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「お母さんに優しい国」フィンランドの男性に聞いてみた 「父親になるってどんな気持ち?」

2017年08月20日 18時07分 JST | 更新 2017年08月22日 18時09分 JST
猪谷千香

フィンランドのメディア企業で忙しく働いていたヘイッキ・ティーッタネンさんは、妻が妊娠した時に大きな「箱」を受け取った。それは、政府が子どもが生まれる母親に対して支給する「育児パッケージ」で、ベビー服や哺乳瓶などがぎっしり詰まっていた。そんな体験から、ヘイッキさんは2014年に父親仲間と起業。育児パッケージの素晴らしさを広めようと「ベイビーボックス」として商品化、世界中に発信している。ハフポスト日本版は、CEOであり、3人の育児に忙しい父親でもあるヘイッキさんに聞いてみた。父親になった時、どんな気持ちでしたか?

■育児パッケージとの出会いで人生が変わる

2010年、最初の子どもの出産を4カ月後に控えたヘイッキさん夫妻のもとに、KELA(フィンランド社会保険庁事務所)から大きな育児パッケージが届けられた。育児パッケージとは母親手当のひとつで、80年前に始まっている。中には約50点のベビー服やベビーケアアイテム、両親が使うグッズなどが詰められ、箱自体はベビーベッドにもなる優れものだ。

奥さんは最初の子どもを妊娠した時、ヘイッキさんは正直、ピンとこなかったという。

「妊娠すると、女性はホルモンバランスが変わり、心も体も大きな変化があります。そうした中で母親にある自覚が生まれてくる。でも、僕たち男性には、心身の変化はありません。そこで、最初に父親になったと実感できたのが、育児パッケージの箱を開けた時でした。ああ、僕ももうすぐ父親になるんだ……と感動しました。妻と一緒に泣いてしまったぐらいです」

父親になるという自覚を与えてくれただけでなく、実際に育児パッケージは助けにもなった。

「妻も僕も初めての出産でしたから、赤ちゃんのことは何も知りませんでした。何が必要なのか、赤ちゃん用品の質の良し悪しもわからなかった。でも、育児パッケージを受け取り、赤ちゃんにとって必要なものを知ることができました。育児パッケージには80年もの歴史があり、製品として完成されています。赤ちゃんが生まれる時期は、人生でとても幸せなはずですが、仕事はありますし、女性は妊娠で心身が疲れます。夫婦にはすごいストレスがたまっているのです。そうした時、育児パッケージがあるだけで、赤ちゃんのための準備が進み、出産や育児という素晴らしい経験に集中できます。人生の大事な時を助けてくれるのです」

babybox

へイッキさんたちが販売する「ベイビー・ボックス」。ムーミン仕様が日本で人気

■「ベイビー・ボックス」発売3年で、80カ国以上に販売

ヘイッキさんは最初の子が誕生してから、育児休暇を取得。育児と仕事の両立をどうしたら良いのか悩む若い父親たちにも、育児パッケージを通じて自分と同じような体験をしてほしいと願い、2014年9月に「パパ友」たちと「ベイビー・ボックス社」を設立した。

「育児パッケージはフィンランドの国民のためのサービスですが、こんな素晴らしいコンセプトなのだから、海外にも広めたいと思いました」

育児パッケージと同様、ベビー用品50点を詰めた「ベイビー・ボックス」として商品化。オンラインで世界に向けて販売をスタートしたところ、3年で80カ国以上から注文が入るようになった。ヒットの秘密は、それぞれの地域や発送時期を考慮して、内容を細かく変えているところだ。日本からの注文も多く、4割を占めるという。フィンランド生まれの人気キャラクター「ムーミン」仕様の商品も人気だ。しかし、あえて変更していないところもある。

「フィンランド政府の育児パッケージはユニセックスです。男の子も女の子も使えるような色が選ばれています。赤ちゃんは赤ちゃんであるという考え方からです。ベイビー・ボックスも男女の差はありません」

フィンランドは「お母さんに優しい国」として知られるが、世界トップレベルの「男女平等の国」でもあるのだ。

■育児は「大変だけど、最高がモットー」

現在、国内でも千葉県浦安市や埼玉県神川町など、フィンランドの育児パッケージに着想を得て、独自に赤ちゃん用品を配布する自治体が増え始めている。

「日本は少子化という課題がありますが、子どもを出産して育てることを、もっと楽しくしたいです。そして、育児パッケージもベイビー・ボックスも、赤ちゃんに『ようこそ』を伝えるギフトです」

今では3人の子どもを育てるヘイッキさん。CEOとして働きながら、3人の父親として子どもとの時間も大事にしている。

「毎朝5時半に起床し、7時45分に車か自転車で子どもを保育園に送っていきます。それから出勤して仕事です。夕方17時半までには帰宅して、家族と団欒します。夕食の後は、歯ブラシと本の読み聞かせをして、20時半には子どもたちは消灯です。それから、また少し仕事をします。もう7年も毎日やっていますが、『大変だけど、最高』というのが、モットーです」