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キロ100円お米の価値を上げた梶山さんの商品づくりに迫る

「お米が足りない」なんて最高の悩みですよ。

2017年11月23日 15時10分 JST | 更新 2017年11月23日 15時10分 JST

有機農業の町・宮崎県綾町で農作物の加工品づくりと販路開拓に取り組む梶山剛さんへのインタビュー。梶山さんが作り出した加工品のストーリーを紹介します。

有機農業の町・宮崎県綾町で直売所の店長を務める中、農家さんの苦しい毎日を目の当たりにした梶山さん。彼らの悩みに耳を傾け続けた梶山さんが取り組み始めたのは、地元の農産物を利用した加工品づくりでした。

梶山剛さん プロフィール

岩手県出身。綾町出身の奥様との結婚を機に綾町に移住。綾町の農産物や工芸品を扱う直売所の店長を経て、地域商社「梶山商店」を2017年1月に立ち上げる。梶山商店では、綾町の農家さんが育てた農作物の加工品を企画・販売中。

「ITで農業の"できる"をもっと」をコンセプトに展開するプロジェクト「できる.agri」の活動の中で出会った梶山さんの、もうひとつのストーリーをご紹介します。


綾の野菜カレーセット売り切れ続出。お米が足りなくなった!

ー綾町の農業を知ってもらうために加工品を作ったということですが、実際にどんなものを作ったのでしょうか。

パウダー状のカレールウです。作ったきっかけは、綾のお米が安く流通されていたことです。

栽培期間中、除草剤や農薬を使用せずにお米を作っていても害虫被害や除草作業などで人件費などのコストがかかるのに、販売価格は安価で割に合わないから、減反政策で補助金を受けながら家畜用のお米の栽培が増えました。

しかし家畜用のお米の栽培が増えすぎてしまうと、元の田んぼへ戻すのにまた時間がかかってしまいます。お客様のニーズが出た時にチャンスロスにもつながるため、農家さんの収入に直結してしまうことだと考えたんです。この「有機農業の町」と言われている宝物を、そもそも潰さなくてもいいじゃないかと考えたんです。

それには直売所勤務の時に、お客様が購入する商品でこの数年で大きく伸びていた商品がお米だという実績があったことも大きな確信の1つでした。

今までの消費者ニーズは形や色だったのに対して、今後は栽培方法や安心できる、安全であるということが第1条件になってくるんだろうと実感しました。

だから、「お米を自分たちで買って、ニーズのある企業にマッチング・商品化しよう」ということで2年ほど前にカレーを作りました。宮崎市内のスーパーさんが製造・販売者になって、商品開発を一緒にやりました。カレーの中身の30%が綾町の玄米米粉です。

ーはじめに「加工品を作る」と農家さんに伝えたときには、どんなリアクションがありましたか?

「本当にできるの?」という感じでした。それまで加工品づくりに取り組んできた人はそんなに多くは綾町にいなかったので......。でも、サンプルを作って形にしていく中で、変化がありました。

「できるじゃないか」「本当にできたのか」という声をいただけるようになったんです。そうしたらメディアにも取材されるようになって。

「お米を作っていただけなのに、なんでテレビに出るようになってしまったんだろう」という驚きがあったようです(笑)。

吉田瞳
​​​​​​​

ー初めての経験というか。

そうですね。お米が商品になる、という一連の流れを初めて理解されたんだと思います。感動していました。「これで需要が伸びてくればいいな」という言葉もお米の生産者さんからいただいて。

ーカレーを作って、なにか反響はありましたか。

商品がメディアに出たり、いろんな人たちの目にとまるようになって、「綾町のお米を食べてみたい」という消費者のニーズも出てくるようになりました。

カレーに生産者さんの名前を明記しているので、その方のところに直接問い合わせをした買取業者さんも多かった。他の町内で同様に栽培されている生産者さんの作っているお米も消費されるようにもなって。良い連鎖が起きていると思います。農家さんのお米が全然足りなくなるような段階までになりました。本当はもっと欲しいぐらいです。

ー企画側としては嬉しいですね。

そうですね。嬉しいですね。「お米が足りない」なんて最高の悩みですよ。値段も変わりました。カレー粉の原料として使っている玄米の生産者さんは、1年前に比べて1kgあたりのお米の販売金額が100円上がったんですよ。正当な値段で、生産者さんも販売することができるようになったのが一番のプラスで、収入が増えているわけですから。

10年後には「お米が収入のメインです」っていう農家さんが綾町に増えればいいな、と思っています。「半年お米作って、半年は遊んで暮らす」みたいな働き方ができて、お休みがとれますよね。お米と田園風景を守りたいと思っているので、お米の加工品をに力を入れています。

吉田瞳

ー初めての商品が売れるまで、梶山さんはどんなお気持ちだったのでしょうか。

期待と不安が入り混じっていました。お客さんがどういう商品を欲しているのかは、販売してみないとわからないので、「売れるのかなあ」と自分でも半信半疑のようなところがありました。立ち止まった時は不安なんですけど、「でもとりあえず進まないと!」と思っていつもやってます。

ー実際販売してみてどうでしたか。

一番嬉しかったのは「アレルギーを持った人がカレーを食べることができました」「子どもも大人も一緒になって同じものを食べられました」という声をいただいたことです。

グルテンフリーでアレルギーの方にも食べて頂けるというところがセールスポイントのひとつなので。食卓の笑顔が一つでも増えたことが嬉しいですね。

他にもこの商品は動物性の原料や化学調味料、白砂糖を使用していないところももっと知られると嬉しいです。

商品には全て生産者さんの名前を。加工品が農家さんのやる気につながる

ー他にはどんなものを?

