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"お金"や"出世"より大事なことーー2030年の働きかたはどう変わる?

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少子高齢化が進み、人口激減の荒波に見舞われつつある日本。今から16年後の2030年には、65歳以上の高齢者が人口の3割を占め、日本の人口は1000万人以上減少するといわれている。

このような激変する社会のなかで、個人の「働く」はどう変わるのか。キャリア形成に関する研究を行う、リクルートマネジメントソリューションズ・組織行動研究所所長の古野庸一(ふるの・よういち)さん(52)に話を聞いた。

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■2030年の日本 少子高齢化が進み、65歳以上も働く時代に

2014年、総務省統計局の調査によると65歳以上の高齢者が人口に占める割合は25.9%(2014年9月発表)となった。今から16年後の2030年には、さらに高齢化が進み、全人口の3人に1人が65歳以上という時代がやってくる。

年金受給開始年齢の引き上げや支給額の減額などが予想されるため、65歳を過ぎても元気な限りは「働き続けたい」という高齢者が増えていくことも考えられる。

また、日本の人口は、現在と比べて1000万人以上減少すると予想されており、様々な業界や職場での人手不足の広がりが懸念される。そのような社会になったとき、雇用はどのように変化するのか。

一方、古野さんは「大企業には人が集まり、中小企業は人が不足するという状態が、今後さらに拡大すると予想されます。都市部と地方でも同じことが起こっています」と話す。同時に「企業内で人材のミスマッチもさらに広がる」と見通す。

「大都市や大企業では、人手が余っている状態も同時に起こるでしょう。欲しい人材は不足しているのに、社内にはすでに人が余っている状態だったり、労働者は、自分が希望する企業や職種には就けなかったりする、雇用のミスマッチがさらに広がっていくと考えられます」

人手不足が広がるなか、中小企業や自営業者は労働力確保に追われそうだ。

古野さんは「大企業では、65歳以上の人を雇い続けることはしないと思いますが、今後、中小企業や自営業の場合は、高い専門性やスキルを持った貴重な人を雇い続けることはあるでしょう」と話す。

このように、スキルや経験を持った人は「働きたい」と思えば、定年にかかわらず、80歳まで働き続けることが可能な社会となる。

中小企業庁では現在、高い専門性や経験を持つ高齢者を募り、課題を抱える中小企業にマッチングさせるプロジェクトを実施。高齢者は、企業と業務委託契約を結び、経験を生かして働いているという。

■個人の働きかた――正社員から“サステナブル・キャリア”へ

このような社会の変化に合わせて、個人の「働く」はどうなるのか。古野さんによれば、今後はライフイベントに合わせて働きかたを変える、“サステナブル(持続的な)・キャリア”が重要になってくるという。

「今後は、新卒で就職して同じ会社で社員としてずっと働くという働きかたではなく、育児や介護など、自分のライフイベントに合わせて、一度辞めたり働きかたを変えたりしながら働き続ける、サステナブル・キャリアという考えかたがキーワードになると思います。それは、高齢者になっても、持続的に働ける領域や自分らしい働きかたを探し続けるという意味でもあります」

例えば、新卒で就職した会社で定年まで働くのが一般的な社会では、途中で学び直すという選択はハードルが高かったかもしれないが、人生の節目で働きかたを変えることが当たり前の社会になれば、一度仕事から離れて学び、さらに次のステップに進むことも選択肢のひとつになる。

古野さん自身も、33歳のときに会社を2年間休職して、アメリカの大学に留学しMBAを取得した。最初のきっかけは「単にアメリカという社会を実感したかった」と振り返るが、世界各国からビジネスの第一線で活躍する人が集まる場で学び、議論を重ねた経験は、大きな自信になったという。

■サステナブル・キャリア――自分なりの基準で仕事を選ぶ時代

サステナブル・キャリアを築くには、「報酬や会社の知名度といった従来の基準ではなく、自分なりの基準で仕事を選ぶことが大切」だと古野さんは語る。

「仕事を選ぶときの基準を、自分で持っていたほうがいいと思います。私も、38歳のときに体調を崩したことがきっかけで、自分のキャリアを見つめ直しました。今後のキャリアをどうするかを自分なりに考えて、仕事を選ぶ3つの基準を決めたんです」

1、仕事を通して社会に貢献していると感じられるかどうか。
2、自分の能力を十二分に発揮していると感じられるかどうか。
3、ワークライフバランスを保てるか。

「私の場合は、仕事を選ぶときに、この3つを軸にして決めようと思いました。森の匂いをかいだり、木漏れ日のなかを歩くのが好きだから、木こりになろうかと真剣に考えたりもしたんですが(笑)、自分の能力を十二分に発揮できる場所がそこだろうかということを考え、キャリアを選ぶ基準をつくっていきました。その後も、その基準で自分の仕事を見つめています」

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■「育児」も貴重な経験――企業は「何を学んだか」に関心がある

若者の転職と比べると、中高年や高齢者、専業主婦の転職や再就職は難しい。単に自分のやりたいことや、できることを語るだけではなく、「自分がその仕事や会社に対して、どんなことで貢献できるのかを明確にしておく」必要がある。

また、「それまでの経験から何かを学んだか」を語れるといいだろう。企業は、今持っている知識やスキル以上に、経験から学べる人を採用しようとしている。

「どんな仕事でもいいんです。もし、育児をきっかけに一度仕事を辞めたとしたら、育児に十分に向き合ってほしいと思います。育児から学べることはたくさんあります。その後、再就職するときに『育児を通じて、こんなこと学びました』と語ることができるなら、企業にも『この人は、目の前のことから色々学ぶ人なんだ』と伝わり『一緒に仕事をしてみたいな』となるわけです」

