韓国の名門女子大、卒業式で「総長辞めろ」の大合唱 背景に根強い学歴社会

韓国の名門・梨花女子大学の卒業式で、式辞を述べようとした総長に、出席者が「総長辞めろ」のコールを浴びせかけた。
한겨레

韓国の名門・梨花女子大学の卒業式で、式辞を述べようとした総長に、出席者が「総長辞めろ」のコールを浴びせかけた。

梨花女子大では、学部新設計画に反対する学生や卒業生が建物を占拠し、学校側が警察を動員して排除にかかるなど、騒動が続いている。その背景を見ていくと、韓国の学歴偏重社会の根深さが浮かび上がる。

ハンギョレによると8月26日午前、ソウルの梨花女子大の講堂で開かれた2015年度後期の卒業式には「信頼を失った総長に梨花を任せられない」「警察1600人を学内に入れて梨花女子大を汚した総長は即刻辞職せよ」と書かれた横断幕が掲げられた。

祝辞を述べるため壇上に上がったチェ・ギョンヒ総長に、出席者が「梨花解放、総長辞めろ」とかけ声を浴びせた。総長は「皆さんの意思は十分分かった。5分だけ時間を下さい」と求めたが、かけ声はやまず、総長は祝辞を述べられなかった。学位記授与で、総長との握手を拒否した学生もいたという。

■背景に学歴社会のひずみ

教育熱の高い韓国は入試競争の過熱、学歴偏重社会のひずみが長いこと指摘されてきた。

2014年11月の韓国日報の世論調査では、「人間扱いされるには大学を出なければならない」に85.7%が「そう思う」と答える半面、「大学を出なくても十分に成功できる」と答えた人は35.6%にとどまる。

しかし、景気の停滞で大卒者の就職率も低下し、非正規雇用が増加している。こうした社会情勢の変化を受けて、韓国政府は高卒で就職した人が後からでも大学教育を受けられるように「先に就職、後で進学」というスローガンを掲げ、生涯学習の強化を打ちだした。その一環が、大学に生涯学習に対応した学部を新設することだった。2016年5~7月、モデル事業として梨花女子大など10大学が選ばれた。

しかし、ハフポスト韓国版によれば、韓国屈指の名門大学で知られる梨花女子大では、「美容、ウェルネス産業を扱う」とする学部構想に対し、「学位をカネで売るのか」と、在学生や卒業生から激しい反発が起きた。この問題を巡るオンライン掲示板では「難しい入試に合格して入学したのに、実業高校出身者が混ざると学校のレベルが下がる」などの書き込みもあったといい、学生側の「名門意識」も見え隠れする。

▼8月3日・梨花女子大のデモ▼

韓国・梨花女子大デモ(2016年8月3日)

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一部の学生は「学生への事前説明がまったくなかった」などとして、7月28日から大学本館を占拠した。大学側は警察官を投入して排除しようとしたが失敗。8月3日には、総長退陣を求める学内デモが開かれ、主催者発表で約1万人が参加した。大学側は8月3日に、学部新設構想を事実上撤回し、総長と学生との対話集会を開くなど沈静化に懸命だが、総長辞任を求める学生らの本館立てこもりはまだ続いている。

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