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【3.11】「福島第一原発、近づくことすら怖かった。だけど...」住民が初の視察で感じたこととは?

2015年03月10日 22時24分 JST | 更新 2015年03月12日 21時47分 JST

福島第一原子力発電所に地元の民間人が初めて視察に入った。福島県で起業したり、復興に携わっている15人が2月16日、現地を訪問したのだ。「報道や政治家の視察だけでは伝わっていないことがある。住民として現場を見て、それを周りに伝えたい」との思いを東京電力にぶつけ、実現した視察。日本で3番目に広い福島県の様々な地域から、年令や性別、立場が違う人々が集まった。

住民たちは福島第一原発で何を見て、何を感じたのか。視察にはハフポスト日本版も同行取。2月中旬から3月上旬にかけて、参加者に話を聞いた。(※掲載している写真のうち撮影日の記載のないものは、視察日に撮影したものです)

■「行かない」と即答した女性、「対峙したい」と視察を決めた原発避難区域の男性

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メモを取る日塔マキさん

「福島第一原発に視察に行かないかと誘われたとき、最初は断ったんです。『行かないよ。来年あたり結婚して、子供産もうと思ってるんだもん』と即答しました」

そう話すのは、郡山市出身の日塔マキさん(31)。女性の目線で福島の情報を発信する団体「女子の暮らしの研究所」代表を務める。当初は視察するだけでも怖いという思いが先に立ち、「行かない」という言葉が口をついて出てしまった。めったに立ち入れる場所ではない。見てみたいとの思いもあったが、怖かった。

一方で、怖がっている自分を、批判する自分もいた。

「まだ人が住むことができない避難指示解除準備区域になっている場所に、スタディーツアーでお客さんを案内することがあります。何も考えずに怖いから行かないというのは、それらの避難指示解除準備区域で頑張っている人たちを、否定するのと同じことなんじゃないかとも思いました」

同じ福島県に住んでいると言っても、色々な考えの人がいる。参加するべきかどうかを相談する相手もいなかったと、日塔さんは話す。そこで、視察企画者に悩みを打ち明け、当日の視察ルートや現地の放射線量、そして万が一の場合の避難対策など、視察に係る情報を東電から取り寄せてもらった。事前に開催されたワークショップでも、様々な疑問をぶつけた。最後は交際相手の男性に相談。企画者の説明も受けてもらい、一緒に考えてもらった。「行ってみれば。なかなかない機会だし」と背中を押され、参加した。

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入退域管理施設で出発を待つ和田智行さん

一方で、起業支援ビジネスを展開する「小高ワーカーズベース」代表の和田智行さん(38)は、二つ返事で参加を決めた。和田さんの住む南相馬市小高地区は避難指示解除準備区域。2016年4月の避難解除を目指しており、現在避難中の住民は帰還するかどうかを選択しなくてはならない。

既に帰還を決めビジネスを再開させた和田さんにとって、福島第一原発は廃炉までの30〜40年という長い期間、付き合っていく相手になる。

「これから何十年も対峙しなくてはいけないものなので、見ておきたいんです」

■あっけないほどきれいに片付いていた現場

視察した人たちがまず驚いたのは、がれきが撤去され、あっけないほどきれいになっていた福島第一原発の姿だ。日塔さんは、「テレビなどで見て自分が知っているはずの、がれきが散乱した福島第一原発と現実とは、全く異なって見えました。もとからきれいだったのではないか、そう錯覚しました」と話した。

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福島第一原発の中の、かつて「桜通り」と呼ばれた場所。2015年2月26日撮影

「それでも構内に残っている倒れた鉄塔や、津波でねじれるようにへこんだタンクなどを見て、ここも地震のときは大変だったんだと思えました。あのグチャグチャの現場をここまできれいにしてくださったのかと思うと、作業員さんたちには感謝しかないです」

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(上)海側にあった3つ並んだタンクは津波で位置が変わった。ねじれるようにへこんだ状態や位置は震災当時のままの状態で置かれていた。(写真は2011年3月に東電撮影)、(下)倒壊した送電線鉄塔は現在も倒れたままだ。

