「きっと私たちを理解する」韓国のLGBTパレード参加者は、ヘイトにひるまない【大邱クィアカルチャーフェスティバル】

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韓国で4番目に人口が多い大邱市で6月24日、街の至るところでレインボーフラッグが翻った。『2017大邱クィア・カルチャーフェスティバル』のパレードが開催されたからだ。

日本ではLGBTなどと表現されるが、「クィア」とはすべてのセクシュアル・マイノリティを指す。大邱のカルチャーフェスティバルは、2017年で9回目を迎えた。

このパレードには毎年、同性愛に反対するプロテスタント団体による、妨害目的の嫌がらせが起きている。今回も彼らは、前日夜からパレード出発地点の大邱百貨店前の野外広場に陣取り、集会を開いていた。しかし当日は広場周辺からは排除され、午後1時のフェスティバル開始時には、約40の参加団体によるブースで物販などが始まった。

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パレードを終えて盛り上がる人々


■LGBT当事者の子供を持つ父母グループも参加

電動車いすでブースを廻っていた64歳のパク・ミョンエさんは、大邱市内にある障がい者地域共同団体の代表だ。今回のスローガンに『9回裏 逆転ホームラン 嫌悪と差別をかっ飛ばせ』とあるように、訪れていたのはLGBT当事者だけではない。障がい者や、高高度ミサイル防衛システム(THAAD)配備に反対する人などが「連帯」する姿も見られた。

なかでも印象深かったのは、『性的少数者 父母の集い』という横断幕を掲げていたLGBTの子供を持つ父母グループだ。

「あなたの同性愛嫌悪が 性暴力加害者を作るのだ」

父母グループの人たちはこんなプラカードを持ち、集まった人たちとフリーハグをしていた。


■連帯の証しとなった「Aグッズ」とは?

また今回はあちこちのブースに、「A」と書かれたグッズが置かれていた。この意味は何なのか。レインボーカラーの「A」バッジを販売していたレズビアン団体の女性に質問すると、「陸軍内で『みだらな行為をした』と有罪になった、同性愛者のA大尉への連帯を意味している」と語った。

「Aは処罰された軍人の象徴だけど、アライ(ALLY=支援者)のAでもあり、性的少数者へのスティグマの象徴でもある。いろんな意味が込められています」


「A」をモチーフにしたグッズのひとつ
 
韓国の軍刑法92条6項には「アナルセックスやその他のみだらな行為をしたものは処罰する」とある。A大尉は陸軍参謀総長の指令によるおとり捜査で処罰されたが、同性愛はセクシュアリティのひとつであって、好みの問題ではない。なにより人権を無視したおとり捜査には、当事者団体から激しい抗議が寄せられている。

この軍刑法92条6項の廃止と、差別禁止法の制定を推進しているのは、先の大統領選挙にも立候補したシム・サンジョン議員が所属する正義党だ。シム議員は大統領選中のテレビ討論会で「同性愛は賛成や反対できるものではない」と発言し、セクシュアル・マイノリティからの支持を得た。彼女は大統領選挙前日、ソウル市内の路上で差別経験者とのトークセッションをするなど、人権意識が高いことで知られている。

その正義党ボランティアで大学生のクォン・スンブさん(24)は、道行く人たちに「性的少数者が堂々といられる国を」を書いたチラシと、92条6項廃止を訴えるバッジを無料配布していた。

自身もセクシュアル・マイノリティだというクォンさんは、

「自分は直接的な差別を受けたことはないし兵役も終えているけれど、今の法律のままでは同性愛者の兵士が犯罪者扱いをされる可能性がある。韓国の人は保守的で意識が遅れているというイメージがあるかもしれないが、それは市民ではなく政治家のほう。だから議員間での意識の格差を埋めるために、こうして頑張っています」

と、胸を張って答えた。


■クリスチャンにも性的少数者はいる


プラカードを持つチャン・チュヒョンさん

会場周辺には「エイズ治療費に毎年500億ウォン 国民の税金で100%支援」という悪意のこもったプラカードを掲げた妨害者が立っていたが、その横で静かに、「差別 それは神の言葉ではありません」と書いたプラカードで対抗する青年の姿があった。会社員のチャン・チュヒョンさん(25)はソウルからパレードの参加するために大邱を訪れたという。

「参加は今年で2回目。ヘイトする人だけではなく、性的少数者とともにいるクリスチャンもいることを示したくて来ました」

狭量なイメージで語られることが多い韓国のプロテスタントだが、すべてが同性愛に反対しているわけではない。そしてクリスチャンにも、セクシュアル・マイノリティはいるのだと彼は続けた。


■クィアの私たちも、地球に当たり前に存在している

パレードは予定時間の17時より少し早く始まった。沿道には「私の子女を同性愛とエイズから保護しなきゃ」「同性愛はエイズの直接的な原因」「男女の結婚は伝統的な家庭  美しい国」など、錯誤と偏見に満ちたプラカードを掲げたヘイターが、約3.2キロのコース沿道を埋め尽くしていた。しかし参加者はひるむことなく笑顔で手を振り、存在をアピールしていた。

「おかしいのはあんただよ! こっちはこんなに楽しいから!」

胸にルージュでFから始まる4文字を書き、妨害者に向かって踊りながら抗議をしていたのは、大邱に住む大学生だ。パートナーと手を繋ぎながら歩く間、やはり笑顔を絶やさなかった。

2015年のパレードでは、イベントフラッグにプロテスタント信者から、人糞が投げつけられるアクシデントがあった。しかし今回はパレード前に若干の小競り合いは見られたものの、2時間ほどかけて無事に戻ってくることができた。そしてゴール地点に差し掛かるとどこからともなく、少女時代の『Into The New World』の大合唱が始まった。この歌は梨花女子大で生徒たちが、学校の横暴に抗議する際に歌った曲でもある。

パレード終了後、学校で日本語を勉強しているという女子高生3人組に声をかけられた。お揃いのレインボーのストラップにクィア(Queer)を意味する「Q」のトップがついたチョーカーをキラキラさせていた。彼女たちは、瞳もキラキラさせながらこう言った。

「クィアは当たり前のこと。周りの友達も家族も、私たちがクィアだって知っています。地球上にはいろいろな考え方の人がいるのはわかるけど、クィアだって存在しているんです。ヘイト攻撃をしている人たちも時間が経てば、きっと私たちを理解するのではないのかな」


大邱に住む高校2年と3年生の3人は日本のマンガの大ファン。「(映画版『銀魂』に出演している)橋本環奈が天使過ぎる!」と語った。

(執筆・写真:玖保樹鈴)


■大邱クィアカルチャーフェスティバルの画像集

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