トランプは負けた。アメリカ民主主義も負けた。

ドナルド・トランプが負けた。しかし、私たちも同じだ。
Bobblehead dolls of US Republican presidential nominee Donald Trump and Democratic presidential nominee Hillary Clinton are seen for sale in a gift shop at Philadelphia International Airport, October 20, 2016 in Philadelphia, Pennsylvania. / AFP / Robyn Beck (Photo credit should read ROBYN BECK/AFP/Getty Images)
Bobblehead dolls of US Republican presidential nominee Donald Trump and Democratic presidential nominee Hillary Clinton are seen for sale in a gift shop at Philadelphia International Airport, October 20, 2016 in Philadelphia, Pennsylvania. / AFP / Robyn Beck (Photo credit should read ROBYN BECK/AFP/Getty Images)
ROBYN BECK via Getty Images

ドナルド・トランプが負けた。しかし、私たちも同じだ。

辛辣だが面白味のない大統領選討論会が90分間続いたが、ドナルド・トランプとヒラリー・クリントンは、お互いに『ゲーム・オブ・スローンズ』なみに敵意をむき出しにした。討論会を見て楽しんだのは、おそらくクレムリンだけだろう。トランプは大統領選に勝てないかもしれないと思い、大統領など価値のない職業だと決めつけているかのようだった。

トランプは、クリントンを嘘つきと呼び、「なんて嫌な女」と発言し、「大統領選に出馬すべきでなかった」と語った。彼女のことを詐欺師呼ばわりしている。

クリントンは、トランプを嘘つき、セクハラ男、ロシア大統領ウラジーミル・プーチンの「操り人形」、そして「近代、大統領選に出馬した最も危険な人物」と呼んだ。

この討論会で大きな衝撃を与えたのは、人を苦々しく思わせ、誤りを認めないトランプが、自分が敗北した場合、選挙結果を受け入れるかどうかについて明言を避けたことだ。このまま行けば、絶対とは言わないまでも、敗北する可能性がある。

「その時になって考える」と、彼はこともなげに語った。まるで石壁の出荷予定でも話し合っているかのようだ。

「気をもませておく」。

クリントンはそれに「ぞっとする」と反応した。「わめいているようでは、大統領に向かない」

トランプが敗北を認めずにカオスの種をまくという、前例のない脅しをしたことに凍りついた。これは、今まで通り、大衆に向けた煽動だし、未来の政府の合法性に真っ向から挑むものだ。

下品で知性がなく、情報もない一連の討論がラスベガスで終了したが、この都市は討論とよく似合っている。ラスベガスはアメリカのみすぼらしく、安っぽい側面を美化した街だ。

クリントンはごく親しい友人に、選挙に勝利するかもしれないが、これは勝ちたかった選挙ではなく、勝ったとしても望んだ形ではないと、内密に話したという。

彼女は大勝するかもしれない。しかし、アメリカがひとつになることはないだろう。民主党は議席を増やすかもしれないが、ワシントンをとりまとめ、仕事をすることになならい。

政府の信頼は、揺らいでいる。選挙の過程が刷新の儀式となっているからだ。

また、10月19日夜の討論会では、選挙戦に影響を与えたものは何もなかった。

トランプとFoxニュースの司会者でモデレーターのクリス・ウォーレスは共に、クリントンの牙城を崩せず、劇的な、形勢を変えるような過ちを引き出し、瞬時に崩壊してしまうような場面を演出できなかった。

クリントンがメール問題でプレッシャーを感じていたのは確かだが、メール問題が明るみに出たのは、プーチンとの個人的な関係があったからだと反撃した。

トランプはその餌につられ、何度もプーチンを称賛した。プーチンは地球上で最も資金力と権力のあるテロ活動のスポンサーだ。

共和党大統領候補のドナルド・トランプ。選挙結果を受け入れないかもしれないと示唆した。

トランプが偉大な政治家になる場面もなかった。プーチンを称賛しただけでは物足りず、シリア大統領のバッシャール・アサドを「悪い奴」だが、おそらくシリア地域で最もまともな人物と称えた。

税金、移民、経済、その他の問題については、以前の繰り返しで、双方ともジョークや批判を織り交ぜ交戦したが、どれもたいして変わらず、国民にとって目新しいものはなかった。

クリントン氏は、女性の容認と尊敬、また、すべての宗教・人種を擁護し、好感を得た。

クリントンがそうしたことを擁護したのは少なからず政治的にみえる。誰もがこの意見に賛成するというわけではないだろうが、この選挙戦でトランプに泥を塗るところまで追いつめたのは事実だ。

しかし、クリントンはその厳格な言動により、希望とビジョンを育むことができなくなった。彼女はいら立ちを感じているようで、他の刺激的なテーマに言及するチャンス、というか、感情のエネルギーを持っていなかった。

クリントンは、討論中ずっと優位であったかのようだった。勝つことに積極的だったが、それは彼女が肯定されたというよりも、トランプが否定されただけだ。

一方、トランプはできるだけあらゆるシステムを批判しようとやっきになっているようだった。実際、ソ連がアメリカ政府の信頼を崩そうとしてできなかったことをしていた。

アメリカの情報機関は、ロシアの同盟国がクリントン氏の選挙戦を妨害していると疑惑の目を向けている。問題となった数々のメールは、アメリカが政治について目的を達成するためには手段を選ばなくなっている証拠であり、クリントンが権力を掌握するための独自の駆け引きだ。

だからといって、トランプが大統領にふさわしいわけでもない。アメリカの民主政治の信頼を取り戻すことにもならない。

政府の信頼は、最高の資産だ。プーチンはそれを標的にしている。彼は10月19日の夜、ラスベガスでその標的を打ち抜いた。

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ハフポストUS版編注:ドナルド・トランプ氏は世界に16億人いるイスラム教徒をアメリカから締め出すと繰り返し発言してきた嘘ばかりつき極度に外国人を嫌い人種差別主義者ミソジニスト(女性蔑視の人たち)、バーサー(オバマ大統領の出生地はアメリカではないと主張する人たち)として知られる人物である。

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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米大統領選 最後のテレビ討論会

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