BLOG

元コピーライターの最高コンテンツ責任者(COO)が実践する、徹底的にユーザ目線のオウンドメディア作りとは?

2015年08月02日 14時49分 JST | 更新 2016年07月30日 18時12分 JST

スマートフォンやソーシャルメディアの台頭で、情報があふれる世の中になりました。

従来の「一方通行な広告」では消費者にスルーされやすい。かといって、誤操作を誘ったり、しつこく付きまとう広告手法も煙たがられます。

そんな中、オウンドメディア事業を中心に「コンテンツ企画・制作」と「コンテンツ配信」を組み合わせたサービスを提供し、広告主とユーザーの関係性を改善し、「広告を情報に変える」ことを目指すのがサムライト株式会社

コンテンツを通じて、企業が伝えたいメッセージを消費者にとって価値のある情報に変える」ことで、新たな出会いの機会を創出できるようなサービスの提供に取り組んでいます。

彼らがオウンドメディアを作るとき、重視するのは「コンセプトメイキング」。メディアの方向性やベクトルをしっかりと見据えていないと、行き詰まってしまいますからね。

オウンドメディア担当者の血と汗と涙とノウハウを取材させていただく企画、「突撃!隣のオウンドメディア」の第2回として、サムライト株式会社のCCO(Chief Content Officer、最高コンテンツ責任者)である後藤亮輔さんにくわしい話を伺います。

2015-07-31-1438306277-8906451-20150731_sixapart_01.jpg

どれくらいの数のメディアを運営していますか?

サムライトでは、現在約40社のメディア運営のお手伝いをしています。人を増やしてもっと拡大しようと計画中で、100社までは遠くない将来にいけると思っています。忙しくって、猫の手も借りたい状況ですね(笑)。

僕の編集者の定義は「プランナー」もしくは「プロデューサー」でして、編集者は上流の作業に集中させたい。ライターにはインターンを活用しています。優秀な学生が集まっていますよ。

インターンさんがオフィスに大勢いますけど、リモートじゃないんですね

あえてオフィス内にいてもらうようにしています。そうすることで、コミュニケーションコストがかからないんですよ。何かを頼みたいとき、サッと声をかけられるし、微妙なニュアンスも顔を合わせて話せばきちんと伝わります。

「文章を書くから文学部出身者ばかりを集める」なんてことはなく、理系の学生もいてバックグラウンドはさまざま。「情報発信のスキルを磨きたい」、「将来は海外で働きたい」と考えている子らが多いですね。ちなみにインターンにもランク制度があって、技量に応じて編集者を任せたり、メディア運営にステップアップさせることもあります。

サムライトの得意分野&領域って何でしょう?

人材系メディアからのオファーが多いです。アデコ、Wantedlyなどとお仕事させてもらっています。専門的な領域のメディアも運営していますが、社外のライターネットワークも充実しているので、いかようにも対応できますね。どんなオファーをいただいても、胸を張って「できます」とお応えできる体制を整えるのがCCOの仕事だと思っていますので(笑)。

コンセプトメイキングって、どう進めていますか?

オウンドメディアの立ち上げ前から入ることが多いです。クライアントさんにまったくノウハウがないことも少なくないので、ターゲットニーズを根気よく紐解くことから始めます。クライアントさんが自社のUSP※に気づいていないケースもありますね。

徹底的に要件を吸い上げて、定性的・定量的データを分析しつつ、「USPはコレ。USPをもっとも輝かせるメディアのコンセプトはこう」と決めていきます。かかる時間? 慣れているので数時間か長くても1日で固められますよ。ただし、初めての業界とのお仕事の場合は、ミーティング前に徹底的に調査して臨みます。

※USP(Unique Selling Proposition)

「独自の売り」あるいは「独自の売りの提案」として知られるマーケティング用語。 「独自の売りの提案」を簡潔にまとめたフレーズであり、自社の売りとなるマーケティングコンセプトを端的にまとめたもの。

破談になるケースもあったりします?

