アート&カルチャー

100年前、日本の芸術が結集した一大プロジェクトがあった。

「皇室の彩」展が皇室ファンだけでなく美術ファンにも人気の理由とは

2017年11月11日 09時56分 JST | 更新 2017年11月11日 10時53分 JST

芸術の秋。東京・上野の東京藝術大学大学美術館で開催中の、東京藝術大学創立130周年記念特別展「皇室の彩(いろどり) 百年前の文化プロジェクト」に皇室ファンのみならず美術ファンも詰めかけているという。10日ほどで、約1万人が訪れた。

なぜ人気なのか。会場で流れる動画のナレーションを務めた元NHKアナウンサーの内藤裕子さんに案内してもらった。

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およそ 100 年前、大正から昭和最初期に、皇室の御成婚や御即位などの慶事のお祝いのために、選りすぐりの美術工芸家たちが力を尽くし、美術品を制作し献上した。

東京美術学校(現・東京藝術大学)の第5代校長だった正木直彦(1862~1940)氏が指揮し、全国の各分野を代表する作家135人が結集。当代最高峰の作品を制作した。

大プロジェクトは1923年の関東大震災後、存続の危機を迎えたが、正木氏が「日本最高の美を創りあげ、残そう」と強く継続を訴え、実現したという。今では技術的に不可能とされる作品もある。

正木直彦像 昭和10年 沼田一雅 東京藝術大学蔵

「今回の展示では、皇室に献上された後、皇室外で初公開となる作品を中心に鑑賞できるのが魅力です。素晴らしい美術品、工芸品ばかりで、皇室の方々が大切にされてきたことが伝わります」と内藤さん。いったん献上された美術工芸品は宮殿などに飾られていたため、一般の人々の目に触れる機会がほとんどなかった。

展示は第一部と第二部に分かれている。第一部は「皇室をめぐる文化政策と東京美術学校」。

第一部の見どころは何と言っても、会場の奥で存在感を放つ、横山大観の『日出処日本』。

横山大観《日出処日本》昭和15年 宮内庁三の丸尚蔵館蔵

シャープな富士山と目が醒めるような朱色の太陽のコントラストが目に鮮やかだ。1940年に横山大観が天皇に直接献上した大作。圧倒的な美に引き寄せられる。

また1915年11月10日の大正天皇の大礼を祝して、東京市より東京美術学校(現東京藝術大学)に委嘱された「東京名勝図・萬歳 楽図衝立」も圧巻だ。東京市在住の名工たちによる合作で、2万分の1の縮尺の東京市の地図を、東京市の名所が美しく描かれた扇面15枚が彩る。当時の華やかな東京の街が鮮やかに蘇る。

《東京名勝図・萬歳楽図衝立》大正4年 宮内庁三の丸尚蔵館蔵

《東京名勝図・萬歳楽図衝立》大正4年 宮内庁三の丸尚蔵館蔵

第二部は、1924(大正13)年1月26日、のちの昭和天皇である当時の皇太子ご成婚にまつわる品々が並び、最大の見どころとなっている。

関東大震災の翌年で、復興に向けた時期。ご成婚を記念して現在の上野公園が宮内省から東京市に下賜された。

その年の6月、東京市がご結婚の奉祝会を開催。華やかな装飾を施した「花電車」が16日間も運行された。

花電車について

設計は東京美術学校の図案科教授が中心にデザインを作成、完成後に東京美術学校の大正12年の卒業生から選ばれた優秀者の絵図を蒔絵の箱に納めて献上した。

東京美術学校《奉祝御成婚花電車絵図》大正13年 宮内庁三の丸尚蔵館蔵

「最も注目していただきたいのは、いずれも皇室に献上されてから、今回初めて皇居外で公開された『御飾棚』と『二曲御屏風』です。写真で見るよりずっと艶やかで豪華。見とれてしまいます」と内藤さん。初公開とあって、長時間足を止めて見入る来場者も多いという。

「御飾棚」と「二曲御屏風」は文武官(内閣総理大臣以下、官吏)一同から昭和天皇ご夫妻(当時の皇太子夫妻)への献上品。制作は東京美術学校に依嘱され、正木直彦校長の指揮のもと、屏風と、飾棚およびその付属の棚飾が5年かけて制作された。棚には絵画、彫刻、陶磁器など各分野の大勢の作家による棚飾品が伴う。

《御飾棚》鳳凰菊文様蒔絵(昭和天皇へ献上)昭和3年 宮内庁三の丸尚蔵館蔵

昭和天皇への飾棚には鳳凰、香淳皇后へは鶴の蒔絵が全面に施されている。絵柄が違うほか、今回、驚きの違いがあることも新たにわかった。詳しくは内藤さんがナレーションを務めた展示映像で。

《御飾棚》鶴桐文様蒔絵(香淳皇后へ献上)昭和3年 宮内庁三の丸尚蔵館蔵

昭和天皇に献上された「二曲御屏風」。5年がかり、総勢48人の作家が参加した作品だ。

《二曲御屏風》昭和3年 宮内庁三の丸尚蔵館蔵

内藤さんは本展の魅力について「一人ひとりの職人さんの魂、気迫、日本の美術、工芸の奥深さを感じます。関東大震災を乗り越え、日本の最高の美を結集させようという思いが伝わります。今回初めて皇居外で公開される作品もあり、必見です」と語っている。
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特別展は11月26日まで。午前9時30分〜午後5時開館(金曜・土曜は午後8時まで開館)。月曜休館。一般1300円、高校・大学生800円。中学生以下無料。問い合わせは03−5777−8600。