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戦後70年など

2015年08月07日 21時36分 JST

石破 茂です。

 

酷暑の日々が続きます。昭和53(1978)年、暑い中を就職活動で会社訪問をしていた37年前の大学四年生の夏をふと思い出します。漠然と新聞社かテレビ局を就職先の候補として考えていたのですが、当時参議院議員であった父親から「それだけは絶対に駄目だ。他人を批判ばかりしている職業に就くことは許さない」と一喝され、国鉄や航空会社にも難色を示されて、結局都市銀行(当時はメガバンクなどという言葉はまだ無く、都銀だけで14行もありました)に絞って就職活動をしていました。中央官僚、県知事、参院議員であった父親はそれなりにマスコミを大切にしていたようにも思うのですが、倅をその仕事に就かせることには相当に強い拒否感があったようです。

自分も父親と同じ政治の仕事に就いてみて、彼の言っていたことが少しわかるような気がします。もちろん健全な民主主義の発展のためには批判勢力の存在が必要不可欠であり、

我々が報道に対し可能な限り誠実丁寧に接すべきことは当然です。しかし、自分自身、若しくは自社の考えを何ら示すことなく「あの人がこう言っている」「この人がこう言っている」ということを単に面白おかしく繋ぎ合わせて、最後に「批判が予想される」「成り行きが注目される」的に締めてしまう単なる「瓦版」的な報道に接すると、言いようのない情けなさを感じると共に歎息を禁じえません。

誰が書いていたのか忘れてしまいましたが、高校生の頃読んだ総合誌の論説に「以前の新聞社では報道の姿勢として『成り行きが注目される』で締める『成り注記事』は厳に戒められていたのだが、最近はそのような無責任な記事が多くなって実に嘆かわしい」というような内容があったことを覚えています。もう40年も昔のことですが、状況はあまり変わっていないようです。

勿論、自分の考えをきちんと持ち、報道の使命を認識している尊敬すべき記者さんたちが少なからずいることも事実です。自分が報道関係の職に就かなかった分、そのような人たちに期待するところもまた大なのです。

4日水曜日、東洋大学のPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)に関するフォーラムでマハティール・マレーシア元首相と相前後して講演する機会がありました。マハティール氏の主張には、我が国政府の立場と異なる点が多々あるものの、傾聴に値するところも多くあり、良い機会を得られたと思っています。先般逝去されたリー・クァン・ユー元シンガポール首相もそうでしたが、東南アジアの指導者の中には、深い考察力と洞察力を持つ方が多いように感じます。

 

戦後70年、様々な動きがありますが、いつもこの時期になると思い出す文章があります。父の没後、所縁のあった方々が回想録(追想編)を出して下さったのですが、その中で前田光嘉氏(元建設事務次官・故人)が「石破さんの思い出」と題してお寄せ頂いた追悼文の冒頭には次のように記されています。

昭和30年頃であったと思う。ある会合の挨拶文の決済を貰いに行った時のことである。公用の挨拶文の例として先ず時局について簡単に触れるのが常であったし、そのころの例文として、「終戦後ここに○○年云々」、と書いてあった、石破次官はその文案を見るなり即座に「文書課長、終戦とはどういうことだね」、私は次官の真意を測りかねて、「戦争が終わったから終戦と云うのではないでしょうか」、次官の顔色がさっと変わった。「だから君たちは駄目だと云うんだ、我が国は戦争に敗けたのではなかったのか、ポツダム宣言を受諾して日本は無条件降伏したのだ、これを敗戦と云わないで終戦などと分かったような分からないようなことを云うから、ことの本質を見失うんだ」。私はこの石破次官の激しい言葉を聞いて、流石、次官は偉いと思った。あの当時は日本の敗戦を敗戦とズバリと云い切れる人は何人おったであろうか、心の中では敗戦であることを知りつつもこれをあえて口にしないのが通常の人々の態度ではなかったかと思う。(原文のまま)

 

亡父とは49歳も歳が離れていたためか、戦争についてあまり話をしてくれた記憶がありませんが、実際に陸軍司政官として戦地に赴き、様々な体験をしたことと思います。その言葉の重さと深さに、謙虚に学びたいと思っています。前にもご紹介しましたが、先の戦争について考えるとき、猪瀬直樹氏の「昭和16年夏の敗戦」、NHK取材班編の「太平洋戦争日本の敗因」第1巻「日米開戦勝算なし」(角川文庫)からは貴重な示唆を受けます。

週末は8日土曜日が埼玉県知事選挙街頭演説会・5区打ち上げ式(正午・大宮駅西口)、9日日曜日が若桜民工芸館オープン行事、若桜町八幡広場グラウンドゴルフ場オープニングセレモニー、どんどろけの会会員家族会野外パーティ(以上鳥取県若桜町)、隼まつり(鳥取県八頭町)という日程です。

今年は明日が立秋なのですね。世の中は夏休みを楽しんでおられる方もいらっしゃいますが、当方はお休みが全くないままに夏が過ぎ去ろうとしています。夏が終わりに近づくこの季節になると、荒井(松任谷)由実の「晩夏(ひとりの季節)」と「Hello, my friend」を無性に聴きたくなります。

皆様、お元気でお過ごしくださいませ。

(2015年8月7日「石破茂オフィシャルブログ」より転載)