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「一家の大黒柱の男性もツラかった」 日本人の働きかたは変わるのか

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JAPANESE BUSINESSMAN
Two businessmen eating ice cream(働く男性のイメージ写真) | DreamPictures via Getty Images
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パソコンの手を止めて、周りを見渡すと中年男性ばかり。そんな職場ばかりだとため息が出てしまう。どうすれば、日本の仕事場は、もっと多様な人が集まるようになるのか。ハフィントンポストは12月18日、元NHKクローズアップ現代キャスターの国谷裕子さんらをお招きして、子育てや介護などがしやすい「働く場所」について考えるイベントを開く。イベントを前に、共働きをしながら育児に取り組むジャーナリストの治部れんげさんに聞いてみた。もう、そろそろ日本も変わる時ですよね。

——最近は「ダイバーシティ(多様性)」という言葉も少しずつ浸透してきましたね。

ダイバーシティというと、「女性をもっと活用しよう」という議論になりがちですが、本来は男女に関係なく、誰もが働きやすい職場をつくるという意味の言葉です。男性にとっても切実なテーマだと思います。

私の知人に、ある大企業の部長職の方がいます。仕事に対して誠実に取り組む、まじめな方なのですが、一度連絡が取れなくなったことがありました。不思議に思っていたところ、お母様の介護で、病院や福祉施設を行ったり来たりの生活を送っていたことが分かったのです。

日本の男性は、これまで育児を女性に任せっぱなしにしてきた人が少なくありません。今後は、両親や親類の介護が必要になる人が増え、働きながら育児をする女性と同じような境遇になります。あるいは心や体の病気になって、仕事のペースを落とすことは、誰にとっても起こり得ることです。

働く時間を短くしたり、職場から離れた場所で仕事をする「リモートワーク」などの仕組みを整えたりしておく。社員一人ひとりの事情や価値観に合わせた職場づくりをすることで、貴重な戦力を失わずにすみます。ダイバーシティの推進は、女性だけのためではないことは明らかですよね。

——私はいま、こうやって治部さんにインタビューをしていますが、直接会わずにネットの動画中継サービス「Skype」を通してやっていますよね。

確かにそうですね(笑)

——はい。しかしながら、メディア業界では、「取材は直接会ってするものだ」という固定観念が根強いです。仕事のやり方は、時代やテクノロジーが新しくなっても、なかなか変わりません。

もちろん、人と人が直接会うことによってわかり合うことは貴重なことですし、会わないと知り得ない情報もあります。ただ、コアな価値観や話し合いのゴールが共有できていれば、会社のミーティングもSkypeで出来ますよね。直接会わないと話せないこと、直接会わなくても決められることなど仕事の棚卸しができるので、私もSkypeはよく使います。

working mother japan
育児中の女性のイメージ写真

—Skypeがあれば、育児中の女性や男性が、子どもにご飯を食べさせたあとにミーティングに参加できるし、生活に合った働きかたができると私は思います。便利なツールが増えて、「多様な働きかた」に取り組みやすくなっているはずなのですが。

ダイバーシティを推進している外資系企業を取材して痛感するのは、企業にとって、ダイバーシティは仕方なくやることでなく、重大な経営戦略ということですね。消費者の価値観が複雑になる中、仕事場が多様でないとお客さんの生活感覚からズレていき、そのうちそっぽを向かれてしまう。

というより、人口の半分を占める女性が職場に少ないのはシンプルに変ですよね。「女性の感性」を採り入れるためにダイバーシティを進めようという主張もありますが、「女性らしい感性」というのも女性を単純化し過ぎです(笑)。

日本の場合、特に高度成長期には、女性が家庭に入って男性が一人で家族を支える、というモデルには一定の合理性がありました。もちろんモデルに合わず苦しんだ人がいたのは確かですが、そういう働きかたで経済成長する道を歩んできました。ところが、産業が知識集約型になり、モノを作っても必ずしも売れない時代になってきたりして、かつてのモデルが通用しなくなりました。
 
私はかつて経済誌で記者をしていましたが、入社したばかりの1990年代後半は、編集会議で「女性の働きかた」をテーマとした特集記事の提案をしても、編集幹部に興味を持ってもらえませんでした。2005年ぐらいから認識が変わり、日本経済新聞でも1面に「女性の働きかた」に関する記事が出るようになった記憶があります。(労働力が減ることに直結する)人口減少が数字に表れ始めたからですね。

変わっていない部分が多いところは確かですが、少しずつであるとはいえ、日本企業も変わってきているのではないでしょうか。安倍晋三首相に対する賛否はありますが、少なくとも成長戦略の中に『女性活用』を打ち出したインパクトは大きいです。

——どうすれば、日本は変わりますか。

ダイバーシティや女性の社会進出を後押しするイベントにありがちなのですが、女性がズラーッと並んで、男性の責任を問い、彼らが肩身を狭くしてしまうという状況にしてはいけません。あの人が悪い、この人がかわいそうだ、というレベルの議論ではありません。

これまで「一家の大黒柱」として生きてきた男性側の気持ちや言い分も理解することも大切です。育児をしながら懸命に生きてきた女性と同じように、日本の男性も大きな精神的なプレッシャーの中で働いてきました。もし職を失ってしまったら家族が路頭に迷う、という状況の下、上司や会社側に逆らえず長時間労働に耐えてきました。仕事は「自己実現」と考える暇もなかったはず。お互いの事情を理解して、新しい時代の働きかたを一緒に考えるイベントに出来たらな、と思います。

■治部れんげさんもモデレーターとしてご登壇予定のイベントを12/18午後2時に開き、このテーマをより深掘りしたいと思います。元NHKクローズアップ現代の国谷裕子さんも講演し、「メディアの職場での多様性」についてお話されます。詳細は下記のリンクからご確認ください。ご参加を心よりお待ちしています:

■申し込み用イベントフォームは下記リンクからもご確認いただけます。
http://peatix.com/event/214739/

今回のインタビューの話し手:治部れんげ(ジャーナリスト)
jibusanジャーナリスト。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。1997年一橋大学法学部卒業後、日経BP社入社。経済誌の記者・編集者を務める。その間、2006~07年ミシガン大学客員研究員としてアメリカの共働き子育て先進事例を調査。14年からフリーに。国内外の共働き子育て事情について調査、執筆、講演などを行う。著書『稼ぐ妻・育てる夫―夫婦の戦略的役割交換』(勁草書房)、『ふたりの子育てルール』(PHP研究所)。息子(小学生)と娘(年中)の母親。家事・育児を夫婦で半々に分担しながら、核家族の共働き子育て9年目。考え方の基本は「大人に市場主義、子どもに社会主義」。東京都男女平等参画審議会委員、日本政府主催の「国際女性会議WAW!」アドバイザーズメンバー、一般財団法人女性労働協会評議員などを務める。Twitter:@rengejibu