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弁護士夫夫(ふうふ)の南和行さんに聞く 「同性婚」から考える多様な家族のあり方

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ゲイカップルであることをカミングアウトして結婚式を挙げた南和行さんと吉田昌史さん | 南和行
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大阪市にオフィスを構える「なんもり法律事務所」。そのサイトを開くと、トップページには、「離婚・男女問題・無国籍」「遺言・相続」といった取り扱い業務とともに、「ゲイ・同性愛・LGBTの問題」が並ぶ。

この法律事務所の弁護士、南和行さんと吉田昌史さんは、同性愛者であることを明らかにして、2011年に結婚式を挙げた「弁護士夫夫(ふうふ)」だ。そんな当事者として感じてきたこと、弁護士として関わってきた家族や婚姻の制度について、南さんが書いた「同性婚−−私たち弁護士夫夫です」(祥伝社新書)が7月、出版された。

日本ではまだ同性婚が合法化していないが、東京都渋谷区が同性カップルに結婚と同等の関係と認めて証明書を発行する「同性パートナシップ条例」を4月から施行。アメリカでも6月、同性婚を合憲とする判断が出されるなど、同性カップルに対する差別を撤廃しようとする動きが目立つようになっている。同性婚をどう考えたらよいのか、当事者であり、法律の専門家でもある南さんに聞いた。

■「LGBT」についての知識を知る機会がない家族

南さんが吉田さんと出会ったのは、2000年夏。2人は京都大学の大学院生だった。南さんが管理人をしていたゲイの京大生の交流を目的とした掲示板があり、そのオフ会で知り合い、数カ月後から交際をスタートした。南さんは社会人経験を経た後、吉田さんとともに弁護士を目指すことになる。

「同性婚」では、司法試験の合格後に同居を始めたことや、周囲にカップルであることをカミングアウトして結婚式を挙げたこと、2013年には2人で独立して弁護士事務所を開いたことなどがつづられる。男女のカップルだったら順風満帆だったかもしれない2人だが、ゲイであることによって、2人にはさまざまな苦難が訪れた。

例えば、家族の理解。南さんは自身の母親にカミングアウトしていたが、吉田さんとの交際を受け入れてもらえるまでには、何年もの時間がかかったという。それから、当事者にとっては意外な「誤解」もあった。ある時、南さんの母親が2人に言ったことがある。

「同性愛と性同一性障害って別だったのね。私、いつかあなたたちのどちらかが女性になる手術をすると思っていたわ」

南さんが母親にカミングアウトしてから10年以上も経っていた。南さんが「違うって知らなかったの?」と訊ねると、母親は「どこでも教わらなかったし、テレビでは同じように言っているでしょう」と答えた。学校をはじめ、公的な情報は異性愛のことが中心であり、一方でテレビのバラエティ番組では、トランスジェンダーと男性同性愛者の人たちが、明確な区別なく「オネエタレント」と呼ばれ人気を博している。

性的マイノリティーの人たちを表す「LGBT」(レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)という言葉があるが、関心のない人にとってその区別は難しく、南さんの母親が「教わらなかった」というのも無理はないのだ。「母が生活の中で同性愛とは何か、あるいはトランスジェンダーとは何か、それを知る機会があれば、私たち親子の感情的なぶつかり合いはもっと穏やかなものだったと思う」と、南さんは「同性婚」の中で述べている。

■「婚約者です」と名乗れない同性カップルの生きづらさ

南さんは、京大大学院で木材工学を学んだ後、住宅建材メーカーに勤めていたことがある。その頃を南さんはこう振り返る。

「合コンいかへんか? 彼女いるんか? と聞かれるし、井川遥がかわいいと言わざるをえない雰囲気がありました。会社が嫌ではないけれども、彼氏がいるとは言えず、本当の自分との乖離がどんどんできて、しんどいと感じていました。でも、もしもその時、自分はゲイですとカミングアウトしたとしても、上司に呼ばれて『そんなことを言わないように』で終わりだったと思います」

また、司法試験に合格して弁護士になった吉田さんが、体調を崩してしまったことがあった。吉田さんが出勤できず、連絡すら難しい時や、病院に付き添って医師の診察に立ち会う時にも、南さんは恋人を支えたいという思いがありながら、できることは限られていた。吉田さんとこれが女性だったら、「彼の婚約者です」と名乗ることで、さまざまな場面で手助けが可能だったかもしれない。

同性婚が社会的、法的に認められていないために、異性カップルにとっては当たり前のことすら、同性カップルでは難しいことが少なくない。南さんたちの経験からは、当事者の人の「生きづらさ」が伝わってくる。

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「同性婚」を出版した南さんとそのパートナーである吉田さん(左から)。吉田さんはゲラのチェックをして、南さんを支えた。

■弁護士事務所のサイトに「ゲイのカップル」を明記した理由

南さんと吉田さんは2013年、弁護士事務所を開設する。親しい人たちには2011年に結婚式を挙げることでカミングアウトはしていたが、弁護士事務所のサイトでも、ゲイのカップルであることを明記した。

「弁護士に相談するということは、ハードルが高いし、さらに実はゲイである、レズビアンであるということを言えなくて、解決できないことがたくさんあります」と南さん。「例えば、同性の恋人同士でお金を貸したけれども、返してもらえない。同性カップルと言えないため、『友達にどうしてお金を貸したんだ?』と言われてしまう」

