管理職の4割が女性。リクルートスタッフィングが採り入れた「スマートワーク」という働き方

2014年08月12日 00時00分 JST | 更新 2014年11月19日 17時10分 JST

女性の人材活用が叫ばれる昨今、総務省の「労働力調査2013年」によると、日本における女性管理職の割合は11.2%。先進国の多くが3割ほどの比率となる中、日本の女性管理職はきわめて少ないと言える。こうした状況下、女性の管理職が39.5%を占める企業がある。人材派遣サービスを行うリクルートスタッフィングだ。同社の代表取締役社長である長嶋由紀子氏は「女性を積極的に登用したわけではありません。あくまで機会を平等に与えた結果です」と話す。時間当たりの生産性を重視する「スマートワーク」という働き方を同社に採り入れた長嶋氏に話を聞いた。

yukiko nagashima

■ “時間“への意識を高めた「スマートワーク」

「2020年までに女性管理職比率を30%に増やす」。2003年に政府がこのような目標を掲げて以来、民間企業も女性の活躍を推進する取り組みに力を注いできた。しかし、それから10年経った昨年時点でも、女性管理職の比率は11.2%に留まっている。

長嶋氏はこうした現状について、「経営者の立場から見て、純粋に疑問を感じた」という。

「たとえば新入社員の男女比が半々の企業なら、男性も女性も同じように昇進していき、管理職の比率も半々になるのが自然だと思うんです。しかし実際はというと、なぜか9割がたが男性になってしまう。つまり、管理職の登用に男女差が出ているということです」

管理職としての職務要件や仕事内容は多くのケースで性別による違いはない。にもかかわらず、登用に偏りが出るのは、優秀な人材が埋もれている証拠だ。「それは企業の競争力にとってマイナスです」と長嶋氏は話す。

「企業が成長していくには、男女の別なく共に活躍できる環境を作るべきです。しかし女性に限定すれば、多くの場合、出産や育児といったライフイベントがキャリアを断絶する要因となってしまう。そこを改善しないといけない―—私にとって、これは大きな課題でした」

こうした課題を抱えていた長嶋氏は、ある働き方にシフトするよう全社に働き掛けたという。それは、時間当たりの生産性を重視する「スマートワーク」だ。

「高度経済成長期には、多くの時間を費やし、長く働き続ける人ほど評価されました。しかし、現代において競争力の源泉となり、サービスのクオリティを高めるのは、人材の多様性や社員の教養といった『企業が持つ社会性の幅』です。単純な労働時間の量だけで勝負するとなれば、女性をはじめとした優秀な人材が評価されづらくなってしまいます。だからこそ、『どのような働き方が評価に値するのか』といった価値観から見直したいと思ったのです」

■”時間当たりの生産性”で評価すれば、活躍できる人がもっと増える

リクルートスタッフィングがスマートワークを採り入れたのは、2013年1月からだ。取り組みはまず、社員一人ひとりの働き方や評価に対する考え方を変えるところから始まった。

「社員のパフォーマンス評価に『時間』という条件を加えるよう徹底しました。つまり、『トータルで何を積み上げたか』だけではなく、『どれだけ効果的・効率的に積み上げたか』も組織全体として見るようにしたのです」

社員へのマネジメントも「時間当たりの生産量」という考え方を基本とし、「時間と業績は相関しない」というデータを示すとともに、「短時間で好業績=かっこいい」というイメージを浸透させたという。

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スマートワークの根底にあるのは、「働き方の多様性実現により、個の能力を最大化する」という思想だ。

スマートワークを推進しなければと思った大きな理由がもう一つある。

「私たちリクルートグループが社会に提供していきたい価値の一つとして、誰もが自分らしい働き方を選ぶことが出来、個の持っている力が最大限発揮される機会を創る事をテーマに掲げています。私たちが提供する派遣の仕事紹介を利用してくださっている方々には、正社員になるための支援も行っています。しかし『正社員を希望しますか』と聞いてみると、『希望しません』という声が全体の半数近くにも上るんですね。そのほとんどが女性。とりわけ子育てをされている方が多いです」

正社員になりたくない理由として多くの人が挙げたのは、「子育てと仕事の両立が困難になる」という点だ。このような声が長嶋氏に「限られた時間の中で生産性高く働く」というスマートワークの必要性を一層感じさせた。派遣事業を生業として多様な働き方を提供する企業だからこそ、自分たちも社会のニーズに沿った働き方を実現させなければならない。その思いが強くなったのだと話す。

■優秀な人材を活かしていくために

全労働力に占める女性の割合は、結婚・出産期に下がり、育児が一段落した年代で上がる傾向があった。30代女性の労働力が落ち込むというこの「M字カーブ」の現象は、1987年の派遣法改正以降、徐々に改善が進んでいる。時間的な制約を理由に現場を離れてしまった女性を、「派遣」という働き方でもう一度労働市場に戻す取り組みが世の中に浸透してきたからだ。

「今後は子育てに限らず、両親の介護などで労働時間が限定される人がもっと増えてくるでしょう。そうなると職種や給料はもちろん、ワークスタイルという要素がさらに重要になってくるのは確実です。派遣という働き方は、その中で大切な役割を担っており、また派遣事業を行う私たちは、世の中にその現状を発信していく責務があると思います」

ワークスタイルによる仕事選びは、まだまだメジャーとは言いにくい。残業の有無や就業時間で仕事を選ぶ人は「意欲がない」と思われてしまうことさえある。

「ワークスタイルで仕事を選べるようになれば、雇用機会の創出につながるはず。多様な人々が働きやすい環境を提案し、機会を作っていくことは、私たちの使命とも言えます。私たちリクルートグループは『働く機会を創り、輝く人を増やす』というテーマをCSRの中で掲げていて、リクルートスタッフィングとしても『就業機会の創出によって社会に貢献する』という経営理念を持っています。私個人も、そういう時代に変えていければいいなと思っているんです」

働き方の多様性を生むために、派遣会社としてすべきこと。スマートワークという取り組みの背景には、そのようなテーマもあるという。

同時にまた、スマートワークの普及は派遣社員から正社員を目指す女性にとって大きな意味があると長嶋氏は考えている。

「女性たちが、派遣社員としての就業をステップに正社員へと転換しやすくなる環境を作ることも私たちの使命です。これを実現するには、『正社員も限られた時間の中で生産性高く働く』という考え方を企業に浸透させることが大切です。多くの女性は正社員になる際、時間的な制約を抱えていることに負い目を感じがちなので、『長時間労働による成果』ではなく『時間当たり生産性』を正当に評価できる企業に増えてほしいです。そのためにも、私たちが率先してスマートワークを行っていければと考えています」

少子高齢化が進み、労働力の減少が予想される今後の日本。時間あたりの生産性がこれまでよりも重視される働き方が普及し、多様な人たちが働く機会を見つけ、活躍できる社会になることを期待したい。

■長嶋 由紀子氏 プロフィール

1961年4月、東京都生まれ。85年に青山学院大学法学部卒業後、リクルート(現リクルートホールディングス)に入社。求人情報誌の営業を経て、95年、人事部課長を務める。02年、関東ブライダル部エグゼクティブプランナーを経て、06年4月、執行役員に就任。また結婚情報、新生活情報誌「ゼクシィ」を担当するブライダルカンパニーのカンパニー長に就任。

08年1月、リクルートスタッフィング社長に就任、現在に至る。