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乳がん治療の今~乳がん細胞の性格診断~

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タレントで元女子プロレスラーの北斗晶さんが罹患し、全摘出手術を受けた時にも関心が高まった「乳がん」。有名人が罹患すると、またたく間にメディアで取り上げられますが、健診から治療まで、正確な知識を身に着けられる機会があまりないため、漠然とした不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。そこで今回は、順天堂大学乳腺内分泌外科教授の齊藤 光江先生に、ステージと治療法の概要を伺いました。近年の乳がん治療では、がん細胞の大きさだけでなく、その性質も考えて治療方針を決めるようになってきています。

乳がんのステージ(病期)はしこりの大きさや転移の明確さで決まっています。

ステージ0:超早期。乳管の中のみのがんで、乳管の外に浸み出しがないので転移は起こらない

ステージⅠ:乳管外に浸み出した部分(しこり)の大きさが2cm以内で、腋のリンパ節転移は明らかではない

ステージⅡ:しこりの大きさが2cm以上5cm以内で、遠く離れた臓器(遠隔)の転移は明らかではない

ステージⅢ:しこりが5cmより大きく、リンパ節転移は明らかだが、遠隔転移は明らかではない。

ステージⅣ:遠隔転移が明らか

従来はしこりが大きいほど、手ごわいがんと考えられていました。そのため、ステージに基づいて薬物療法(特に化学療法)の適応が決められていました。ステージは現在でも参考にしていますが、近年はしこりが大きくても治りやすい乳がんや、小さくても手ごわいものがあることが分かってきました。そのため、しこりの大きさよりも、薬の効きやすさ(がんの性格)をわきまえた薬物療法を行うようになってきました。

乳がんの多くは乳管を作る上皮細胞が、がん化したものです。この細胞はもともとは規則正しく管の形を作る性質があります。そのためがん化されてもこの性質が失われていない場合は、乳管内に比較的規則正しく管状の構造を作りながら増殖していきます。一方で、規則正しくは増殖せず、むやみやたらに増殖するタイプもいます。また、増殖の速度が速いがんとゆっくりながんがあります。粒ぞろいの細胞でできたしこりもあれば、大小様々な細胞でできているしこりもあります。

このように、ひとえに乳がんといっても、発見された時期(ステージ)の違いのみならず、性格にも多様性があるのです。

乳がん治療には、基本的には薬と手術の両方が必要です。火種(乳房にあるがん)を取り去る手術療法と飛び火(転移しているかもしれないがん細胞)に対する薬物療法です。超早期(ステージ0)は例外的に手術療法のみで完治します。理論上転移の可能性は無いので、薬はいりません。

しかし、ステージI以上の乳がんは、転移の可能性が否定できません。手術療法だけでは、治ったとは言い切れないので、薬物療法が必要になるのです。薬の中には、化学療法剤(抗がん剤)、ホルモン療法剤、分子標的治療薬(免疫抗体療法剤)があり、先程お話したがんの性格に合うものを使っていくのです。放射線療法は、手術を補うための火種に対する治療として使用されることが多い治療です。初期治療においては、手術を縮小したとき(乳房温存療法など)に使用します。

(聞き手 / 北森 悦)

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【医師プロフィール】
齊藤 光江 乳腺外科
順天堂大学乳腺内分泌外科教授。1984年千葉大学医学部卒業。卒後東京大学医学部付属病院分院外科に勤務。その後アメリカに留学し、1995年より癌研究会付属病院乳腺外科、2000年より癌研究会研究所遺伝子診断研究部研究員兼任、2002年より癌研究会新薬開発センター教育研修室副室長兼任する。また、2002年より東京大学大学院医学系研究科臓器病態外科学代謝栄養内分泌外科講師を務め、2006年より順天堂大学乳腺内分泌外科先任准教授、2012年より現職。