そういう人たちにとって、少しでも相談のハードルが下がるように心がけているという。さらに、アメリカ総領事として関西に赴任していたパトリック・リネハンさんの言葉も南さんの心に響いた。リネハンさんはゲイであることをカミングアウトし、同性結婚もしている。

「パトリック・リネハンさんを友人として、とても尊敬しているのですが、彼は『まずは、見えるようにしていかないといけない』といつも言っていました。日本に総領事として赴任して、経済誌や経済人にゲイであることを公言していました。無理にバラすのではなく、言える人は言った方が、周囲の人たちも気づくようになる。だったら、弁護士という立場がせっかくあるのだから、僕たちも見えるようにしていきたいと思いました」

一方で、南さんの中には抵抗感もあったという。

「僕たちが幸せロールモデルというふうに伝わってしまっては、かえって傷つく人がいると思いました。あんたら2人は勉強ができて、たまたまいい人にめぐりあえたからいいけど、という形で伝わるのは良くないと思っていた。でも、ゲイのカップルであることを明記したり、この本を書いたりしたのは、『弁護士だからできたんだよね』という裏には、特別な特技や環境がないとできないという社会がまだあるということ。自分がゲイであることを、『左利きなんです』ぐらいな感じで言えればいいのに」

そのために、南さんたちは「見えるようにしていくこと」を大事にしている。

■家制度の名残りがある現在の婚姻制度

私たちの国では、同性同士の結婚は法的に整備されていない。南さんは弁護士の視点から、「同性婚」の中で、まず「結婚・家族とはなにか」をわかりやすく紐解いている。現在の婚姻制度は、日本国憲法24条がうたう個人の尊重と男女の平等に基づいてはいるものの、「下敷きになっている戸籍制度が戦前から引き継がれていることなどもあり、嫡出子と非嫡出子の相続分の差別など、新民法の中にも家制度の名残がいくつか残された」と南さんは指摘する。

その一つが、民法722条。生まれた子どもの父親を定めるルールが規定されているが、「子どもが生まれる枠組み」が家族のモデルとされている。南さんは「同性カップルを含む多種多様な家族を法律上保護するためには、この民法722条を乗り越えることが重要」と考えている。

南さんが問題点として挙げるのは、子どもの「無戸籍」だ。夫のDVから逃げ、別居している女性が離婚の手続きもできないまま別の男性との間に子どもを産んだ場合、戸籍上は夫が父親になってしまう。しかし、出生届を出せば、夫に居場所が知られてしまう。それを恐れて、子どもの戸籍が作れない状態が生まれてしまう。弁護士として「無国籍」の問題に深く関わってきた立場から、南さんは「法律上の父親が誰であるかを、結婚制度を中心とする民法722条のみを頼りに定める時代はそろそろ終わりに近づいているのではないか」とする。

こうした家族の多様性を認めることは、同性カップルの婚姻を認めることを含め、誰もがが自分らしく生きられるのかもしれない。「同性婚の議論をすることで、多様な家族があるということが『当たり前』であると、多くの人が気づくことができたらと願う」と南さんは訴えている。

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2011年に結婚式を挙げた南さんと吉田さん(左から)

■憲法24条は本当に同性婚を認めていないのか?

では、その同性婚を語る上で、論点になるのが憲法24条1項の存在だ。「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」と規定している。同性婚に慎重あるいは、反対意見でよくみられるのは、この「両性」が「男性と女性という両性」という意味であるから、憲法が同性婚を認めていないというものだ。

しかし、南さんは「憲法24条1項が、封建的な家制度のもとで女性の自由や人権が奪われていたという実情を背景に、婚姻における女性の自由な意思決定と家庭内における男女の平等を希求して制定されたにすぎない」と分析する。男女の異性婚が念頭に置かれているからといって、同性婚が禁止されていて、同性婚を法律で認めることが憲法に違反するとは限らないのだ。

さらに、憲法13条にも南さんは着目する。「すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政で、最大の尊重を必要とする」というものである。パートナーとの関係を法律上の婚姻関係として承認されたいという思いは、個人の幸福と結びつく。つまり、「同性婚により同性カップルと家族の権利を保護することは憲法13条の趣旨に適う」と南さんは説いている。

■「同性婚」をきっかけに、結婚・家族とは何かを見つめなおす

こうして考えると、私たちが当たり前ととらえている異性同士の結婚とはなにか、家族とはなにかを見つめなおす時期にきているのかもしれない。同性カップルの婚姻を考えることは、すべての個人や多様な家族のあり方につながっていく問題だと、「同性婚」は教えてくれる。

「この本は、中高年のおっちゃんたちに読んでもらいたいです。会社行って、子どもがそろそろ高校生で受験だな、みたいな善良なおっちゃん。読んだ後には、当たり前と思っていた自分の家族のことでも、奥さんががんばってくれているから、自分は家に帰ってほっとできるんだなと思える。そうしたら、きっと家族の仲ももっとよくなるし、お子さんが自分が想像もつかないような人を結婚相手に連れてきても、ああそうか、と思えるかもしれない」

海外では同性婚の制度化が進む中、日本ではいまだ議論の端緒についたばかりだ。それでも、前進はしている。

「民間の活動ではレインボーパレードなど、たくさんありますが、あくまで民間の話でした。ところが、渋谷区という地方自治体が、パートナーシップを条例化したことは大きいと思います。国会でも短い期間に、同性婚について何回も質問があったり、与党の幹事長や総理大臣が同性婚についてコメントする。いよいよ、うちにはそんな人はいませんからとはいえなくなりますから、良かったなあと思います」

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