ショップには壁の穴を埋め込むための粘土や、床や壁がはげたところを塗りつぶすクレヨンなどが売っています。ちょっとした手間で、ほとんど目立たない状態にすることができます。

なお、画鋲の穴やテープの跡、カーペットのへこみなどは、改正後の民法では経年劣化の範囲内とされています。ただ、傷の程度をどう評価するかは、結局人間である大家さんが判断しますので、修繕費用を敷金から差し引かれる恐れもあります。トラブルを防ぐためには、自分でできる修繕はやってしまうのも手です。


(2)不具合があったら放置しない

部屋に何か不具合が起きたら、すぐに管理会社や大家さんに連絡しましょう。放置したまま時間がたつと、状況を説明するにも記憶があいまいになってしまいます。特に自然に起きた不具合や劣化は、入居者の責任ではないと証明するのが難しいこともあります。

不具合に気づいたらすぐに写真を撮り、大家さんや管理会社に連絡したらその内容や日付も記録しておくと、後に証拠になります。


(3)泣き寝入りしない

こちらも当然と言えば当然ですが、敷金や修繕費用を巡って納得がいかないときはしっかり主張すべきです。賃貸借契約では、敷金などについて取り決めをしているものもありますから、契約前には必ず確認し、認識が正しいかどうかを口頭でも確認しておくと賢明です。

大家さんや管理会社も人間ですから、契約や原則通りに対応するとは限りません。契約にない理由で費用を請求されたら、入居者が拒否しても何らおかしいことはありません。


最後に、今回の民法改正は2018年度までの施行を目指しています。つまり、それまでは上記の改正民法の原則は適用されません。すでに入居している人や、これから施行前までに入居する人は、改正後の民法通りには対応してもらえません。トラブルを防ぐために、改めて賃貸借契約を見直し、損傷が起きたときの対応を確認しておくことをおすすめします。


その他、敷金や賃貸に関する解説はこちらの記事でも詳しくご紹介しています。

【参考記事】


加藤梨里 ファイナンシャルプランナー マネーステップオフィス

(2015年4月3日「シェアーズカフェ・オンライン」より転載)
 

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