話を聞いてみて、「(オウンドメディアとは)違うやり方がいいのでは?」と提案することもあります。オウンドメディアを始めていただくことが目的ではないので。

一時期、Facebook ページが取り沙汰されて猫も杓子も追随したことがありましたが、オウンドメディアにもその流れをやや感じます。「とりあえず、やっておけばいいんでしょ?」と、浅くしか考えていないと先行きが心配です。

記事だってバズれば無条件によいってわけでもないし、一見さんを大量に集めても即離脱されたら意味がありません。目的はあくまで「ターゲットに届いて、行動を起こしてもらう」こと。そういう意味では、「再訪率」は大切な指標です。KPIはその時々で細かく変更しています。

どんなクライアントさんとはお仕事がしやすいですか?

率直に言いますと、サムライトに任せてもらえるクライアントさんとはいい仕事ができます(笑)。先方の業界がどうこうというよりも、オウンドメディアに理解があるクライアントさんとは仕事しやすい。知ったかぶりをせず、知らないことは素直に質問いただけると、誤解や行き違いがありません。

たとえば、イードリーマーさんという車のリサイクルマッチングを本業にするクライアントさんと「イキなクルマで」を立ち上げたんですが、「まずはクルマに興味を持ってもらおう!」という狙いを定め、自動車でおでかけしたくなるコンテンツを発信することに決まりました。ターゲット、商材の良さ、USPを徹底的に議論して洗い出しました。

コンセプトさえ突き止めることができれば、メディアは半分完成したようなものです。ちなみにこのメディアは、代表の柴田がコンセプト含めリードしましたが、すごく上手くいっています。

サムライトではただの編集者ではなく、"編集者2.0"を募集してますが、その真意は?

編集者ってこういうことだと思うんですが......(と、紙とペンを手に取る)

2015-07-31-1438306306-2261321-20150731_sixapart_02.jpg

いわゆる編集者、エディターの場合は、たとえば作家さん(の才能)と読者(ユーザーニーズ)をマッチングするのが仕事だと思うんです。ウェブの編集者の場合は、「クライアントのUSP」と「ターゲットユーザーのニーズ」がマッチするポイントを顕在化することだと考えています。

2015-07-31-1438306322-6715770-20150731_sixapart_03.jpg

ウェブの編集者の仕事は、「クライアントの良さ、才能、USPを、ターゲットニーズに響くよう翻訳して届けてあげること」です。

サムライトに入社する前にエン・ジャパンでコピーライターをしたのですが、当時も同じスタンスです。コピーライターはライターではないので、「自分がつくりたいものをつくる」のではなく、「クライアントの伝えたい情報を読者のニーズと照らし合わせ、いかに翻訳して伝えるか」というあくまでマーケティング的な目線で書いていました。

「USPを見つけられない」ってクライアントさんはいますか?

USPが見つからないってことはまず起きませんが、難しいのは「特定できたUSPをターゲットニーズにマッチするよう翻訳する作業」ですね。

別の例ですが、ECサイトの在庫管理システムの販売をするクライアントさんのオウンドメディアを手がけたときの話なんですが、ターゲットが"ECサイトを運営する担当者"と、かなり限定的だったので、「オウンドメディアをやるにはターゲットが狭すぎないか?」と感じたんです。

そこで、「ECサイト運営の効率化」だけに囚われず、視点を少し広げました。誰だって生活や仕事の効率化を図りたいと思っているはずと考え、「効率化が進むことで、自分の時間が確保できる(具体的メリット)」に着目し、"業務効率化"がテーマのオウンドメディアに仕立てました。それがメリハリ(merry hurry)です。

忙しさ(hurry)の中に喜び(merry)を見出すというダブルミーニングなタイトルは僕が決めました(笑)。ECサイト運営者にしか刺さらないコンテンツでは狭すぎるので、まずは広めにターゲティングしたんですね。視野を拡大・縮小させることで、ターゲットを逃さないコンセプトメイキングもできるんです。

コンセプトメイキングをする上で、最も大事なことってなんでしょうね

「ユーザーニーズから考える」だと思います。メディアを成長させるぞ!と鼻息を荒くして目先の成果を追ったり、上から降りてきた目標を達成するにはどうすれば......という発想から始まると、ユーザーは置いてきぼりを喰らいます。

