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「政治家も経営者も、パパ休暇が当たり前」ノルウェーの西野麻衣子さんが、出産後も国立バレエ団で活躍できる理由

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“ノルウェーで最も有名な日本人”と言われる、美しい日本女性がいる。ノルウェー国立バレエ団でプリンシパル(首席)ダンサーをつとめる西野麻衣子さんだ。

15歳で名門英国ロイヤル・バレエスクールへ留学。19歳でノルウェー国立バレエ団に入団し、25歳でダンサーの最高位であるプリンシパルに抜擢。私生活では、オペラハウスの芸術監督ニコライ氏と結婚。そんな西野さんの4年間を追ったドキュメンタリー映画『Maiko ふたたびの白鳥』が2月20日に公開された。


『Maiko ふたたびの白鳥』より

映画は、プリンシパルである西野さんの輝きの秘密を、舞台裏に密着して解き明かす物語であり、同時に、妊娠・出産を経て、もう一度トップを目指す一人の女性のプライベートな物語である。ノルウェーは男女平等が浸透しており、映画で描かれる西野さんのキャリアと家庭の両立に対するパートナーや周囲の理解や、ごく自然なサポートには目を見張るものがある。

「私は日本女性だけれど、ノルウェーで母親になって、すごく幸せです」と語る西野さんに、ノルウェーで女性が活躍できる理由をスカイプで聞いた。

■ノルウェーでは考えられない「日本の男性は子供の成長をぜんぜん知らない」

――映画を撮影することになったきっかけを教えてください。

私の記事を新聞で見たオセ監督からのアプローチで、2年契約で撮影を始めました。最初は私のダンサーとしてのキャリアを中心にした映画の予定でしたが2年目に妊娠したので、撮影が4年になり、内容も、キャリアウーマンが母になって、またキャリアウーマンに戻る、というストーリーに変わったんです。


『Maiko ふたたびの白鳥』より

――西野さんのダンサーとしての挑戦や、公演の舞台裏といったキャリアの場面と、妊娠・出産・育児、ご主人との関係といったプライベートな場面が両方描かれていて、特に、西野さんのキャリアを自然にサポートしているご主人の姿が印象的でした。

両親がこちらに遊びに来てびっくりするのが、私が頼まなくても、主人のニコライが、すぐ動いて家事をしてくれることです。お客さんが来たら、料理は好きなので私が作るんですけれど、何も言わなくてもさささっと片付けをしてくれるとか、私が仕事で疲れているときは、僕が(息子の)アイリフを寝かすよ、とか。なんていうのかな、僕が「やってあげるよ」というのではなくて、自然体なんです。

ノルウェーは、家庭を中心に考えた仕事のやりくりができる社会なので、共働きなら家事も育児も男女両方がするのが当たり前だし、夕食は毎日、家族揃って食べるのが普通です。だから、映画を見て日本に興味を持ったノルウェーの女性たちが、日本のことを調べると、日本人の働き方に驚くんです。「日本人の男性って、子供の成長をぜんぜん知らないのね。朝出て行って、夜遅く帰ってきて、いったいいつ子供に会うの?」と。


『Maiko ふたたびの白鳥』より

■男性が家事を「やってあげている」、という考え方は、一切ありません。

――日本は長時間労働が常態化していて、男性も女性も、仕事と子育ての両立がとても困難です。

だから、いま日本では子供が減っているんだと思います。問題だ、問題だ、と言っているのに、国のシステムが変わらない。ノルウェーも昔は日本のような男女の役割分担があったそうですが、両親の世代、主人が生まれたくらいから、変わっていったそうです。

ノルウェーは国としての歴史が日本より浅いせいか、モダン化というか、いろいろな国や時代に影響されて変わっていくスピードが早いんですよね。16年住んでいますが、その間にも大きく変わりました。ノルウェーの物価は日本の3倍くらいなので、良い生活をしたいなら、男女共に働かないといけなくて、それなら男性も女性も助け合って、というのがどんどん当たり前になっていきました。

――日本では、たとえ共働きでも、家事や育児の中心は女性で、男性がするのは特別なこと、という意識が、まだまだ社会にあるようです。

僕は「やってあげている」という意識ですよね。女性も働いて、毎月お給料を家に持って帰ってきているなら、男性が助けて当たり前じゃないですか。それは普通のことなのに。ノルウェーでは、男性が家事や育児を「やってあげている」という考え方は一切ないです。

