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雨が降る季節の前に

2015年05月12日 23時28分 JST

先日、伊万里市南波多町原屋敷という地域にお邪魔させていただいた。

山あいの集落で元々は棚田やみかん畑が天まで届くような場所だ。

とはいえ上の方はすでにみかんは廃園になり棚田も減反で耕作されていない。

それでも人里に近いところは中山間地域等直接支払い制度の活用などできれいに維持されている。

この地域の悩みが大雨が降ると田んぼの水路の水が溢れて道路が川のようになり家も浸かってしまう、というものだった。しかもここは地すべり地帯でもある。

「雨が降ると心配で寝られない」

「公民館も危なくて避難できない」

「雨が降ると地域外の家に避難させれてもらっている」

「昔とは雨の降り方が違ってきているので短時間での大雨になったらどうなることか」

などの切実な声が寄せられた。確かに現場を見るとそうだと思う。

水路というのは普通なら水田の脇を通すのだが、この地域は新田開発をするとき少しでも広く耕作できるように水路を暗渠にしてある。

そういうこともあって水が溢れてしまうということもあるようだった。

ただ、この暗渠や棚田それ自体はきれいに維持されている。加えて訪れたその日は凱風快晴の気持ち良い日。

きれいですね、と思わずつぶやいたが、雨が降るとこうなんです、と何枚も写真を見せられた。

思わず息を呑んだ。

ナイアガラの滝のように棚田から水が溢れている。下の田んぼも家も水に浸かり、水に囲まれているような状態だ。

これまで人命に関わるようなことになっていないのがせめてもの救いだが、いつなんどきそういうことになるとも限らないほど、状態は切迫しているように思えた。

「水路をもっと整備して水が溢れないようにしてほしい」ということである農水省の補助事業の申請を昨年度にしたのだが県の段階ではねられてしまった。

理由は「費用対効果が低いから」だったと言う。

確かに数千万円かけて行う投資に対して農業の面から見た効果というのは確かにそれほどないかもしれない。しかし防災の観点からは必要なのではないか。地元の方々はこの写真も見せ、行政の担当者にはそのことも訴えた。

しかしながら、「この事業は農林の事業なので人命を救うということはこの事業の必要性の評価の対象にはならない」と言われたのだと言う。それを言わざるを得なかった担当者も辛かったと思う。

では人命を救う事業、すなわち防災事業ではどうなのか。

河川が氾濫しそうだからそれを防ぐために事業をする、というのはよくある。これでどうか、と思ったが、この水路は河川ではないから難しい、と言われたという。

あえていえば「溝」のようなもの、らしい。

「溝」がそんなに氾濫するわけがないのだが行政的にはそう整理せざるを得ないのだろう。

事務所に戻って、地方創生の分厚い事業パンフレットを見たけれどこういうものが対象になりそうなものは見当たらなかった。

もう少し勉強しないといけない。

なんか知恵はあるはずだ。本当に農林関係ではだめなのか、あるいは例えば砂防ダムではだめなのか、など。

どうやったらこの地域で安心して暮らすことができるようになるようの事業を実施できるのかこれから知恵を巡らせていかないといけないが、

地域や地方のニーズに合う形で実施できる事業がないものか、とつくづく思った。

まもなく、雨期が訪れる。

今年もまた不安な気持ちでこの季節を迎えることになることを申し訳なく思う。

できるだけ早く安心していただけるように努力していかなければ。

(2015年5月12日「週刊yasushi」より転載)