そうなると、企業の都合が優先された面白くないモノになってしまう。そうではなく、「ユーザーの期待ってなんだろう?」、「どうすればユーザーが喜んでくれるだろう?」といったディスカッションからスタートすべき。

ペルソナって、どこまで細かく掘り下げるんですか

ペルソナを考えるのは個人的に好きな作業ですが、ピンポイントに掘り下げすぎるとわけがわからなくなります。僕は年齢や性別、職業といった属性よりも、インサイト(消費者のホンネ(欲求、悩み、不満))に着目しますね。ペルソナの抱える悩みや問題をあぶり出し、それを解決するためのサイトコンセプトを考えます。

ユーザーと自分がかけ離れすぎている場合、たとえば男性の後藤さんが女性のインサイトを考えるのは限界がありません?

そんなときは、実際のペルソナに会いに行きます。サムライトはネイルのメディア運営もしていますが、コンセプトメイキングの段階では仮説が本当に正しいのか確証がありませんでした。そこで、ガールズバーに出かけて、女性店員に話しかけまくって仮説を検証したんです。

わざわざガールズバーまで行って?

ガールズバーの女の子ってわりとネイルに凝っているんです。客を装って、「なんでやっているの? ネイルのどんなことで困っているの? 困ったときどうしている?」って会話を何人もと交わしました。あ、もちろんネイルばっかりの話だと変人扱いされるので、流れを考えて自然なかんじで(笑)。

ペルソナ検証は泥臭いけど、誰でもできますよ。コンセプトが決まったら、机上で確定させるのではなく検証すべき。一歩外に出ることは面倒ですけど、このひと手間が大切なんです。まあ、このときは3時間で24,000円かかりましたけど......。

「顧客に会いに行け」ってよく言いますけど、まさにそれですね

そう、ペルソナがどう感じるかが正義です。電通のCMプランナーに聞いた話ですが、CMソングは「子供でテストする」のが鉄則だそうですよ。子供が自然と口ずさんでくれればイケるサイン。子供って直感で行動するので、CMソングのテスターとして最高らしいです。

最後の最後は、データだけじゃ判断がつきません。ユーザーのインサイトはいくら検索しても見つからないんです。だから、現地で生の声を聴くことは怠らないですね。

オウンドメディアに向いていない商材、業界ってありますか?

短期的なCPAを目指しすぎるクライアントさんはオウンドメディア向きではないと思います。オーガニック検索で引っかかるには、最低3ヶ月はかかると覚悟して取り組めないときつい。

オウンドメディア担当者に向いている人は、「ユーザーのことを考えてあげられる人」です。この仕事はサービス業だと思っているくらいですから、相手を思いやる心があるとか、カスタマーサービスの現場経験者もいいと思いますね。

逆に手法にこだわるとか、オウンドメディアをやるってことにだけ凝り固まっている人は向いていません。手段が目的化してしまうのがオチです。オウンドメディアだけで完結しようとせず、ネイティブアドだとか、Facebookアドなどと組み合わせるとか、複数の手法で目的を達成しようとする考え方も求められるでしょう。

編集者2.0になるために、メンバーさんにはどう指導しています?

ニーズを調べるために、積極的にTVを観なさい」って指導しています。インプットとアウトプットは比例するからです。堅苦しい番組だけじゃなく、くだらない番組も観る。僕自身も、TVを観る時間は必ず確保していますよ。帰宅すると、すぐに電源をオンにしてBGMにしながら仕事や食事をします。

アンテナに引っかかるニュースなどがあれば、抱えている案件とアイデアと組み合わせます。情報の洪水に浴びて、流れに乗るだけで情報が集まるようにしています。TV以外では、フェースブックも眺めますね。「ソーシャルにシェアした=感情を動かした何かがある」の証拠でもあるので。あとは、1週間ではてブしたリンクをまとめてチェックします。キュレーションサイトは逆に見ませんね。ああいったコンテンツは刹那的で記憶に残りません。

あと、当然ながら雑誌もめちゃくちゃ読みます。POPEYEは個人的に好きなので、毎月買っていますね。尊敬する友人に倣って、「自分が興味のない本を5冊買って、毎月読む」ようにしています。苦痛に感じるときがないわけではないですが(笑)。

?