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原発撤退が相次ぐアメリカ なぜ簡単に原発からの撤退を決められるのか

2013年08月29日 00時48分 JST | 更新 2013年08月29日 18時57分 JST
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MINERAL, VA - AUGUST 24: The North Anna Power Station operated by Dominion Energy remains offline after losing offsite power in the wake of yesterday's 5.8 earthquake August 24, 2011 near Mineral, Virginia. The epicenter of the quake, the East Coast's largest since 1944, was located a few miles outside of Mineral, a town of 430 people located about 50 miles west of Richmond and about 7 miles from the North Anna plant. (Photo by Scott Olson/Getty Images)

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コスト高から原発撤退が相次ぐ米国。簡単に原発からの撤退を決められるのはナゼ?

米国で原子力発電からの撤退が相次いでいる。理由は安全性への懸念ではなくコスト。シェールガス革命の影響で原発の発電コストの高さが際立つようになってきた。また米国は日本と異なり、核燃料サイクルを構築しないシンプルなワンスルー方式を採用している。放射性廃棄物の再処理問題がなく、原子力産業が身軽という点も大きく影響している。また電力が自由化されており、電力会社が地域独占ではない点も、意思決定のスピードを速くしている。

米電力会社エンタジーは8月27日バーモント州のヤンキー原発を閉鎖すると発表した。閉鎖の理由は原発の発電コスト。

米国では安価なシェールガスの開発が進んでおり、近い将来エネルギーのほとんどを国内の石油や天然ガスで賄うことが可能とみられている。米国ではエネルギー価格の下落が進んでおり、試算方法にもよるが原発のコストは天然ガスの2倍近くにもなっている。

今年に入って米国ではヤンキー原発以外にも3つの原発が閉鎖を決定している。7月には米国の原子力発電事業に進出していたフランス電力公社が、原発の採算が合わなくなっていることを理由に米国市場からの撤退を決めた。

米国の電力会社がコストが高くなったからといって容易に原発から撤退できるのは、米国がワンスルー方式と呼ばれるシンプルな原子力政策を採用している点が大きい。

日本やフランスは、原発の使用済み燃料を再処理し、その中からプルトニウムを抽出、再度原発で燃料として使用する「核燃料サイクル」の構築を目指している。このため、核燃料の再処理工場や高速増殖炉など、様々な付帯設備を開発する必要がある。

だがプルトニウムの取り扱いや高速増殖炉の運転には危険が伴うため、商業ベースに乗せるためには相当の技術開発を重ねる必要がある。現在、日本では青森県六ヶ所村に再処理施設を建設中だが相次ぐトラブルで操業開始が延期となっているほか、高速増殖炉もんじゅは運転を停止したままとなっている。再処理後に出てくる高レベル放射性廃棄物の最終処分場もまだ決まっていない。

これらの開発には何兆円もの国費が投入されており、簡単には撤退できない状況に追い込まれている。日本の原子力業界が何としても再稼働を急ぎたい背景にはこのような事情もある。

一方、米国はウランを原子炉で燃やした後は再処理せず、そのまま廃棄するワンスルー方式を採用している。危険な核燃料サイクル施設を建設する必要がなく、コストも安い。原発からの撤退は、単純に発電所の採算だけを考えればよいため、意思決定が容易だ。

米国における原子力開発に対する考え方はシンプルだ。核戦略上、原子力開発そのものは必須と考えており、この分野からの撤退はまったく考えていない。だが商用ベースの発電所については、民間ベースで純粋に経済合理性だけで判断すればよいというものである。

だが日本の場合、原子力開発については、建前上、核開発の技術蓄積のためとは公言できない事情があった。このためあくまで商業用原発を普及させることが主目的とされた。さらに原子力開発が推進された当時、エネルギーのほとんどを石油の輸入に依存していることについて、かなりの危機感があった。このため何が何でも核燃料サイクルを確立しなければならないという雰囲気が強く、米国ようなシンプルな方式はあまり検討されなかった。

原発問題には、安全保障(核戦略)、エネルギー自給、コスト、危険性という4つのファクターが存在しており、その他の発電技術とは大きく異なっている。原子力開発の是非について議論するためには、この4つのファクターのどれも欠かすことはできない。日本の原子力開発が迷走しているのは、この4つについて真正面から議論してこなかったツケといえるだろう。

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