カレーの他にはジンジャーパウダーや玄米米粉コーヒーかな。

吉田瞳

これが玄米米粉コーヒー。玄米茶みたいな感じかな。100%玄米なので、カフェインレスです。だから授乳中の方とか妊婦さんとか、コーヒーは好きだけどカフェインを摂りたくないという人におすすめですね。

あとは夜にコーヒー飲みたいけど、トイレに行きたくない人とか。お年寄りで、気にされる方がいますよね。

チャイみたいに鍋で温めたり、パウンドケーキだとか何かに加えてもいいかもしれません。農薬を使っていないということが、どこかで突き刺さればいいなと思っています。

ー味も香りも優しい感じですね。商品を加工販売するうえで、どのような工夫をしていますか。

商品には全て生産者さんの名前を出していっています。そうすることで、彼らがやる気を出して、次を作ろうっていう意欲につながればいいなと。

ー加工品に生産者さんの名前が明記されたことには、どんな反応がありましたか。

はじめは「恥ずかしい」と言っていました。「あんまり自分たちの名前を入れないでほしい」というニュアンスの方が強かったと思いますね。

ーでも、今は生産者さんの名前を入れて販売しているんですよね。どのように理解してもらったのでしょうか。

商品を買わせていただいて、加工品のサンプルを作って持っていったことが大きかったです。食べていただいて、自分たちの本気度を伝えたんです。「本当に商品として作りたいんだな」というのが生産者さんに伝わって、協力していただけることになりました。

ー今の農家さんたちは、加工品に自分たちの名前を載せることに対して前向きなんですか。

すごく自信を持ってます。自分たちのお米に誇りを持てているんじゃないかな。以前はご自身の作品に対して自信はあったと思いますが、今よりも表に出る事に対して消極的だったと思います。

農薬や除草剤を使ってないから、虫の被害があったり、ちょっと黒ずんだ部分があったり。その部分に対してネガティブな思いを持っていた。でも、今の時代の消費者の人たちは、より安心で安全なものを求めています。それが、綾の生産者さんたちの商品だって認知されました。

カレーを通して、生産者さんたちもそのことを実感されたようです。「またお米を作るぞ」とモチベーションが上がった。結果として自分たちの作るものに自信をつけることができたので、単価を上げることにもつながっていると思うんです。

ー綾町の関係人口をつくり、課題解決を少しずつ進める、きっかけづくりをする場所として綾町に「寄り場」を10月にオープンさせましたね。

梶山セレクトの農産品や加工品を販売しています。その他、様々なジャンルのワークショップや先駆者に学ぶトークライブ、アーティストの個展や展示会などを開ければ良いですね。毎週土曜日と日曜日に、7:30から15:00までオープンしています。

吉田瞳

吉田瞳

ー当初はカフェという構想で進めていましたが、最終的には「寄り場」という形で着地しました。

人が集まっている場所のイメージがカフェだったんですよね。「コミュニティを作りたい」というゴールが自分の中にあったんです。それがどういうことなのか、支援を募りながらいろんな人のお話を聞いてみて、走りながら、自分の中でブラッシュアップしていきました。

ーそれが「寄り場」ですね。

周りの方にやりたいことを上手く伝えられないこともありました。「自分のやりたいことをどうやって伝えていけば良いのか」という葛藤はありました。

今もなんとか形にしてやっていかないといけないという葛藤はありますけどね。

それを全部ひっくるめて、そういうことが地域で生きるっていうことだと思っています。

地域の中で重圧があって、悩んで。そういうのを全部ひっくるめて「地域で生きる」ということだと思います。

1人では生きてはいけないし、本当に農家の皆様や先輩の方々、行政の方々や商工会の方々、たくさんの地元の方々に支えられていることに心から感謝をしていますし、またそれを今後は今よりも行動で示していければと思っています。

そしてみんなでたくさんのプロジェクトをジャンルを超えて地域のために出来たらと考えています。

ー今後やりたいことを教えてください。

faavoさんにここでクラウドファウンディングの説明会を一緒に定期的にやる予定です。クラウドファウンディングをやりたい人がこの付近にいるかもしれない。

実際に地域でチャレンジする人を増やしていければいいなと思います。資金を集めて、実際に形にするというやり方があることが認知されていけばいいですね。

情報を共有し綾町の新たな価値を作り出せればと思います。それが持続的な地域を作るという事につながればいいなと考えています。

綾町内のアーティストさんや作家さんの個展を開いたり、トークセッションやワークショップを開催する、なんていうことも考えています。

吉田瞳

綾町の作家さんが手がける「オンカカさん」。梶山商店の守り神だそうだ。

綾町の魅力はこちらに!

aya100 http://aya100.jp/

【編集後記】

最初は農家さんも加工品の取り組みに対して半信半疑だった、という話が特に印象的でした。そんな農家さんたちが自分たちのお米に誇りを持てるようになるまでの経緯に心を動かされました。少しずつ農家さんの信頼を勝ち得ていくことができたのは、いつも誠実に地域に向き合う梶山さんだからこそだと思いました。

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(この記事は、"ハートに火をつける"Webメディア「70seeds」から転載しました)