和田さんは、怒号が飛ぶような切羽詰まった現場を想像していた。

「もっとバタバタと作業しているのかと思いました。しかし作業員の方たちは落ち着いて淡々と作業していて、町で見るような、復興の工事現場と変わらないように見えました」

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海側の物揚場。瓦礫の撤去も完了し作業しやすい空間が広がっていた。

■場所によってはマスクも無し、視察も軽装

日塔さんや和田さんが驚いたように、福島第一原発構内の一部は除染が進んでいる。1号機の原子炉建屋から直線距離で約1km離れた入帯域管理施設前では、作業員たちは防護服を着用しておらず、マスクすらしていない人もいる。

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入帯域管理施設付近でバスを待つ人たち

入帯域管理施設では女性が働く姿も見られた。東京電力は2014年6月から、一部エリアに限って福島第一原発での女性の就業を許した。下の写真の奥に映る女性は「2014年の秋ぐらいから働いている」と話した。

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入帯域管理施設には女性が働く姿も見られる

今回の視察はバスから降りないものだったため、視察者も軽装備だ。防護服は着ず、サージカルマスク(医療用マスク)に木綿の手袋、ビニールの靴カバーと、線量計のみ。これだけの装備で、水素爆発の起こった4号機建屋の前まで近づくことができることに、参加者からは驚きの声が上がった。

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4号機建屋前付近。バス内からの視察であれば、サージカルマスク、木綿の手袋、ビニールの靴カバー、線量計だけの軽装備だ。

■ 一方で、線量の高い場所。低くても人が簡単に入れない場所

しかし、4号機の前の線量は毎時30マイクロシーベルトと、入退域管理施設前の毎時1.0マイクロシーベルトに比べると高くなっているため、バスの中であっても長居することはできない。さらには、原子炉に燃料が残っている1〜3号機の前には、この日の装備では近づくことが許されず、建屋全体を高台から遠目に見ることしかできなかった。

「きれいになったと思っても、もちろん建屋の中には入れませんでした。溶け落ちた燃料が残っていて、廃炉にはまだ何十年もかかる。片付いてきたけれど、そういう危険な場所もまだ残っている。そんな場所で働いてくださっている人もいるんだと、忘れないようにしたいです」と日塔さんは話した。

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構内の高台(海抜35メートル)からみた1号機〜3号機

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参加者の質問に答える小野所長(右)

福島第一原発の小野明所長(55)は、構内にも線量が低くなった場所があるといえども、まだまだ一般的な場所とは異なる環境であることを、免震重要棟にあるプリンターを例に紹介した。

「この部屋にもプリンターがたくさんありますが、故障をしてもメーカーの方が来られるわけではありません。そのため、社員がメーカーで修理方法を習い、故障したら自分たちで直せるようにしているんです」

1号機原子炉建屋から約320メートルの位置にある免震重要棟は震災前の2010年7月に福島第一原発に整備された建物で、震度7の地震にも耐えることができる。この中にある緊急対策室は外部から室内に放射性物質を持ち込むことがないように厳重に管理されており、線量も毎時0.3マイクロシーベルトとぐっと低い。現在でも24時間、常時80人程度の東電社員が詰めているが、マスクや防護服を着用する必要もなく、作業着姿でいることができる。それでも一般の民間人が簡単には出入りできる場所ではない。

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免震重要棟で説明を聞く参加者

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免震重要棟での事務風景。手前には大型プリンターも並ぶ。

プリンター業者が構内に入れないのと同様に、現在構内には飲料水は用意されていても自動販売機がない。現在入退域管理区域のすぐ隣に建設中の大型休憩所が2015年4月以降に完成するまでは、作業員の方が温かいご飯を食べる場所もない状態だと小野所長は話した。相馬市で復興活動を行っている視察参加者は、大型休憩所にコンビニエンスストアの入店も決まっていない状態であることに驚いていた。

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(左)建設中の大型施設とその側を歩く視察者たち、(右)建設中の大型施設

