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カキ養殖の光と影――海岸に拡がるプラスチックの「雪」。広島の市民はどう動いているのか

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「海のミルク」と呼ばれ、多くの人に愛される食材、カキ。日本一の生産量を誇る広島では、江戸時代から養殖が始まったという。世界遺産の厳島神社を臨む広島湾では、数多くのカキが育てられている。

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image by Marufish / flickr

広島産のカキは大粒で濃厚。そして名産品として経済効果も大きい。しかし、実はこの産業がある問題を生み出している。それは漂着ごみだ。宮島の美しい浜辺には、ペットボトルなどの生活ごみのほかに養殖で使用するプラスチックのパイプや発泡スチロールが打ち上げられる。

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発泡スチロール製の養殖に使われるフロート(浮力体)。

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カキの幼生を育てる採苗連(さいびょうれん)。幼生の採集発育のため、貝殻同士を離してつなげる。この間隔を作るのにプラスチックでできた約1cmの管が使われる。これも漂流ごみの1つ。採苗連はホタテ貝が使われることが多く、このような形で海中に吊るされる。

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上:近くの公園にまで飛んで行く発泡スチロール破片
下:カキ養殖用パイプ類

海に流されてごみとなったプラスチックは、分解されることなく漂い続け、海底に沈んだり浜に打ち上がる。一方、発泡スチロールは雨風にさらされることで、粉のように形状を変えていく。浜辺や公園では、まるで雪のような人工ごみが辺りを覆うことすらある。

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2015年3月に発表された広島県西部(広島・江田島・坂・廿日市)の漂着ごみの内訳。西部地域の漂着ごみは、県全体の約7割を占め、宮島もここに分類される。

これらのごみは、魚や鳥はもちろん、宮島に生息する鹿たちが誤飲誤食してしまうこともある。飲み込まれたプラスチックは、ときに内臓を傷つけ、消化器にたまり続け、ゆっくりと命を奪っていく。

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宮島の鹿

「この現状は絶対に看過できません。私にとって漂着ごみは敵だと言ってもいい。でも一概に誰が悪いとは言えないのです」と語るのは、宮島を中心に環境保全活動を行っているNPO「みやじま未来ミーティング」の馬場田真一さん(30)だ。

ジレンマに揺れる、日本三景の地「宮島」

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馬場田さんによると、瀬戸内海域における漂着ごみ問題は板挟み状態にあるという。カキの養殖は地域にとって大切な産業だからだ。

「カキの養殖をやめるわけにはいきません。昔は、竹など天然素材を使っていたのですが、現在は効率を重視して人工素材を使っています。そのほうが良質なカキをたくさん育てられるからです。でも、天然素材は自然に還っていくのに対し、人工物は残り続けます」

多くの人に、良質なカキをできるだけ安い価格で届けたいという生産者の想いは、効率化を促進させる。そして同時に、それは私たち消費者の望みでもある。その産物が、海に流れる人工ごみなのだ。「業者の方だって、悪気があってごみを出しているわけじゃないんです」と馬場田さんは語る。

海で利用した発泡フロートは、輸送コスト増、付着生物・塩分・汚れの除去が必要なため、二次費用が発生する。つまり、通常のリサイクルルートにのらないのだ。これらを勘定すると、新しいものを買ったほうが安くつく。そのため、「流れていってしまった」ほうが都合がいい面もあるのだ。たとえボランティアがごみを集めたとしても、その先でフロートの廃棄にお金がかかることにはかわりはない。

このように漂着ごみは複合的な問題を抱えている。県を代表する産業として尊重していかなければならないが、生態系も守らなくてはいけない。このジレンマを解決するために、みやじま未来ミーティングでは多くの方とごみ拾いをしたり、カキの養殖業を学ぶワークショップを開いたり、さまざまなアプローチを試みている。

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子どもたちに回収したごみの“これなあに?”を説明している馬場田さん。手に持っているのはプラスチックのカキの養殖用パイプ。

「一般的に廃棄物の責任は、事業者の方にあるとされています。そのため、中には事業者を責める方がいるのも事実です。間違っているわけではないけれども、私はそういうやり方はしたくない。みんなの問題なんです。養殖業がないと美味しいカキを食べられないし、広島の活気だってなくなるでしょう。でも、海が汚れていくのは食い止めたい。規模が大きいだけに時間はかかりますが、もっといい方法があると思うんです」

「広島の自然をどうにかしたい」

みやじま未来ミーティングは、2002年に地域の環境保全に取り組む団体のリーダーたちによって設立された。その音頭をとったのが、馬場田さんが現在働く職場だった。そう、馬場田さんはサラリーマンとして仕事をしながら地元の環境保全活動にも精を出しているのだ。なぜこのような道に進んだのだろうか?

