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中国初の空母「遼寧」が長距離訓練 その目的は?

2013年12月09日 15時06分 JST | 更新 2013年12月09日 15時11分 JST
AFP時事

kyokasho

中国初の空母「遼寧」が南シナ海で初の長距離訓練を実施。その意味は?

中国初の空母「遼寧」が、駆逐艦などと空母機動部隊を編成し、初めての長距離訓練を行っている。南シナ海に向けて航行する際、尖閣諸島付近を通ることから、中国による防空識別圏設定に伴う挑発行為との声が出ている。確かにこのタイミングでの訓練実施にはそのような意味も含まれると考えられるが、中国側にはもう少し長期的な目標があると考えられ、日本にとってはこちらの方が重要である。

遼寧は2013年11月26日、駆逐艦2隻、フリゲート艦2隻と共に母港の青島を出港し、演習海域である南シナ海に向かった。これまで遼寧は、黄海付近を中心に、単独で航行訓練や艦載機の離着艦訓練を繰り返してきた。今回、駆逐艦などと艦隊を組んで長距離訓練に出たということは、従来の訓練レベルから一段階脱皮し、攻撃型空母機動部隊としての訓練に入ったことを意味している。実際、今回の訓練では、近距離防空、対潜水艦攻撃、敵地攻撃などの演習メニューが含まれているという。

空母は外見上のインパクトの強さから、あらゆる兵器の頂点に立つ存在に思われるが、必ずしもそうではない。空母を保有する最大の効果は、むしろその外見がもたらすプレゼンス(存在感)にある。空母を保有しているということは、その空母が航行する海域において、一定の軍事作戦を展開できるという能力(ケーパビリティ)を保持していることの証明となる。まさに存在していることに大きな意味を持つ兵器である。米国が第七艦隊の主力空母(現在はジョージワシントン)を長年、横須賀に配備しているのは、日本近海の制海権は米国にあることを周辺国(特に冷戦時代における旧ソ連)に知らしめるためである。

中国はこれまで、米軍と自衛隊の存在があったため、黄海以外で艦艇が自由に航行することができなかった。中国は、王朝時代に冊封(中国が朝貢してきた周辺諸国に対して統治を認め主従関係を結ぶ外交政策)を行っていた地域の周辺を第一列島線と定め、この海域における中国の権益を確保する方針を明確に打ち出している。具体的には九州・沖縄から台湾・フィリピン・インドネシアを結ぶ線がこれに該当する。

この中でも南シナ海について中国は極めて重要視しており、まずはこの海域の制海権と制空権を確保することが当面の目標と考えられる。今回の遼寧の演習が南シナ海で行われるのにはこうした背景があると考えられる。

当然、次の目標になるのが東シナ海であり、尖閣諸島や沖縄はこの海域に存在している。だが沖縄は米軍の拠点であることや、日本の自衛隊が存在していることから、この海域への関与を深めてくるのは、南シナ海の状況にある程度のメドが付いてからになる可能性が高い。

中国が東シナ海の制海権を一部確保することができれば、第一列島線に沿って、黄海、東シナ海、南シナ海を事実上、自国の海することができる。

日本は尖閣諸島という近視眼的な問題に振り回されているが、中国の動きを効果的に牽制するためには、中国の長期戦略を知った上での封じ込めが必要となる。今回の遼寧の南シナ海での演習は、このように解釈すべきものといえるだろう。

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