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吉川敦也 Headshot

写真で振り返るアメリカ大統領選挙

投稿日: 更新:
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投開票が11月8日に行われ、次期アメリカ大統領は共和党のドナルド・トランプ(以下、トランプ氏)に決まりました。結果はどうであれ、アメリカ国民が選んだ次期大統領です。楽観することも悲観することもなく、私たちはただトランプ氏を見守るだけだと思います。もしトランプ氏が結果を残せなければ、次の選挙で政権を交代させることは可能です。やり直しがきく、それが民主主義だと思います。

さて、僕はたった5日間でしたがアメリカ大統領選挙を現地で追ってきました。日本でも大きな盛り上がりを見せた大統領選挙。アメリカでの生活1日1日が刺激的で新鮮だったのですが、何より驚いたのは僕の友達の今回の大統領選挙への関心が高かったことです。

LINE友達数が50人ほどの私に、200人位の通知が来ていて(うちの半分は母親。ニューヨークの写真を送ってほしいとは言いつつも、それが安否確認になっていたと思います。)その内容は「いまアメリカどうなってる?」や「アメリカで選挙運動してる人たちってどんな人?」というものばかりでした。

そして帰国してから一週間ほど、どのテレビ番組もトランプ氏を取り上げ、新聞も一面でなくともどこかにはトランプの顔や名前がありました。選挙を終えて色んな人たちが分析・検証する中で「隠れトランプ支持者」という言葉が使われましたが、僕の周りには「隠れ政治関心の高い友達」がいました。

そんな大盛況だった大統領選挙ですが、先ほども言った通りたくさんの方が今回の選挙を分析し、検証してきました。なので僕は、自分の目で見て耳で聞いて心で感じたことを写真と一緒に振り返りたいと思います。

そこでこれを読んでくださっている皆さんにお願いがあります。それは、これから添付されている写真だけを見て、その写真に至るまでの過程、つまり「前」と写真の先に何が起きたのか、つまり「後」を想像して頂きたいのです。写真の前と後を想像し、描いたものと現実を比較することで、ただ写真を見たときと捉え方や感じ方が少し異なってるくると思うからです。

写真1

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日付:2016年11月5日
場所:トランプタワー前

こちらはトランプタワー前にいた裸のカウボーイとトランプを支持する若者が並んでいる写真です。裸のカウボーイって誰?と思うかもしれませんが、正直私もわかりません。裸のカウボーイは自分でそのように名乗っていました。アメリカ人は一度はカウボーイに憧れ、特に将来の夢がカウボーイである少年もいると聞いたことがあります。そのカウボーイが「Make America great again!」をリズミカルに歌っていました。

では、この写真の前と後を想像してみてください。この写真の中にある異変に気付くことができるかがポイントです。

【前】

この写真は裸のカウボーイと若者が誰かに写真を撮られるように一列に並んでいます。この並びになる前は、実は裸のカウボーイとトランプを支持する若者は別々の場所にいました。とは言っても、その距離にして5.6mほどですが。ではなぜこの並びになったのか。それは、トランプタワー前にいた海外メディアのキャスターあるいは記者らしき人が「そこの若者たち!ちょっと集まって!写真撮ろう」と呼びかけたからなんです。ニューヨークはブルーステート(これまでの選挙結果を見る限り、民主党が勝つとされる州)なので、「トランプを支持する若者」は珍しいと言えます(実際はニューヨークでトランプ支持者は見かけました)。そこでテレビなのか新聞なのかわかりませんがその記者が「ニューヨークにトランプを支持する若者がいました!」という演出をするために並ばせた写真だったのです。

【静止画】
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メディア陣や通行人が写真を撮る

【後】

写真撮影が終わった後、カウボーイはそのままトランプタワー前でギターを弾き、若者たちは退散していきました。ほんの僅かな作られた時間を切り取った写真がアメリカ中、さらには世界中に流れました。事実としてニューヨークにもトランプを支持する若者はいましたが、この写真が演出の上に成りなっているという点に僕は疑問を抱きました。

写真2

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日付:2016年11月8日ニューヨーク
場所:タイムズスクエア近辺の投票所

こちらはニューヨーク・タイムズスクエア近辺に位置する投票所で海外メディアが実施していたアンケート用紙の写真です。アメリカの投票所を覗いてみたいと思い、警備員に事情を説明して投票所の中を見学させてもらいました(動画や写真を撮らない、中にいる人に声をかけないという条件でしたが)。その出口で声をかけられ、特に断る理由もなかったので承諾したのですが、渡されたアンケートの内容をみて驚きました。さて、この写真から読み取れる前と後を想像してみて下さい。

【前】

アンケートに答えることを承諾すると、大きなカメラを向けられ、お茶目なレポーターが僕にマイクを突き出してきました。そして第一声は
「Where did you come from?」(どこから来たの?)

僕 「We came from Japan.」(日本から来ました。)

レポーター 「Japan!? Wow! Samurai! Samurai!」(日本だと!?サムライ!サムライ!)