■その道のプロも事故を起こす、厄介な環境

放射線物質の影響で、外での作業は防護服やろ過機能のついた付いたマスク、そして2重の手袋といった装備が必要になる。これらの装備のために、事故が起こりやすい環境になっていると視察を案内した東電社員は話す。

忘れてはいけないのは、現在福島第一原発で働く作業員のほとんどが、震災前から福島第一原発で働いていたわけではないということだ。今、福島第一原発で行われている作業は、大型休憩所や汚染水用のタンク、原子炉建屋への地下水の流入を防ぐ凍土壁などをつくる建設作業が大半を占めているが、それまで防護服を着るような現場で働いてきた経験を持つ人はほとんどいない。

マスクによって視野が狭くなってしまったり、ふわりとした防護服がものに引っかかったり、手先の動きが鈍くなったりするなど、一般の工事現場にはない困難が発生する。このちょっとした装備の違いが事故につながってしまう可能性があるという。特に福島第一原発で働くようになって、現場に慣れるまでの最初の1週間での事故が多くなっていると、東電の担当者は説明した。

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すれ違う作業員

東電は福島第一原発で働く作業員に対し、働き始める前に安全管理指導を行っている。元東電社員で、福島第一原発の作業員に対する支援を続けている「アプリシエイト フクシマ ワーカーズ」代表の吉川彰浩さん(34)は、安全指導を東電まかせにするばかりではなく、協力企業も巻き込んで安全管理の意識付けを徹底しないと、より大きな事故につながる可能性があると指摘した。

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汚染水タンク前で作業する作業員

■1日7000人が働く現場

東電は事故が起こる要因について、作業員の増加にともない一人一人に対して管理が行き届かないことも一因だと見ている。

福島第一原発には、現在1日あたり7000人の作業員が働いている。これは1年前の約3730人と比べると、1.87倍の数だ。しかし、作業員を増やさなくてはいけない状況も目の前では発生している。作業員の増加の大きな要因は汚染水対策だ。現在、1日あたり400トンの汚染水が増加しているというが、この汚染水を貯める汚染水タンクは1基1000トンしか貯めることができず、2.5日に1基つくらないと足りない計算となる。

増え続けるタンクのために、東電は構内の森を削り敷地を増やした。1000トンの重さに耐えるように地面をコンクリートで固めたり、タンクからの汚染水漏洩を防ぐために、タンクの周りに溝を掘ったりなどの作業も必要になっている。

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タンク設置のための強固な地盤をつくる工事

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入退域管理施設で出発を待つ赤津慎太郎さん

いわき市で保育園を経営する赤津慎太郎さん(35)は、必要となる作業員を、今後も確保できるのかと不安を漏らす。東電だけで難しいのであれば、住民と共同で課題解決を行うべきではないかという。

「7000人と数字を言われても実感できなかったけれど、Jヴィレッジ(現在の事故対応拠点)の駐車場や、福島第一原発の構内の車両の数を見れば、本当にたくさんの人が働いているんだと実感します。今後もこれらの人材を集め続けられるのか。東電だけに任せていいのかとも思います。(私の住む)いわきのことばかりを考えていればいいというわけでないと感じました。

東電も住民も、ゴールは『福島の復興』で同じものです。全ての問題を東電だけに押し付けておくのではなく、共有できる問題であれば、一緒に解決できるよう、住民も前向きに取り組むべきではないでしょうか」

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午後5時頃のJヴィレッジ駐車場。日中は車両で全て埋まる。

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夕闇に包まれる頃、福島第一原発そばの国道6号には車のテールランプの列が浮かび上がる(2月28日撮影)

■「なぜこんなものをつくっちゃったんだろう」

視察者からは、エネルギーや地方経済という大きな課題の解決に国民が真剣に向き合ってこなかったことも、このような状況を作り出してしまう一因になったのではないかという声も出た。

和田さんは、原発の立地場所の海抜が低いことを自身の目で見て、怒りを覚えたという。

「福島第一原発で最も驚いたところは、?