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「富裕層への減税措置」は社会をどう変えたか:研究結果

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フランスの経済学者、トマ・ピケティエマニュエル・サエズ、そしてイギリスのアンソニー・B・アトキンソン氏ら4名の経済学者が共同発表した論文によれば、米国では、高所得者の上位1%だけで総所得額の20%を稼ぎ出しているという。そしてこの割合は、1970年代から今までの間に、10%から20%と、ほぼ倍増した。論文は、この増加傾向が先進国の中でずば抜けて大きい点も指摘している。

論文に掲載されていた、下記のグラフをご覧いただきたい。複数の国における上位1%の高所得者が得た収入の変化と、そうした高所得者の大半が獲得してきた、手厚い優遇税制との関係を示したものだ(1960年との比較)。

点の位置が高ければ高いほど、その国の所得格差が拡大したことを示している。左上のずば抜けて高い位置に、他のどの国からも離れた赤い点が見える。それが米国だ。米国の高所得者たちは、40%を超える減税措置を享受しつつ、その所得を伸ばしてきた。

このことは、2013年5月に経済協力開発機構(OECD)が発表した調査結果(PDF)とも一致している。OECDの調査でも、米国は先進国中、最も所得格差が大きいとされ、それを上回るのはチリ、メキシコ、トルコだけだった。

このグラフから見えてくるのは、一般的に、上位1%の高所得者が手にする減税規模が大きいほど(グラフの横軸:マイナスの数字が大きいほど減税規模も大きい)、所得格差も大きいということだ。この点は、「税法が所得の分配に大きく影響している」とする他の研究結果と一致する。

米国の政府や議会はこれまで、富裕層の減税は、米国の経済成長とトリクルダウン(富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が浸透する、と主張する経済思想)、そして社会の自由のために必要だと主張してきた。しかし残念ながら今回の研究は、富裕層に対する減税は、保守派層の主張に反して、経済成長にとっても、貧困層にとっても、明確なメリットがないことを指摘している。

グラフを見ると、もうひとつの事実が浮かんでくる。英国でも、米国同様に上位1%の高所得者に対する大胆な税優遇措置がとられているのだが、それにもかかわらず、総所得に占める彼らの割合は、米国ほど大きいわけではないことだ。

その原因は多かれ少なかれウォール街にあると指摘するのは、『The Atlantic』誌の編集者マシュー・オブライエン氏だ。富裕層向け減税措置を推進してきた政治家は、銀行に対する規制も緩めている。おかげで金融業界は、かつてないほど多額の収益を吸い上げて肥大化しながら、経済全体に対してはわずかな「お返し」のみで許されているというのだ。

不平等の拡大は、銀行役員が利益を吸い上げ、最高経営責任者(CEO)が莫大な報酬を手にしていることに原因があるとする研究結果がいくつかあり、上述の論文はそれらとも一致している。

それに加えて、米国の議会は、富裕層が投資によるキャピタルゲインを積み上げることができるような税制措置等を推進している。

莫大な富を持っている層は、その富を利用して政治家を懐柔し、自分たちの望む法律(とりわけ、今あるお金をさらに増やせるような法律)を作りやすくできる。一方で低所得者層と中産階級は、政治システムに対する失望感をさらに強め、戦う気力をなくしてしまう。その結果、富裕層および彼らの意に沿う政治家が、プロセス全体をますますコントロールできるようになるのだと、南イリノイ大学のフレデリック・ソルト氏は、近年発表した論文の中で述べている。

[Mark Gongloff(English) 日本語版:ガリレオ]

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