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ギリシャ金融危機でEUが陥る「4つの重大な危機」

2015年07月06日 21時13分 JST
ANDREAS SOLARO via Getty Images
A homeless man sits on the sidewalk in front of a shop in downtown Athens on July 6 2015. Greeks declared in a referendum that they 'deserve better' and 'cannot accept a non-viable solution' to the country's debt crisis, new Finance Minister Euclid Tsakalotos said upon taking office on Monday. AFP PHOTO / ANDREAS SOLARO (Photo credit should read ANDREAS SOLARO/AFP/Getty Images)

[ブリュッセル 5日 ロイター] - 欧州大陸の周縁で起きている4つの大きな危機が現在、欧州連合(EU)を飲み込む恐れがある。戦後に始まった「1つの欧州」を目指すプロジェクトは、数十年前に後戻りするかもしれない。

EUの結束と国際的な立場は、ギリシャの債務危機、ウクライナ紛争でのロシアの役割、英国のEUとの関係見直し、地中海の移民問題によって危機にさらされている。

これら4つの問題の1つでも適切に対応できなければ、他の問題の悪化を招き、EUが直面する危機は増幅されることになるだろう。

ギリシャのデフォルト(債務不履行)と「グレグジット(ギリシャのユーロ圏離脱)」は、EUが「史上最も統一された」共同体であるという長年のイメージを揺るがしかねない喫緊の課題だ。

ブリュッセルのシンクタンク、欧州政策センター(EPC)のファビアン・ズレーグ氏とジャニス・エマヌイリディス氏は「グレグジットの長期的な結果は、欧州のプロジェクト全体に影響を及ぼす。それは前例となり、EUの存在意義を一段と損なうことになるだろう」と指摘した。

ギリシャはユーロ圏域内総生産とEUの人口のそれぞれ2%を占めるにすぎないが、ユーロ圏諸国は同国にこれまで約2000億ユーロを支援しており、破綻すればEUにとって大打撃となる。

ギリシャの運命はいまなお不明だが、すでに明らかなのは、ユーロ創設者たちがユーロの結束は壊れないと宣言したとき、彼らはだまされていたということだ。

そして今、他のユーロ加盟国はギリシャを締め出し、結束を強めるべく、通貨統合における設計上の初期欠陥の一部を修正するなど直ちに措置を講じようとするかもしれない。

だが、次にリセッション(景気後退)もしくはソブリン債利回りの急上昇が起きれば、ユーロ圏は震撼し、市場はギリシャという前例を思い出すことになるだろう。

<不安定化>

ギリシャの経済崩壊は、それによってもたらされる困難と欧州の納税者が失った大金はさておき、欧州の他の3つの危機すべてを悪化させ、不安定なバルカン半島諸国をさらに不安定化させる恐れがある。

シリア内戦、イスラエル・パレスチナ問題、キプロスの南北分断などにより、地中海東部ではすでに緊張が高まっているなか、ギリシャはロシアに助けを求めるかもしれない。それと引き換えに、EUの対ロ制裁の延長にギリシャは反対、もしくは海軍施設の利用を許可する可能性すらある。

ギリシャは、ドイツやスウェーデンへと向かう最も安全なルートを求めてシリアやイラクから自国に流入する難民にすでに苦慮している。

「ボートピープル」の問題をめぐってはEU内で対立が起きている。イタリアなど難民流入の矢面に立つ他の国々は、資金提供や難民割り当てを拒否して連帯感が欠如しているとして、北部や東部のEU加盟諸国を非難。英国は難民1人の受け入れも拒否している。

5年に及ぶ協議の末にギリシャ危機の解決に失敗することは、ロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席ら権力拡大を狙う指導者の目にEUは弱く、分裂しているように映るだろう。

当局者らは、ユーロ圏の危機が一部の政策決定において再国有化をもたらし、ルールに基づいた超国家的ガバナンスという欧州モデルの「ソフトパワー」を弱体化させることを認識している。

しかしこの先、さらに悪い事態が待ち受けている。

英国のEU離脱をめぐる問題は、域内で2番目に大きな経済国であり、主要な金融センターを有する英国をEUが失うリスクを高めている。

複数の英世論調査でEU残留派が10ポイント程度リードしているにもかかわらず、EU当局者たちは不安を拭い切れないでいる。5月の英総選挙の結果は事前の世論調査とは見事に異なり、与党保守党が単独過半数で勝利を収めたものの、キャメロン首相は保守党内のEU懐疑派に足元をすくわれる恐れもある。

ユーロ圏の内側であろうと外側であろうと、社会不安と政治的大混乱を伴う長期的なギリシャ経済の破綻は、英国経済が「死に体」だと主張する人たちを勢いづかせることになるかもしれない。

ロシアが冷戦時代の敵意をいまだ英国に向け続け、英国を米国の最も忠実な同盟国とみなしていることを考えると、プーチン大統領は英国のEU離脱の可能性を歓迎するだろう。

そうなれば、ウクライナとジョージアに対するロシアの行動に対して強固な対応を求めるEU内の勢力を弱らせることになる。また、プーチン大統領はウクライナ問題で、ドイツのメルケル首相と交渉するうえで有利な立場に立つこともできるだろう。

欧州改革センターのレム・コルテベーク氏は、EUの連動する4つの危機を、新約聖書のヨハネの黙示録に出てくる4騎士に例え、「EUの指導者たちはこれら4人の騎士を手なずけるのに苦労するだろう。答えが見いだせなければ、騎士たちはEU内で混沌と不安と非難の応酬を駆り立て続けるだろう」と指摘している。

(Paul Taylor記者、翻訳:伊藤典子、編集:宮井伸明)

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