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「養護老人ホーム」空き室目立つ最後のとりで 生活に困る高齢者を放り出す自治体に疑問の声も

2014年01月26日 23時54分 JST | 更新 2014年01月27日 00時00分 JST
Bloomberg via Getty Images
A nursing home nurse, left, guides a resident using a walking stick as they walk through the care home for the elderly in Szklarska Poreba, Poland, on Saturday, Aug. 24, 2013. The Grandma export trend has set hands wringing in Germany, where Munich's leading newspaper denounced it as 'gerontologic colonialism' and compared it to nations exporting their trash. Photographer: Bartek Sadowski/Bloomberg via Getty Images

(報われぬ国)高齢者を放り出す自治体

4月から消費税率が8%に上がり、「負担増の時代」が幕を開ける。だが、負担は超高齢化社会で報われるのだろうか。社会保障の現場から報告します。

沖縄県北部にある老人ホームに、がらんとして薄暗い一角がある。鉄筋2階建てのうち2階の半分を占める養護老人ホームだ。

「昔はね、満室だった。毎日カラオケをしてにぎやかだった。すっかり人も減って。寂しいね」。サノさん(89)がぽつりと言う。

定員は50人なのに入所者は28人しかいない。30室ある一人部屋はほとんど空室で、4畳半にベッドがぽつんと置かれているだけだ。

養護老人ホームは、貧しかったり身寄りがなかったりして自力で暮らせない高齢者(65歳以上)を受け入れる。老後の安心を守る最後のとりでだ。介護が必要な高齢者が介護保険を使って入る特別養護老人ホームと違い、自治体が「措置」という名で入所を決め、費用をすべて負担する。

サノさんが入る養護とは逆に、1階と2階の残り半分を占める特養は満室だ。「養護は市町村が措置しなくなって減るばかり。特養は100人以上が入所待ちなのに」と施設長は言う。

ここの養護では、名護市などから高齢者を受け入れてきた。かつては満床に近かったが、この数年は新たな入所がなくなった。自治体による「措置控え」だ。

入所者を追い出す「措置外し」さえある。

2011年6月、沖縄県南部にある養護にいた女性(90代)の親族に、南城市から文書が送られてきた。「介護の認定をさせるように」という要請だった。

親族は市に呼び出され、「特養がいいですよ」と勧められた。いきなり環境が変わるのを心配したが、女性は措置を解除され、住み慣れた養護を後にした。

前年には、糸満市がこの養護にいた別の女性(80代)の措置を外した。息子から虐待を受け、保護されて入所したのに、再び一緒に暮らしているという。

いま、沖縄県全体で養護の入所者は定員の7割しかいない。「養護1人で生活保護4人分の財源がなくなる。措置を求められても、国が主に負担する生活保護や介護保険を利用してもらう」。県北部の市の担当者はそう打ち明ける。

措置控えは全国に広がっている。「21世紀・老人福祉の向上をめざす施設連絡会」(大阪市)が、全国の養護の施設長に昨年9月に聞いたアンケート(301施設が回答)では、60%が「定員割れ」と答えた。その原因として「行政による措置控え」という答えが29%と最も多かった。

「市の担当者から今後は措置しないと明言された」(岡山)、「予算が計上されていないと断られた」(神奈川)、「介護保険を使って在宅を続けるよう勧めている」(福岡)、「まさに責任放棄だ」(群馬)。施設長からは、生活に困る高齢者を放り出す自治体に疑問の声があがる。

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(朝日新聞社提供) 

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