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罪と罰 ~誰が、なんのために、死刑という制裁を科すのか〜

2015年09月30日 00時28分 JST | 更新 2016年09月28日 18時12分 JST

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松本健次さんが描いた絵

踊るウサギやカエル、大きな鞠を押す少女、笑う牛や虎の絵。これらはすべて、ある死刑囚の描いた絵である。絵だけをみて、一度想像してもらいたい。丹念に着色した絵から、どんな人がこういう絵を描くのだろうかと。

「松本健次死刑囚は、1990年と1991年に強盗殺人事件を起こし、死刑判決を受け、大阪拘置所にいる。遊ぶ金欲しさに、従兄弟を殺害しその不動産を売却し、数千万円を手に入れた。日本中を旅行し、外車を購入、豪遊したものだからたったの1年で使い果たした。安易に次の殺人に取り掛かり、近所の女性を殺害、再度不動産の売却を試みたが、事件が発覚。逮捕となった。」

これを見ると、なんて凶悪な人物だと思えるだろう。

しかし、検察側の主張や判決文だけでなく、鑑定資料や弁護側からの情報からは、違った側面が見えてくる。

熊本で1951年に生まれた健次さんは、胎児性水俣病にり患していた。病気と知的障がいの関係は、まだ解明されていない。しかし、健次さんは軽度の知的障がいがあり、IQは60から70程度とされる。

健次さんは幼いころから兄に暴力をふるわれ、支配する関係と支配される関係ができあがり、それは大人になってからも続いた。中学卒業後、親許を離れ、調理師や土木作業員として生計をたて、少ないながらも母親へ仕送りをしていた。その後、熊本へ戻って兄と再会したことが、悲劇的な事件が起きるきっかけとなった。

兄は、健次さんを巧みに暴力で操り、殺害計画をたくらんだ。兄の命令で、殺害行為に加わったとされたが、健次さんは、実際の行為に加わってない可能性が高い。そして、得た金のほとんどは兄とその愛人が消費した。

しかし、なぜ、健次さんが死刑囚となったのか

兄は逮捕直前に自殺した。金井塚康弘主任弁護人によると、誘導的な取調べが行われたという。健次さんが全て行ったと、当初は自白をしていた。第2審では健次さんの関与は従属的なものと認定されたものの、殺害に深く関与したとして死刑判決が下された。

裁判では、障がいの程度は軽いため、裁判で心神喪失、心神耗弱は認められていない。しかし障がいがあれば、逮捕から公判まで、自分の置かれている状況を正確に把握することが困難な場合がある。

また、自分が理解していないということすら、素直に周囲に伝えることができない人もいる。軽微な障がいであるほど、初対面の取調官や裁判官など、その障がいの態様や程度が理解されないであろう。

■□■ 日本の死刑制度の問題点が凝縮 ■□■

健次さんの死刑判決が確定してから15年がたつ。死刑囚の処遇は、あまり知られていない。3畳程度の部屋で、自由に歩くこともできず、刑務官と少し話をする程度、わずかな運動と入浴時間のみ部屋からでることができる。閉じ込められた空間で、少しずつ、精神が蝕まれていく。

2014年に健次さんが弁護人に対して出した手紙からは、ほとんど正確な意味を読み取ることはできない。面会人に対して、差し入れをお願いしたいという文章があるなかで、「現在のレーダー電波ー光線でケガだらけです中止してください!」というような一文もある。紹介しているような絵は、ここから出られるまで止めたと全く描いていない。

アムネスティは、健次さんの支援を昨年決定した。現在、日本の死刑囚は130人。昨年3月末に釈放されいまだ死刑が確定されたままである袴田事件の袴田巖さん、名張毒ぶどう酒事件の奥西勝さんに次いで、日本のケースでは3人目の支援である。

健次さんの支援を決定した理由はいくつかある。

「知的障がいや精神障がいを持つ人に対して、社会はどう向き合うか」を考えるきっかけになるのではないかということが一つ。

また、死刑囚として長年拘置所にいることで、精神が蝕まれていくことを周知したいという思いもある。自分がどこにいるのか、刑自体を理解できない状態になれば、反省の念を表し、事実を語ることも、不可能になってしまうからである。

日本の殺人事件は身内で起きることが多いと言われている。被害者遺族の感情を考えて死刑は賛成だという意見は多いが、健次さんの事件のように、被害者が親族であれば、被害者遺族の感情は複雑である。遺族は死刑に必ず賛成だと、部外者である私たちが判断してしまうことは、本当に被害者遺族のことを考えているといえるのだろうか――この点も提起したかった。

こういった複雑な問題が絡み合い、健次さんのケースは日本の死刑制度の問題点が凝縮されているのだ。

アムネスティは、死刑という国家による殺人に対して反対をしている。この文章を読む方のなかには、死刑に賛成という方も多いだろう。死刑制度を存続させているのは私たち国民である。世界の7割で廃止となった今、1人ひとりが、死刑はどんな刑罰なのか、立ち止まって考える時が来ているのではないか。

(アムネスティ・インターナショナル日本)

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精神障がいや知的障がいを持つ人に対し、死刑執行ではなく治療を求めて、法務大臣と厚生労働大臣へ要請してください!

★☆★ 下記のリンクから署名にご参加いただけます ★☆★

▽ 日本:精神障がいや知的障がいを持つ人に対する死刑を止めて!

https://www.amnesty.or.jp/get-involved/action/jp_201508.html

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▽ 世界死刑廃止デー企画イベント 10月3日(土)開催!

「響かせあおう 死刑廃止の声2015」~死刑囚130の個性~

http://www.amnesty.or.jp/get-involved/event/2015/1003_5520.html

死刑確定囚へのアンケート結果の紹介と、元法務大臣のお二人に、日本の死刑の最終責任者として執行を迫る圧力とどのように向き合ってきたのか、これからの法務大臣に伝えたいことなどを語っていただきます。

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