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「購買」データから「利用」データへ。「コネクテッドアパレル」への期待。

2017年02月27日 15時41分 JST

先月ポストした「日本人の知らないシリコンバレー:「D2C」というリテールの新潮流」というポストは、Facebookで2,200 Likeと、非常に多くの方々に読んでいただきました。ありがとうございます。

このポストの中で取り上げた「Direct To Consumer」というリテールの新しいトレンドは、これからますます大きくなると思うので、まだお読みになっていない方はぜひご覧ください

今回は、CBInsightから出た「Nikeが昨年過去最大の特許を取得した」という記事に触発されて、 D2Cのもう一歩先に来るであろう「コネクテッドアパレル」について書きたいと思います。

米国にConnected Apparelというファッションブランドもあるようですが、もちろん今回のテーマはファッションブランドではなく、「コネクテッド(つながる) アパレル(洋服)」がテーマです。

ちょうど二年前に「「コネクテッドアパレル」時代への一歩。UnderArmourがMyFitnessPalを$475Mで買収。」というポストを書いているのですが、そこからの進化も含めて見ていきたいと思います。

テック企業買収に動くスポーツブランド

Nikeやadidasに代表されるスポーツブランドは、最近テクノロジー関連の投資、買収に力を入れている業界の一つです。

adidasが2015年にフィットネスアプリ大手のRuntasticを$239Mで買収したのを皮切りに、同じく2015年にUnderArmourが同業のMyFitnessPalを$475Mで買収、昨年AsicsがRunKeeperを$85Mで買収と立て続けにスタートアップの買収に動きました。

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左からruntastic(adidasが買収)、MyFitnessPal(Under Armourが買収)、Runkeeper(Asicsが買収)

靴やウェアを売って終わりではなく、実際ランニングやジムで利用されているデータを蓄積することで、消費者とエンゲージを高めようする考えがその裏側にあります。

RuntasticとRunkeeperはシンプルなランニングトラッキングアプリですが、Under Armourが買収したMyFitnessPalは、ランニングだけでなく、食事、水、エクササイズなど様々な情報が管理できるようになっています。

さらに、Under Armourは、昨年Health Boxというスマホに体重計とウェアラブルデバイスを加えることでより細かく自分のデータを測定、管理ができるキットを発売しています。

これはHealthBoxのコンセプトビデオです。Under Armourがより多くの利用データを取り込み、利用者に近づこうとしているのがよく分かります。

まだ新しい取り組みでもあるので、 「データがあるからUnder Armour以外買わない」となっている消費者は多くはないとは思いますが、Amazonにおけるレコメンド同様、こうしたデータの蓄積はじわじわと将来に向けて効いてくるはずです。

「過去最大」691もの特許を取得したNike

さて、業界のリーダーであるNikeは、テクノロジーと最も古くから向き合ってきたプレイヤーです。

今から11年も前、iPhoneも発売されていない2006年に、NikeはAppleと提携し、「iPodと連携するシューズ」 Nike + Zoom Moireという商品発売していました。

私も発売と同時に渋谷のNikeのショップに走り、全く同じ色のこのモデルをゲットしたのを覚えています。

ランニングをしていると、靴底に入った赤いセンサーから、iPod(iPhoneではないのです)に走った距離や速度といった情報が送られて、イヤフォンからリアルタイムでフィードバックがあるというのは本当に新鮮な体験でした。

その後、自社アプリのNike+のアプリは大きく進化をし、Fuel Bandというウェアラブルデバイス(今は販売中止)を経て、昨年からはまたAppleとのパートナーシップによりNikeブランドのApple Watchも販売しています。

さて、こちらは過去数年の、Nikeの特許出願数と取得数の推移のグラフです。 年々その取得数は増加をしており、昨年691件と過去最大の取得数となっています。

多くの特許は、靴の形状やゴルフクラブの形状など、アパレルやスポーツ用品のデザインに関するものですが、センサー、フィットネストラッキング、AR、ゲームなど、Nikeの将来戦略を感じさせるものも複数あります

以下で少し詳しく見ていきたいと思います。

①フィットネス関連

Nikeは、ウェアラブル、スマホ、靴のセンサーなど様々な場所から利用者のアクティビティをトラッキングする特許を持っています。

これは昨年取得した特許の図ですが、現在販売しているNike+のシューズセンサーのように一つのセンサーで動きやスピードを把握するだけでなく、靴の中に複数のセンサーを配置し、どこに体重がかかっているかをトラッキングしようと考えているようです。

