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EU離脱、ついに手続き始まる――どうしてこうなった? そしてどうなる?

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REUTERS/Toby Melville | Toby Melville / Reuters
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イギリスのEU離脱(ブレグジット)は3月29日、ついに本格的な交渉段階に入る。テリーザ・メイ首相はリスボン条約第50条を発動させ、正式な離脱手続きを開始する。

この重要な規定は、EUの基本条約「リスボン条約」の一部で、現在EUに加盟する28カ国のいずれかが自発的に離脱する場合、欧州理事会へ正式に通告することで離脱が認められる。

離脱手続きが始まる直前の25日、EU加盟国は欧州経済共同体(EEC)を発足させたローマ条約の調印60周年記念式典のためローマに集結し、「分裂しない不可分の」結束を維持するローマ宣言を採択した。メイ首相は式典を欠席した。

2019年の3月末までに、イギリスはEU加盟国で史上初めてヨーロッパとの政治的・経済的協力から離脱する国となる。


デーヴィッド・キャメロン前首相は反対の立場だったにもかかわらず、自身の政治生命を守るためにブレグジットの是非を問う国民投票を提案した。ADRIAN DENNIS VIA GETTY IMAGES

どうしてこうなったのか?

イギリスEU離脱のきっかけは、デーヴィッド・キャメロン元首相が自身の政治生命を必死で保とうとEU離脱の是非を問う国民投票を提案するという、政治的な賭けだった。皮肉なことに、EU離脱が決まり、キャメロン政権は崩壊した。

2010年の欧州債務危機を受けてEU懐疑主義が台頭していたため、キャメロン氏は2013年、自身が所属する保守党が総選挙で過半数を獲得して勝利すれば、イギリスの加盟条件をEUと再交渉することを公約に掲げた。

2015年の総選挙で予想外の勝利を収めたキャメロン氏は、公約通り数カ月にわたるEU首脳との協議を開始した。2016年、キャメロン氏はイギリスのEU離脱に関する国民投票をやむなく実施すると決めたが、EU離脱には強硬に反対した。

EU離脱・残留の陣営が移民や経済など極めて重大な問題で衝突する様子は、世界中のメディアで報道された。

2016年6月23日、ヨーロッパは永遠に変わってしまった。この日、イギリスの有権者51.9%がEU離脱を選択し、数十年にわたるEUとの協力関係を捨てるという驚くべき結果となった。キャメロン氏は敗北を受けて辞任し、すぐにメイ氏が首相に選出された。

メイ首相は当初EU離脱に反対していたが、今は差し迫った離脱を指揮する立場にある。


イギリスのテリーザ・メイ首相は当初ブレグジットに反対していたが、今は離脱手続きを主導する立場にある。メイ首相はイギリス国内とEUの双方から反発を受けている。POOL NEW / REUTERS


これからどうなるのか?

イギリスは未知の領域へ突入するため、多くのことはまだ不透明だ。しかし29日にメイ首相がリスボン条約第50条を発動させると、イギリスはEUと最大2年かけて離脱条件について交渉する。この期限を変更するには、EU加盟国の全会一致の承認が必要となる。またイギリスはこの期間中、EU内協議から外れることになる。

危機的な状況はたくさんある。イギリスは強硬的なEU離脱(ハードブレグジット)に向かっているようだ。つまり、国境のない1つの領域と呼ばれるEU単一市場から離れるものと思われる。

ハードブレグジットによってイギリス人はEUの官僚制度からは解放されるが、同時に労働許可がなくても加盟国に居住し働くことのできるEUの基本原則「移動の自由」も失うことになる。

イギリスの離脱協定内容は、EU加盟国のうち「イギリスを除く特定多数国」からの承認を得る必要があり、欧州議会で否決される可能性もある 。メイ政権はスムーズに円満に交渉を進めることを望んでいるが、EU各国の首脳たちは、他の加盟国の脱退意欲を削ぐために厳しい離脱条件を提示するかもしれない。

交渉を進めていく過程で、イギリスはEUに対するあらゆる未払い負担金を支払い、今後のイギリス国民の権利を確保し、イギリスに暮らすEU市民の処遇を決め、イギリス単独での国家運営に向けて新たな戦略を策定していかなければならない。また、EUや他の世界各国との関係を再構築すると同時に、新たな貿易協定の締結や協力関係の構築を模索する必要もある。

2年でこれらすべてを成し遂げるのは非常に困難だが、予定の期日が来れば、イギリスはEUから離脱することになる。


他のEU加盟国の国民もブレグジットに触発され、イギリス同様、EU脱退の是非を問う国民投票を要求する声が現在出てきている。EMMANUEL DUNAND VIA GETTY IMAGES


EU加盟国内とイギリス国内の反応

EU離脱国民投票の結果を受けた反応の大半は、ショックと失望だった。EU離脱という投票結果、そして先行きの不透明さをはっきりと実感した人々は、離脱に賛成票を投じたことを後悔し、「リグレグジット」(regret「後悔」+ Brexit )という造語まで作った。

ブレグジットに対する最も強硬な反対意見の一部は、イングランド、ウェールズ、北部アイルランド、スコットランドというイギリス国内各地から出ている。スコットランドでは、ほぼ3分の2にあたる有権者が離脱反対票を投じていた。

メイ首相と離脱推進派にとっては非常に苛立たしいことだが、スコットランドでは現在、イギリスからの独立を問う住民投票の実施を検討中だ。スコットランド議会は28日に採決を行い、住民投票実施の是非を決める予定だ。

イギリスからの独立を問う住民投票の再実施を推進するニコラ・スタージョン自治政府首相は、投票実施の時期について、イギリスのEU離脱完了前が望ましいと主張している。スコットランド議会の承認が得られたら、次はイギリス国会からの承認が必要となる。しかしメイ首相が住民投票の実施を承認する可能性はないとみられる。メイ首相は繰り返し「今はその時期ではない」と述べ、イギリス国民が「分裂するのではなく、団結して力を合わせるべき時だ」と主張している。

イギリスが脱退すると、他の加盟国がEUにとどまる魅力が薄れててしまい、連鎖反応的な離脱が起きてしまうのではないかとの懸念もある。ローマ法王フランシスコですら、EUは今後の対処法に明確な道筋をつけなければ「崩壊してしまう恐れがある」という警告を発した

3月15日に行われたオランダ下院選で敗北した極右政治家ヘルト・ウィルダース下院議員は、オランダのEU離脱を問う国民投票の実施を自らの公約としていた。今年選挙があるフランスやドイツでも、同様の呼びかけがある。フランスの大統領候補で、極右「国民戦線」党首のマリーヌ・ルペン氏は、自身が当選すれば、フランスのEU加盟条件について再交渉を行うとの公約を掲げている。

ブレグジットが刻一刻と迫る中、イギリスとその他のヨーロッパ諸国で次に何が起こるかは未知数だが、イギリス人同様、今は「冷静になって団結すべき」ときだ。

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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