■男性も必ず3カ月の育児休暇を取得。「ノルウェーで母親になって、すごく幸せ」

――映画の中で、バレエ団の仲間に妊娠を告げたシーンが印象的でした。

妊娠を告げたら、仕事仲間はみんな喜んでくれました。けれど日本の友人は妊娠したとき、どうやって会社に言おうか、ものすごく悩んでいました。私が「なんで!?」と聞いたら、嫌な目で見られるから、言いにくいと。私は日本女性だけれど、ノルウェーで母親になって、すごく幸せです。


『Maiko ふたたびの白鳥』より

――国のサポートで特に印象的なことはなんですか?

パパ休暇(男性の育児休暇)ですね! 夫婦で合計10カ月間、有給の育児休暇をもらえます。男性はそのうちの3カ月を取ることが決められています。これは絶対で、企業の経営者でも、政治家でも、取るのが当たり前なんです。映画にも出てきますが、私がすぐ復帰を決めたので、ニコライが3カ月+5ヶ月で、計8ヶ月間の育児休暇を取って、サポートしてくれました。

――男女平等が実現して、女性が活躍している社会の良さはなんでしょう?

やっぱり女性がいると華やかになると思います(笑)。私の母もキャリアウーマンだったので、母のスーツ姿が、すごく大好きだったんですよね。雰囲気だけじゃなくて考え方も、男性のなかに女性がいると、少しまるく考えられるかなと。

キャリアウーマンの母親が増えれば、職場の理解者も増えます。男性ばかりの仕事場と、女性が何人もいる仕事場では、雰囲気がぜんぜん違うと思います。男性もほがらかになると思いますよ。

■日本はもっともっと女性が活躍する社会を作るべき。国が変わっていかないと!

――世界各国を知る西野さんが、いまの日本を見て思うことは?

ヨーロッパもアジアも見てきて、日本が大好きだし、自分の国として誇りも持っています。でも、ノルウェーで自分が母親になって、キャリアウーマンとして仕事と家庭を両立していて思うのは、日本は女性が輝ける場所をもっと作らないといけないし、作る必要があるということです。いま、日本で子供が減ってきて、いろいろな問題が目の前にある。それは本当に、女性の場所がないからこうなってきている、と思うから。

日本には、もっともっと、女性が笑顔で仕事できる場所を作っていただきたい! いますぐに変えられるわけではないけれど、日本のこれからを思うと、東京オリンピック・パラリンピックもあることだし、日本はもっとインターナショナルな考え方をしていかないと、世界からどんどんどんどん遅れてしまうと思います。

■キャリアと家庭の両立は、女性だけの夢じゃない。

――西野さんが強い意志を持って常に上を目指す姿勢に、日本でもはげまされる女性がたくさんいると思います。

それはうれしいですね。まだまだ日本は、女性が仕事をしにくいというか、働く女性が安心して妊娠できない社会ですよね。別に家庭に入る、専業主婦になるということは悪くはないんですよ。ただ、この映画を通して「子供ができたら私のキャリアはここで終わりなのでは?」と心配している日本の働く女性たちに夢を伝えられたら、と思います。

映画を撮ったオセ監督も女性で、母になってキャリアウーマンに戻った私のドキュメンタリーを撮ったことで、すごく自信をもらったと言って、この1月に出産したんです。私のことを見ているから、自分も頑張れると言っていました。

キャリアと家庭の両立は、女性だけの夢ではなくて、パートナーと一緒に描く夢です。私も自分だけではできなかった。母になって、またトップのプリンシパルに復帰できたのは、主人のニコライがいて、主人の両親がたくさんサポートしてくれたからこそ。両立には、友人や仲間、社会などまわりの方のサポートと理解が必要なんです。

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西野麻衣子(にしの・まいこ)
大阪生まれ。身長172cm。6歳よりバレエを始め、1996年、15歳で英国ロイヤル・バレエスクールへ留学。2005年、25歳で同バレエ団東洋人初のプリンシパルに抜擢。同年「ノルウェー評論文化賞」を受章。同バレエ団の永久契約ダンサーとして活躍中。ノルウェーの首都オスロで、夫であるオペラハウスの芸術監督ニコライ氏、長男アイリフとの3人暮らし。

(聞き手 波多野公美)

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