後述する靴のカスタマイズの特許と組み合わせると、走り方によって靴底をカスタマイズしたりすることもできそうです。

これは別の靴のデータをアップロードする特許の図です。

その他にも単にデータを取得してアップロードするだけでなく、消費エネルギーの計算に関する特許、アクティビティのタイプの特定に関する特許、利用者が飛んでいる時間(両足が地面から離れている時間)の計算に関する特許、フィットネスレベルを定義する手法に関する特許など、様々な特許を申請、取得しています。

これまでは、スマホのGPSや靴のセンサーを使って単にアクティビティをトラッキングすると言うのが中心でしたが、将来的により多くのそして細かいデータを蓄積、分析しようとしていることが理解できます。

②製造関連

最近では、サプライチェーン関連のスタートアップであるLlamasoftに出資を行うなど、製造、サプライチェーンにも力を入れているようです。

これはサイトから靴をカスタマイズできる特許の図です。

先日発表したリテールスタートアップレポートの中でもShoes Of Prey(靴のカスタムオーダーができるサイト。3週間でフルカスタムの靴が届く)というスタートアップを取り上げましたが、製造手法とサプライチェーンの進化で、こうした製品のカスマイズがリーズナブルな価格でかつスピーディーに実現できるようになっています。

これは、さらに一歩先をゆく「お店で靴を変形/カスタマイズする」特許の図です。恐らく、前述の靴の荷重のデータやフィッティングをベースに、蒸気で靴を変形させて、その場でカスタマイズするというものです。

利用者のデータを蓄積することも大事ですが、それだけでは利用者の役に立たないので、このようにデータを商品に反映する取り組みも今後増えていきそうです。

③エンタメ関連

Nikeのアパレルは、ランニングやフィットネス以外でもすでに着ている人は多くいると思いますが、その利用の幅をさらに広げたいようです。

これは、スポーツゲームの特許の図です。洋服についた反射する素材をカメラで認識し、その動きをゲームに取り組むという技術です。Kinectですでに同様のことができるような気もしますが、洋服が認識できるとさらにいいことがあるのでしょうか。

その他、ARを使ってトレーニング効果をあげたりする特許や、ゲームの中のアバターに関する特許なども申請しているようです。

渋谷に今度「VRを取り入れたジム」ができるようですが、こうした視覚効果を取り入れたトレーニングというのも新しいトレンドなのかもしれません。

ZOZOの「IoTをフル活用した」PB

ガラッと変わって、私が今非常に注目しているZOZOのプライベートブランドについて。

縦横無尽に新しい戦略を出して来るAmazonが、そのデータを駆使してプライベート戦略に出てきていることは、何度かこのブログで取り上げている通りです。

一方で、日本のファッションEC業界のリーダー ZOZOタウンもプライベートブランドを展開することを発表しています。

まだ詳細は明らかになっていないのですが、つい先日前澤社長が、自身のTwitterで「ICT、IoTをフル活用します」と述べられていました。

これ以上のことは全くわかっていないのですが、NewsPicksのコメントで、StretchSenseという「スマートセンサー」の会社に投資をしていることを知りました。

彼らが販売している評価キットは、伸縮センサー、圧力センサーなど「洋服の利用状況をトラッキングする技術」そして、セルフ発電などの技術を持っているようです。

セルフ充電技術を使った「履くだけでスマホが充電できる靴」とかもかなり面白いのですが、今回のテーマから言うと、この技術を使えば、洋服の着脱がわかるコネクテッドアパレルを作れるはずということに想像が広がります。

ただ、事業者目線で「利用がトラッキングできる!」と言っても、利用者にとってメリットがなければ購入にはつながりません。

スポーツブランドの「運動がトラッキングできる」 と言うメリットのように、普段着る洋服のコネクテッド化で、ユーザ価値がどのような設計がされるのかに注目したいと思います。

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弊社の投資先には「人間のあらゆる動きをデータ化するAI」を開発するFocusMotion社があります。

同社は、MLBのLos Angels Dodgersなどからも出資を受け、「どんな動きでも学習できるSDK」などを提供しています。ご興味ある方は是非ダウンロードしてみてください。

前回見たように、ソーシャルメディア、製造、ブランドの進化により、D2Cというトレンドが生み出されました。

そしてさらに、IoT、ウェアラブル、スマホの普及、価格の下落により、「実際の利用データ」というこれまでメーカー、小売りが手にすることのできなかった新しいデータを取得、活用できるようになりつつあります

果たして「コネクテッドアパレル」の時代は来るのでしょうか。そして、誰が勝つのか。注目したいですね。