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すべての公衆電話をWi-Fiキヨスクにする「LinkNYC」、次なる都市に向けた動きへ

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6月に、久しぶりにニューヨークを訪れた。2011年夏以来なので、5年ぶりだろうか。

今回はPersonal Democracy Forum2016に参加することが目的だったが、せっかくの出張なこともあり、色々と現地で人に会ったり訪れたい場所などを見て回ったりするために少し長めの滞在となった。

普段から都市問題をリサーチしていくなかで、ニューヨークは面白い取り組みを実践している場所だと思う。以前訪れた時には、ブルームバーグ市長(当時)の肝いりで抜擢されたCDO(Chief Digital Officer)のRachel Haot氏による「NYC Digital Road Map」についてブログにまとめたこともある。

参考記事
ニューヨークのデジタル都市とオープンガバメントからみる、東京の都市と行政のこれからを考える

さまざまな施策を通じて、ニューヨークも大きく転換を迎えようとしている。特に、この2010年代(テン年代)は、これまで以上にテクノロジーと私たちの生活とをリンクさせていくかを考えることが多い時代といえる。

21世紀は「都市の時代」と言われている。都市問題をどう解決していくか、都市生活にどうテクノロジーが関与していくかが次なる命題となっている。そのなかで、すべての公衆電話を無料のWi-Fi&充電スポットにする動きが、ニューヨークを中心に起きている。

デジタル都市を掲げるNYCにおいて、ネット環境を充実させることは、そこに住む人のみならず観光客やビジネスで訪れる人たちにとって重要な現代のインフラだ。「NYC Digital Road Map」の項目にある「Access」にもあるように、NYCでは古くなった公衆電話をWi-Fiスポットにする企画を提案し、2012年には10ヵ所のWi-Fiスポットの小規模展開を行った。

その後、2013年には電話ボックスのデザインと用途を見直すための提案を公募するなど、本格的なプロジェクトがスタート。そして誕生したのが官民連携による「LinkNYC」だ。

まちなかで高速ネット環境を構築する「LinkNYC」がスタート

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LinkNYCは、NYCのDoITT(情報技術通信局)とCityBridge(ニューヨークの企業によるコンソーシアム:Qualcomm、Antenna、Comark、Transit Wirelessなどが参加)が運営するプロジェクトで、NYC内に最大で1万台の半径約45m以内で使えるLink、つまり無料Wi-Fiを提供するキオスクを設置するという。

Wi-Fiキオスクの設置コストなどの経費は、今後12年間で集める広告売上ですべて賄う計画で、市民の納税にも負担をかけずに運営する。すでに、テレビ番組の広告やクルマの広告、ネットサービスの広告が掲載されていた。

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その「LinkNYC」のWi-Fiキオスク設置を担うのは、アルファベット社内の都市問題についてのR&D部門の「Sidewalk Labs」だ。チーム内には、NYCの人口増加や気候変動に対応するために作成されたNY長期計画「PlaNYC」に取り組んだ人物を就任させるなど、テクノロジー企業が行政出身者などを巻き込んだ官民一体のチーム構成だ。「Sidewalk Labs」は、都市の交通分析インフラを見直す計画のもと、今回のWi-Fiキオスクをもとに、さまざまなデータ収集を見据えている。

参考記事
ついにはじまる、グーグル「Sidewalk Labs」の都市革命(WIRED)
すべての公衆電話を無料のWi-Fi&充電スポットに:ニューヨーク(WIRED)

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今回、NYCに訪れたこともあり、実際に「LinkNYC」でWi-Fiをつなげてみた。利用方法も簡単で、メールアドレスを登録すると、プライベートネットワークへのアクセスキーをもらえ、Wi-Fiに接続することができる。上りも下りもハイスピードなネット環境だ。

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キオスクでは充電ができ、タッチパネルを操作すると地図マップが現れ、経路検索も可能だ。また、もともと公衆電話だったこともあり、緊急電話の911へつなぐことができる。

この春からスタートした「LinkNYC」だが、すでにNYCのマンハッタンの3rd Aveや8th Ave、Broadwayを中心に設置してあり、まちなかを歩く人たちも自然に利用している。端末には、BETAと掲げてあるように、現状はベータ版として今後さまざまな機能が追加されることも期待される。

「都市データ」がもたらすパブリックのあり方の議論

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もちろん、ただWi-Fiがつながるだけではない。「Sidewalk Labs」によると、キオスクは感知システムとして機能し、開いている駐車場情報をもとにドライバーを誘導するなど、今後の自動運転システムへの布石も置いている。そこには、都市のどまんなかにセンサーなどを内蔵した端末を設置することで可能となる、新たな「都市データ」とも呼べるものだ。人やクルマの移動を感知し、温度、湿度、CO2などを完治し、環境データとして蓄積することで、より綿密なデータ分析を行うことができる。

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そうしたさまざまなデータを私たちが気がつかない間に収集されていることの怖さもある。データやテクノロジーと、パブリックの問題も今後議論すべきポイントだ。しかし、こうした公共サービスにおいては行政も絡んでいることもあり、すべてを民間利用できるわけではない。

事実、「LinkNYC」の契約では個人を特定できるデータの商用利用は禁止されているという。とはいえ、これまで収集できなかった「都市データ」を収集することは、アルファベット社内で今後展開されるであろうさまざまなビジネスのリソースとなることは免れない。

都市について考えるとき、サービス単体だけでなく、プライバシーやパブリックの問題と向き合わなければいけない。オンラインのみならず、オフライン、現実社会とテクノロジーとの折り合いのなかで、法規制や倫理観などを向き合いながら、新たなルールメイキングをしていかなければいけない時代ともいえる。

行政サービスに求められるデザイン思考

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さて、ネット環境といういわば現代のインフラ構築は、もはや公共事業の一つといえる。しかし、それらすべてを行政が実施することは難しい。そこで、官民が連携した箱をつくり、そこから民間企業が主導し、機敏にプロジェクトを展開することができる。

「LinkNYC」はすべて広告売上で経費を賄うとしているように、公益事業であると同時に、自分たちで収益源を確保するためのビジネスモデルの構築にも余念がない。

公共サービスは、当たり前かもしれないが納税者すべてがユーザーであり、そこにはマイノリティの人たちであっても、自由にアクセスでき、公共サービスを受ける権利を持っている。都市に暮らす人たちすべてに等しくサービスを提供するために、徹底したユーザー設計をしていく必要がある。

イギリスでは、UK Governmentが「Digital Service Design Principles」を掲げ、いかにしてデザイン思考をもとにサービスを設計していくかを重要視している。こうした思想をもとに、公共サービスのあり方を見直し、現実に必要なサービスを精査し、ときには新たな公共サービスを作り上げることも意識しなければいけない。

外から訪れた私もその場ですぐに「LinkNYC」を利用することができ、その簡単さと利用のしやすさに愛着を覚えたものだ。観光客であっても誰であっても、等しくサービスを享受することを認める考えがそこにあるように感じた。

実社会に生きる私たちにとって、何が必要なのか。誰に対して、どういったサービスを提供すべきか。どんな仕組みであれば、簡単で、それでいて持続可能なモデルを構築できるか。経営視点、デザイン思考をもった新たな公共サービスのあり方、行政サービスのあり方を考えていかなければいけない。

(2016年7月27日「being beta(Shintaro Eguchi blog)」より転載)