このようなハイテンションで来られると、つい身構えしてしまいます。その後に「Who are you voting for?」(誰に投票する?)と言われ渡されたのがこのアンケート用紙でした。

【静止画】

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アンケート用紙

【後】

このアンケートには「Who are you voting for?」と書かれている通り、誰に投票するのかについての調査でした。もちろん、僕はアメリカで投票することができません。そのことを伝えると、「If you have right to vote, who are you voting for?」(もし投票権があれば、誰に投票する?)と言われました。このアンケート用紙を見て明らかな通り、トランプ氏を投票する、その選択肢しかありません。

「これってトランプしか投票できませんよね?」と言い返すと、それを無視して「とにかくチェックして!」と言われる始末。その場から早く抜け出したかったのでチェックしていると、カメラが僕の手元によってきて、そのあとに顔を写してきました。おそらく「トランプを支持している日本人」としてテレビに流そう、そのような思惑があったのではないかと思います。このアンケート用紙だけをみると、トランプを支持する日本人ですが、実はこのような裏話がありました。アメリカに行く前からメディアによる演出があると耳に挟んだことがあるのですが、ここまで明らかにそして堂々としているとは思いませんでした。

写真3

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日付:2016年11月8日 ニューヨーク
場所:ヒラリークリントン集会会場

こちらは18時に開場予定のヒラリー・クリントンの集会に待つ人々です。この写真を撮った時間は13時頃。5時間前から私も含め、並んでいました。その日は気温も高く、並んでいるだけで疲れる、そんな日でした。高校生の時にユニーバーサルスタジオジャパンのハリウッド・ザ・ドリームというアトラクションが2時間待ちで断念したこの僕が会場入りまで5時間、そして演説予定会場まで4時間、計9時間待ちました。

余談にはなるのですが、長時間待つので集会場の地下にはレストルームのようなものがあり、食事をとったり、椅子に座って休憩できるスペースがありました。ただ問題が一つありまして、そこに売っている物がものすごく高いんです!

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しかし、お腹の減り具合は限界に達していたので料理を注文しました。そこで出てきた、甘辛チキンと焼き飯が最高に美味しかったです。喫茶店に出てくるコーヒーでさえ写真を撮る私ですが、疲労と空腹に我慢ができず、できたての写真を撮るのを忘れていしまいました。途中気づいて撮った写真なので見栄えが悪いですが、こんな感じです。

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余談はここまでで、ヒラリー・クリントンの集会場の話に戻ります。

【前】

日が照っている中で待ち疲れていたものの、ヒラリー・クリントン陣営のエネルギッシュかつ賑やかな雰囲気は僕の気を楽にしてくれました。待っている間、水とお菓子を配る人が現れたり、ギター片手にヒラリーを応援する歌を歌う人が現れるなど、イメージしていた集会とは違いました。

ある人は友達と賑やかに会話し、ある人は食事をとり、ある人たちは「ヒラリー!ヒラリー!」とヒラリーコールを始めたりしていました。その状況を言葉で表すとすれば、歓喜または勝利を見越した気持ちの余裕。少なくとも、敗北を覚悟する雰囲気は感じられず、勝利しかない、そう確信している人が多い印象でした。

【静止画】

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ヒラリー・クリントンの集会に待つ人たち

【後】

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大統領選挙の結果はご存知だと思うので、想像とは違いますが、この写真が現地の雰囲気を示しています。現地時間の20時に投票が締め切られました。21時22時と徐々に州ごとの開票結果が発表されました。はじめはトランプ氏がヒラリー氏と僅差で競っていましたが、現場の雰囲気はまだ明るく、楽観的でした。

僕は22時30分頃に集会場のレストランで食事をとっていましたが、その時点で少しずつトランプ氏の優勢でヒラリー氏との差が広がっていましたが、まだわからない、結果はヒラリーの勝利、そんな強気の雰囲気でした。

しかし、オハイオ州でトランプ氏が勝ったあたりから少しずつ現場の雰囲気が変わりました。先ほどまで聞こえた笑い声やしゃべり声は少しずつ小さくなり、アメリカの国旗を振っていた者も強く握りしめる、そんな姿が見受けられました。そのあと、コロラド州、バージニア州と続いてヒラリーが勝利し、ヒラリーコールも起きました。

しかし、選挙人が29のフロリダ州でトランプ氏を勝ってからは、涙を流し、瞼を晴らし、肩を組み、手をつなぎ「私たちは繋がっている」と主張しているような人の姿がありました。中にはアメリカの国旗を地面に叩きつける人や投げつける人もいました。気がついたときには足元は国旗で埋め尽くされていました。はじめは結果を受けて悲しみに包まれた会場ではありましたが、少しずつ場の空気は明るくなっていきました。

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気が付けば5時30分。眠気と疲労でフラフラでしたが、なんとかホテルに着きました。

11月9日
大盛り上がりを見せた選挙でしたが、翌日は何の変哲も無い日常がそこにはありました。

写真というものは、その一瞬の時間を切り取ります。それを見て私たちは、何が起きたのか、その沈黙から語られるメッセージは何なのかを想像します。しかし、今回取り上げたように、例えばそれが作られた時間だったり、ただ待っている人もそこで何時間待ち、その待ち時間に何が起きたのかなどのように一枚の写真だけでは伝わらない部分があります。

一見写真はただそれを見るだけで事実の全体がわかるような気もしますが、実は文章で理解するときよりも、映像から理解するときよりも難しいと気づきました。世の中に出回っている様々な写真も、その絵に至るまで何が理由でどんなことが起き、そしてその絵の先の未来はどんなものなのかを想像し、その後、本を読んだり、人に聞いて確認してみることで本質の理解に近づくのではないでしょうか。

目に見えるもの、耳で聞こえるものに懐疑的になり、そして目に見えないもの、耳で聞こえないことにこそ敏感にならなければなりません。