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浜田宏一参与 アベノミクス心配ない

2013年06月08日 00時40分 JST | 更新 2013年06月08日 00時40分 JST
Reuters

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安倍晋三首相のブレーンで内閣官房参与を務める浜田宏一・米エール大名誉教授は、最近の株式相場の下落について、アベノミクスに対する期待の過剰な部分がはく落したものであり、上昇トレンド自体に変化はないとの見解を示した。

雇用関連指標が改善基調にあるなどアベノミクスの効果が実体経済にも波及し始めており、長期的な観点からもアベノミクスに「心配は何もない」と強調した。

安倍首相が発表した3本目の矢である「成長戦略」に対しては、海外投資を呼び込むための法人税減税が不可欠と提言。厳しい財政事情の中で、政府が予定している消費税率引き上げはやむを得ない面があると一定の理解をしながらも、急ぎ過ぎれば日本経済に悪影響を与えると警告した。

米金融政策への思惑などを背景に為替市場では一時1ドル=95円台まで円安修正が進行しているが、さらなる円高への対応では日銀による追加緩和が有効と指摘。現行の国債大量購入以外にも手段はあると語った。また、長期金利に上昇圧力がかかっていることに関しては、期待インフレ率の上昇によって実質金利がマイナスである限り、心配はいらないと述べた。

インタビューの概要は以下の通り。

──ここにきて株式市場が急速に不安定化している。アベノミクスに対する期待が後退しているのか。

「過剰な期待がはがれただけで、全体としてのトレンドは変わっていない。アベノミクスに対する期待は生きているし、実態にも効いている。地域の経済動向や雇用、マインドに関する指標などすべて上向きだ。株式はまぼろしで動くかもしれないが、実物経済も動き出した。アベノミクスに長期的な心配は何もない」

「時々、夢から醒めた人が、夢か現実か悩む。長く続いた株価の上昇が梅雨に入り、アベノミクスによる回復が現実なのか夢なのかを考える時、実際の統計を見る事が必要だ。有効求人倍率などは派手ではないが改善しており、アベノミクスが効くと思っている人が現実を買っているとみている」

──市場には安倍首相が発表した第三の矢である成長戦略への失望もあるようだ。

「第三の矢はミクロの政策であり、教育、農業、医療などをどうするかということ。複雑で、その性質上、説明が非常に難しいが、うまく表現することがもっとできるのではないか。どこがポイントなのか、わからないようになっているのは残念。目玉の1つとして、規制緩和と一緒に法人税を引き下げることが重要だ。グローバル化した社会の中で、法人税を高いままにしておくと租税競争で負ける。海外からの投資を呼び込むには法人税を下げなければならない」

──一方で財政再建も重要だ。成長の視点も踏まえて消費税増税に対する考えは。

「やむを得ず消費税を上げなければならないという方向にあると思うが、急ぎ過ぎると肝心の日本経済の成長そのものが止まってしまう。国民が政府にお金を貸すということが循環的に起きている状態はぜい弱であり、財政再建はやらなければならない。しかし、インフレがマクロの究極目標ではないのと同様に、財政再建もマクロの究極目標ではない。金融政策を十分にやりながら、法人税減税などで経済活動を活発にし、パイを大きくすることが先決だ」

──米金融政策の出口戦略への思惑などもあり、為替相場は円高方向に振れている。

「米国の金融政策が手仕舞い方向というと、アメリカのリアルな経済に悪影響を与えるので円高要因だという人がいるが、それはうそ。円安要因だ」

──金融政策への思惑などでさらに円高が進行した場合の対応は。

「日銀がもっと金融緩和すればよく、心配はいらない。黒田東彦総裁が、2年で物価2%を達成するために必要な政策はすべて打ったと発言し、これで金融政策は手仕舞いという印象を与えたようだが、それは戦略的にどうなのか、という人はいる」

──長期金利の上昇圧力も経済にとって不安要因だ。

「名目金利の上昇で銀行と証券会社の国債保有部門は損をするが、株式に投資をしている人はもうかっており、国民経済に与える資産効果もある。信用の流れもよくなり、それが今、雇用などにじわじわと働きつつある。インフレ期待の上昇は名目金利を高めるが、実質金利は下がるので国民経済には影響ない。実質金利がマイナスである限り、何の心配もない」

──名目金利上昇を抑えるために日銀がやるべきことはあるか。

「日銀が長期国債を買えば長期金利を下げる直接の効果がある一方、インフレ期待も高まるので、実質金利が同じであれば、名目金利は上がる。国債を買えば買うほど債券が安くなるということにもなり、それを防ぐためには国債だけでなく、いろいろなものを買えばいい」[東京 7日 ロイター]

(伊藤純夫 金子かおり;編集 山川薫)