もともと、機械が好きだったため工業系の高校に進学したが、担当顧問から誘われた山岳部をきっかけに自然にのめり込んだ。大学では環境学を学び、同時に学び舎を飛び出して、NPO活動に関わっていった。環境には答えはない。だからこそ、さまざまな団体の活動を見て、学んで、身につけて行きたかったという。四国や下関など、瀬戸内海全域を渡り歩き、1週間家を空けることもあった。それくらい夢中だったのだ。

馬場田さんは言う。「今の自分を育ててくれたのは、自然であり、それを守っていこうと動く人たちです。広島は、山も川も海もあって、それでいて気候が安定している稀有な場所。広島大好きっ子だからこそ、やっぱり地元と関わっていきたいんだという気持ちが強いです」

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「みやじま未来ミーティングは、各団体のリーダーたちによって組織されていることもあって、先生となってくれる人が多いんです。だからこそ船頭気質というか、意見が合わなかったりしたこともあるのですが、一個人として、社会人として、自分が所属する以外の場所で繋がる関係は、私にとってものすごく財産になりました。実は、一度運営母体がサポートをやめるという話になったのですが、どうしてもこの団体を残しておきたかった。なので、私個人として事務局を引き継ぐことにしたんです。家に事務局を持ってくる形で(笑)」

どうしたらNPOに若者が集まるのか?

NPOの主要メンバーは、年配の方が多いそうだ。学生の時は自由に時間を使えるためNPO活動に参加する若者も多い。しかし、そのほとんどが、社会人になると仕事に時間を割かなければならず、「卒業」の道を選ぶ。結局実際に主要メンバーとして活動を牽引するのは、定年退職を迎えた方になっていくのだという。もちろん、それは誇らしいことだ。しかし、次世代の後継者を育てなくてはならないこと踏まえると、なかなか難しい面もあった。

そんな中、馬場田さんが新しく始めたのがWEB上で活動記録の公開だった。「とにかく手探りだったんですけど、とりあえずやってみようと思って」と始めたそうだが、これをきかっけに県内のさまざまな大学から学生が集まり始めたという。また、若手メンバーだけでなく、企業からの協力も来るようになったそうだ。

その一例がAQUA SOCIAL FES!!だ。これは、トヨタのハイブリッドカーAQUAと全国の地方紙、地元NPOとが連携し、エコイベントを開催するプロジェクト。宮島では毎年2回、のべ300人ほどで海岸の清掃活動を行っている。これだけ大規模なイベントをNPOだけで行うことは、なかなか難しい。人的リソースや経済的コストという壁を超えるサポートとして企業のバックアップがあることは大きいと馬場田さんは言う。AQUA SOCIAL FES!!との協力をはじめ、現在では少しずつ企業との連携も増えてきたそうだ。

「私には夢があるんです。それは、自然と正しいコミュニケーションを取れる社会を作ること。確かに牙を向くこともありますが、それも含めて私たちはこの母なる自然がないと生きていけない。そのためには、たとえ仕事におわれていても、積極的に自然との距離を縮めていかなくちゃいけない。たとえば、会社を休んで子ども会や地域活動に参加したり、オフィス近辺でエコイベントを主催したり。それを企業が応援してくれることも大事です」

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5月30日(土)に開催されたAQUA SOCIAL FES!!では177.2kg(発泡スチロール:13.7kg/プラスチック:131.7kg/ペットボトル:3.2kg/ビン・カン:6.6kg/その他:22kg)のごみが集まった。

「漂着ごみも件もそうですが、消費者として当事者意識をもつことが何よりも大事だと思います。他人ごとにしていちゃいけない。業者の方だけじゃなくて私たちにも責任がある。こういう意識が積み重なれば大きな資本が動くかもしれない。良い循環が、海にも、産業にも生まれるようにと思っています」

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馬場田さんの取材をしている最中に、AQUA SOCIAL FES!!の参加者の女の子に話しかけてみた。すると「私は、広島の海が大好きで、もっときれいになるといいなって思ってる」と応えてくれた。彼女は、小学2年生だという。厳島神社の美しさを引き立てるのも、名産品のカキを育むのも、そして子どもたちの遊びの場、教育の場となるのも母なる広島湾なのだ。

広島のAQUA SOCIAL FES!!は、7月26日(日)にも開催されます。内容は、ホタルの飛翔する環境に戻すための河川清掃。詳細は公式ホームページ(http://aquafes.jp/projects/184/)を御覧ください。

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