「会社の法律は俺だ」残業代求めるエステ店スタッフに会長は「逮捕されても出せない」と豪語した

7人の女性たちは、未払い残業代、合わせて約1600万円を支払ってもらいたいと訴えている。

都内のエステ店で働く、女性エステティシャン7人が「残業代が払われない」として、計約1600万円の支払いを求めて、会社を訴えた。女性たちと代理人が11月20日、厚生労働省で記者会見した。

訴え出た女性は、長時間労働の実態や経営者の暴言を告発。「身体を壊して、泣き寝入りをして、仕事ができなくなって、将来も不安で......。そういうのを業界全体で変えていってもらいたい」などと話した。

厚労省で記者会見する原告女性
厚労省で記者会見する原告女性
Kazuki Watanabe / Huffpost

女性たちは2014年〜16年にかけて入社。過酷な労働状況を改善するため、外部の労働組合に入って、会社との交渉を試みた。しかし、会社側は「固定残業代制度だ」などとして支払いに応じず、裁判に至ったという。

代表取締役は8月10日、女性たちに向かってこう言い放った。

「誰が言っても出せないものはだせない。逮捕されても出せない。これはね、裁判になると思うんですよ。でもほとんどの人はね、弁護士に相談しても、おれの言ってることが間違ってると言う。裁判やっても勝てないって言うけど、おれは勝てる勝てないの問題じゃないと思う

「会社っていうのはね......会社の法律は俺だと思ってるから」

この発言で、原告たちは、かなりの衝撃を受けたという。

40代の原告Aさん「突然、朝の準備をしているときに会長がいらっしゃって、あたまが真っ白になりました。会長の前に座らされて労働組合批判をされました。怒鳴るような感じの方なので、わーっとなって、ただ黙って20分間、聞いていました」

20代の原告Bさん「言っていることがおかしすぎて、ええって。ただびっくりっていう感じでした。あとから考えると、腹が立って......。弁護士から負けると言われているのに、何で払わないの......」

「求人詐欺の典型」と原告側弁護士

原告側の市橋耕太弁護士
原告側の市橋耕太弁護士
Kazuki Watanabe / Huffpost

エステ店は都内に2店舗あり、原告側によると従業員は合わせて25人程度。高級指向で、30年以上の歴史と丁寧な施術をウリにしている。一方で、昨年末には品川労基署から、今年8月31日には渋谷労基署から、労働基準法違反(残業代不払い)などで是正勧告を出されている。

代理人の市橋耕太弁護士は、求人広告の内容と実際の雇用条件が異なる「求人詐欺の典型」と指摘。「固定残業代」として、いくら残業をしても残業代を支払わないなど、店は「若者を使い捨てにするブラック企業」だと話した。

市橋弁護士によると、求人広告では「実働8時間で月給23万円〜と諸手当」というような説明だった。ところが、いくら長時間労働をしても残業代は支払われず、月給が23万円を超えることはほぼなかった。雇われたときの契約書には、そのようなルールは記載されておらず、原告たちは説明を受けてもいなかったと話している。

「あんまりだなって......」

このエステに3年3カ月勤めたAさんは、「素晴らしいお客様に出会って、良い仕事をさせていただいています」と、仕事への情熱を語る。

その一方で......「週末や祭日は、休憩がほとんどとれません。店は朝11時から、20時30分まで。長時間労働でくたくたになって、100%の技術を提供できないのがつらい」。

「有給って、実際に自分で使うことはほぼできなくて、毎月のシフトに合わせて、店の公休日にあわせて使われる。風邪で休むと、欠勤扱いでお給料が引かれてしまいます」

「以前もエステで働いていて、長時間労働や残業代不払いは、ある程度ガマンしていました。公にするつもりもなかったです。でも、会社が団体交渉を3カ月も引き延ばして、そして、やっと決まった日程は、わたしたちが出勤している日をあえて設定してきた。ああ、話す気がないんだなって思いました」

結局、仕事をストライキして臨んだ団体交渉。

Aさんたちが休憩がとれないと訴えると、会社からは「トリートメントをしている時間以外は、遊んでるでしょ」「個室に入ったら何してるかわかんないよね」などと言われてしまった。

Aさんは「それは、あんまりだなって......」と涙ぐんだあと、裁判を起こした決意を表明した。

「エステって、劣悪な労働環境で、疲れ切って辞めていく人も多い。今回は、おかしいことはおかしいって言えるような社会にしたいと思って、このような形にさせてもらいました」

ハフポストは会社側にも取材を申し込んでいる。回答があれば追記する。

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