■パートとNPO、2つの仕事で“お金”と“やりがい”を両立

とはいえ、育児や介護などで仕事のブランクがあると、就職が難しかったり、何ができるのかわからなかったりする場合もあるだろう。とくに、5年、10年と専業主婦をしていた女性が、再び「働きたい」と思ったときに、どうやって仕事を選べばいいのか、悩む人も多いかもしれない。

古野さんは「まず、どれくらい稼ぎたいのか、お金の問題を整理するといいでしょう。バリバリ働きたいのか、平日の限られた時間だけパートで働きたいのか。それとも、子供が独立するまで家にいてあげたいと思うのか。家族の状況をふまえて、自分がどうしたいのかを明確にすることが大切です」と語る。

「例えば、私の知り合いは週4日、パートタイムで中学校のアシスタントティーチャーをしながら、週1日は興味を持ったNPOでボランティアをしています。同時に2つの仕事をすることで、“お金”と“やりがい”を両立する選択肢もあっていいと思います」

会社で正社員として働くことだけがキャリアではない。子育てやボランティア、パートタイムの仕事も、自分のキャリアの一部と捉えて、そのときの人生に合った働きかたを見つけていけばいい。これがサステナブル・キャリアの考えかたなのだ。

■夫婦のワークショップ――家族と「人生をどう過ごしたいか」を話し合う

自分なりのサステナブル・キャリアを築くには、まず自身が「人生をどう過ごしたいのか」を考えることが大切だ。家族、夫婦間で、仕事や人生をどうしていきたいのかを話し合うことが必要になるだろう。そこでリクルートマネジメントソリューションズは、夫婦で参加するワークショップを開催してみたという。

「“2030年の『働く』を考える”というプロジェクトの中で、夫婦のワークショップを実施したんです。16年後の自分たちがどうなっているかを考えてみようと。参加者の多くは30代の夫婦でしたが、普段は仕事や将来についてあまり話し合う機会がなかったようで『あなた、そんなこと考えてたの!? 初めて聞いた!』ということもケースも多かったようです」

夫や妻のどちらかの転職や独立は、将来を話し合うきっかけとなるが、「それ以前から、夫婦でぜひ話し合ってほしい」と古野さんは語る。例えば、毎月の書籍代など、何にいくら使いたいのかという具体的な支出について話し合うだけでも、互いの理想的な暮らしや働きかたを考えるヒントになるという。


■若者の働きかた――お金や出世より社会貢献がモチベーション

一方、リクルートワークス研究所「ワーキングパーソン調査」によると、この10年でUターンやIターンの希望者も倍増するなど、若者の仕事に対するモチベーションに変化が見られるという。

「若者のなかで、社会貢献欲求は高まっていると思います。今の若者は、生まれてから今まで、右肩上がりの経済成長を見たことがありません。お金や出世よりも、自分が貢献できる実感とか成長実感みたいなものを、仕事のモチベーションとして求めているのではないでしょうか」

とくに、Iターン、Uターンを希望する動機として、地方のほうが都市部よりも自分の貢献実感を得やすいことが挙げられる。クラウドワークの普及などによって、地方でも仕事が得やすくなったことも大きな理由のひとつだ。

徳島県神山町のように、IT系ベンチャー企業がサテライトオフィスを開設し、そこで働く若者が町おこしに貢献する事例もある。過疎化が進む地方都市は、移住しようという若者を歓迎する。大都市に比べて、自分が頑張ったことで社会が変わる実感が得られることも大きいという。

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■これからの企業――会社のビジョンと現場のマネジメントが重要

このように、人々の働きかたが多様化すれば、企業側のマネジメントも柔軟に変化する必要がある。今後、多様な価値観、属性を持った人々をマネジメントするには、何が必要だろうか。

「まずはベースとして、人材を“人として”見ていくことが今より重要になってきます。そのとき鍵となるのは、現場のミドルマネジャーです。マネジャーは、一人ひとりと向き合って話をしながら、多様なモチベーションに対応することが求められます」

「次に、会社のビジョンを、もっと明確に目的を打ち出すことが必要だと思います」と古野さんは語る。現在は、会社の理念や、組織の目標、目的が明確でない会社が多いという。非営利団体のNPOやNGOに人が集まるのは、「◯◯に貢献したい」というビジョンが明確になっているからだ。

「『5年後、10年後、こんなことをやりたい』という会社のビジョンに共感して人が集まるのが、一番ベーシックで大切なことです。一人ひとりのモチベーションを考える必要が無くなるかもしれませんね」と古野さんは語る。

■2030年、働く時間と場所が選べる時代 あなたの「働く」はどうなる?

サステナブル・キャリアには、自ら考え成長し続ける、自立した姿勢が必要となる。しかし、それは同時に、企業の都合ではなく、自分の人生をベースに、仕事を選ぶ自由を持つことにもつながる。

近年、働く場所や時間にとらわれない新しい働きかた注目が集まり始めているが、リクルートでも管理職の働きかたを変える取り組みが行われているという。

「2014年度の下期に、経営会議をSkypeなどを使って家でやってみようと進めています。もっとテレワークが普及すれば、今週は週3日しか出社しなくてOKというふうに調整できるようになると思います」

古野さんは「世の中全体が、労働時間を減らしていく傾向ですし、今後は働く時間、場所も選べる時代になると思います。時間に余裕ができれば、少子化対策にもつながるかもしれません」と微笑む。

2030年、あなたの「働く」はどうなっているだろうか——。遠いようで近い未来に、あなたは何歳になっていて、どんな働きかたをしたいのか。サステナブル・キャリアの第一歩として、仕事に対する自分のモチベーションとじっくり向き合ってみるのもいいだろう。

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