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シリア・アレッポ停戦 「これで外に出られる」という安堵と、支援物資が届かない絶望と

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ロシア軍が9月11日にアレッポ東部の住宅地をクラスター爆弾で攻撃したと報じられた後には、建物のがれきが見られた。

イスタンブール――何カ月間も、5歳のハラと8歳のオウラは、反乱軍支配のアレッポで家の壁の中に閉じ込められていた。一家が外に出ようとしなかったのは、シリア政府軍とロシア軍が民間人・戦闘員の区別なく落とす強力な爆弾を恐れてのことだ。

だが今週、家族たちがハラとオウラを7月以来はじめて外に連れ出せたのは、ロシアとアメリカで合意した停戦のおかげだ。この少女たちが太陽の下で遊んだとき、頭上の空に「たる爆弾」や恐ろしい軍用機の姿はなかった。イスラム教の祝日「イード・アル・アドハー」(犠牲祭)の奇蹟だった。

「今、この子たちは幸せです」と、少女らの伯父のゲヤートがアレッポからの電話で語ったとき、その後ろでは子どもたちがキャッキャとはしゃぎ回っていた。ゲヤートでさえ笑みをこらえることができなかった。「停戦の前は激しい爆撃でした。これで私たちは外に出られます」

不安定な論争の多い休戦により、合意の影響が及ぶ地域ではほぼ戦闘が停止している。これには、過激派組織IS(イスラム国)とシリア征服戦線(旧「ヌスラ前線」)を除く、全ての武装勢力が含まれる。戦闘が停止し、アレッポの一部では、生活の息吹らしきものが垣間見えている。


【参考記事】
私の友人で、アレッポ随一の小児科医が空爆で殺された


「しかし、状況は依然として困難だ」と、ゲヤートは付け加えた。

空爆と砲撃は、ここ数日間はおおよそ鎮まったかもしれない。多くのシリア人が歓迎する休息だ。しかし、アレッポ市東部は依然として政府の厳しい包囲下にある。休戦の条件である支援物資の輸送はまだ不完全だ。

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シリア・アレッポでのイード・アル=アドハー中の市場、9月12日。イード・アル=アドハーは、イスラム暦で最も重要な2つの休日のうちの1つで、祈りと動物を儀式でいけにえにすることで祝う。

多くの食品店では、赤ちゃん用の粉ミルクや小麦などの必需品の在庫が不足している。病院は、救命のための医薬品や器具の備えができていない。また、ガソリン価格が高騰し、供給量も少なく、救急車を運行できない。

国連の人道問題担当国連事務次長兼緊急援助調整官ステファン・オブライエンは国連安保理で証言した時、アレッポのことを「恐怖の極み」と表現している。

かつてシリア経済の中心都市だったが、今やシリア分裂の象徴となったアレッポ。アメリカの小政党「リバタリアン党」の大統領候補ゲイリー・ジョンソンがテレビ出演した時に、「アレッポって何だ?」と聞いてから、アメリカでも最近全国的なトップニュースになった。

国連の推計によると、実質的に外の世界から切り離されているアレッポの反政府勢力支配地域には27万5000人の住民がいる。彼らは生活必需品の援助を受けられない。西部の政府支配地域にはおよそ150万人がいるが、彼らは援助を妨害されている。

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停戦が発効する前日の9月11日、反政府勢力が支配するアレッポの空爆で破壊された建物の瓦礫のなか、赤ちゃんを抱きかかえるシリアの男性。

9月14日の夜の時点で政権側に包囲されたアレッポの人々は、支援物資を運ぶトラックの到着をいまだ待っている状態だ。ロイターによると、食料や小麦粉を積んでいるとみられるそれぞれ20台のトラックを率いた2つの配給部隊は、トルコとシリアの間の無人地帯で立ち往生しているという。

「あるグループはこの状況を政治的に利用しようと企んでいる。しかし今はそんなことを考えるべきではない」と国連人道問題調整事務所のスポークスマン、デビッド・スワンソン氏はロイターに語った。

「最も深刻な問題は空爆ではなく、政府軍の包囲で周りを閉鎖されていることなんです」と、シリア人活動家でアレッポ・メディア・センターのムムターズ・アブ・モハメド氏は語った。「我々は、生活必需品を手に入れることすらできません」

シリア政府は、正式に承認されないトルコからの援助は封鎖すると警告している。


【参考記事】
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アレッポの反体制勢力、そしてその支配下にある民間人向けのライフライン「カステロ・ロード」の管理維持をめぐっても対立している。

アレッポの住民たちはハフポストUS版に、「約束された支援が最終的に履行されたとしても、どのような物資が来るのか分からないので高望みしたくない」と語った。シリア政府は、過去に援助輸送隊の救命医療用品を略奪している

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9月13日、トルコのハタイ県にあるジルベゴズ国境ゲート。アレッポへの人道的支援物資を運ぶ世界食料計画の輸送隊は動かないままだ。

「支援は政権が支配する地区を通るから、全てを奪われるのではないかと心配しています」と、アレッポ東部にある国際支援機関で働くスリマン・アル・ハラビ(26)さんは語った。「街は完全に包囲されています」

もう一人のアレッポ住民は、物資は通常「まず(反政府勢力の)戦闘グループに分配される」ので、輸送集団の通行が許可されたとしても、一般市民は適切な援助を得られないのではないかと懸念している。

しかし、支援物資が強奪されても、アレッポ住民はその次の援助が到着するのを待つしかない。もしくは、反政府勢力の支配地域が解放されるのを待つしかないのだ。

都市の小さな緑地でナスやその他野菜の栽培を続ける人もいるだろう。他の人は、一緒にありったけの金を拾い集めて、法外な値段を要求する商売人から物資を買うことになる。これまで40万人の命が奪われたとみられる内戦を生き延びるためには、あらゆる手を尽くすしかない。

当てにならない休戦協定に悲観的なアレッポ住民は、いずれ間違いなく再開される戦闘が起きる前に、援助が届くことを願うしかないと話す。

「子どもたちは市場に行って遊んでいる」と、アル・ハラビーは言った。「しかし今でも、休戦協定が長くは続かないだろう、完全に瓦解するだろうという、強迫観念と恐怖にとりつかれているんだ」

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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