BLOG

エイベックス:好調な国内業績を背景に再挑戦する海外進出と、そのアプローチの変化

2014年09月01日 00時02分 JST | 更新 2014年10月31日 18時12分 JST
Wikipedia Commons

エイベックスは、停滞する音楽市場の中であっても国内の好調な業績を背景として、以前から海外進出を重要な戦略の一つとして考え注力してきたが、現在まで海外におけるブランドの浸透に苦戦してきた。それに対して2014年に入ってから海外進出に対するアプローチを変更しており、今回はそのアプローチの内容と評価について情報共有します。


  

◎停滞する日本の音楽市場と国内で好調なエイベックスの業績


日本国内の音楽市場は1998年に約6800億円(音楽ソフト/ライブ市場合計金額)をピークに年々減少していますが、2013年には約5400億円と市場規模を2009年と比較して維持しており、底打ちしている状態です。その主な要因は上記のグラフから衰退の激しい音楽ソフト/有料音楽配信の減少をライブの成長がカバーすることによって維持されていることが分かります。


これはフリー経済の到来や、コンテンツが気軽にコピー可能で流通が容易なデジタル・コンテンツではなくリアルな経験価値に重点を置いたライブやそれに伴う物販に移行することは社会的・ビジネス的に当然の流れになります。


その中にあっても、エイベックスは株式上場している音楽エンターテイメント企業(エイベックス、アミューズ、日本コロンビア)を比較しても、順調に売上高が成長していることが分かります。

2009年の売上高を基準にした場合、その差は歴然で、上場企業の中で売上規模が2位のアミューズと比較しても売上高が4.5倍以上にも関わらず、3期連続成長しており、5年間で33%の成長率と高い成長を実現しています。




◎エイベックスの成功の要因は事業転換と事業育成



エイベックスの順調な成長は、2009年では60%程度を占めていた音楽事業から、映像事業及びマネジメント/ライブ事業の新たな柱を中心とした、事業の転換に成功したことがひとつの要因です。


特に映像事業の成長は著しく、携帯電話専門の動画配信サイトBeeTVやdocomoの定額動画サービスdビデオの成功により2009年度には売上高比率で12%だった映像事業は2013年度には約2倍の25%まで成長していることがわかります。


また、マネジメント/ライブ事業もライブ市場の成長に比例して25%(2009年度)から35%(2013年度)と36%の成長を実現することによって各事業は音楽事業に匹敵する事業の柱に成長しました。



売上高でみると最も大きな音楽事業ですが、営業利益に占める事業別セグメントの割合をみると利益の源泉は、映像事業とマネジメント/ライブ事業の方からもたらされていることがわかります。営業利益率の高い映像事業(営業利益率11.5%)が全体の42% を占め、マネジメント/ライブ事業(営業利益率6.2%)が31%と音楽事業(営業利益率5%)を超えています。


特に2013年度においては、映像事業はサービス拡充のための費用が拡大することで営業利益が前年比で減少(マイナス15億円)する一方、マネジメント/ライブ事業はアリーナクラスの大規模なライブを前年の34公演から75公演と前年比2.2倍の公演に増やすことで+10億円の営業利益が増加したことにより、2013年度は営業利益率の割合が1.7倍も大きく成長しています。



◎海外市場進出に苦戦するエイベックスとアプローチの変化


以上のように停滞する音楽市場にあっても、事業転換を行うことによって国内で大きな成功を達成したエイベックスはその好調な国内市場における業績を基に以前からライブ/マネジメント事業を中心とした海外進出を戦略の一つとして重要視してきました。







2010年度に発表、2014年の達成を目標とした中期経営計画のNEXT ERA 2014において、エイベックスは最も重要視しているアジア市場の戦略を再構築し、その後アジア最大のライブ会社を目標とするなど、海外進出に重点をおいていました。


【参考】「アジア最大の"ライブ会社"を目指す」―エイベックスの驚くべき新戦略


しかし、エイベックスの得意とするマス・メディアを利用し人気を獲得するトップダウン型のプロモーションでは、アジア市場にリーチせずエイベックスのブランド・ネームの浸透は苦戦しており、エイベックスの検索数をアジアの主要国である日本、中国、シンガポール、インドネシア、タイで比較しても、ブランド・ネームの浸透は遅れており海外におけるプレゼンスを高めることには成功していないことが分かります。


また財務面においても2013年度の財務諸表上では海外事業の売上比率は90%未満のため記載されていないことから、海外市場への進出が上手くいっていません。


そんな中、エイベックスは海外市場への進出に対し2つのアプローチを変更しています。


まずは、一点目のアプローチの変化は2013年9月に分散していた海外拠点の集約化し、アジア市場のメイン・ターゲットを中国から東南アジアに変更したことです。エイベックス本体内に国際事業支援室を設立することで海外子会社と連携を強め、台湾以外の拠点を閉鎖し、香港にあった中間持株会社をシンガポールに移管しました。


【参考】PDF:海外子会社・孫会社の再編に関するお知らせ


次に、最も注目すべきアプローチは以下のように海外市場に進出できる人材を採用・育成する中長期的な視点に戦略を変更する挑戦を行っています。(アイドルも育成段階をマネタイズしたサービスとして考えられるため含める)


avex starsearch audition 2014 (世界で活躍できるパフォーマーの採用)

EXILEと共同のNY夢者修行 (NYにおける人材育成)

Cheeky ParadeのNYソロ公演 (アイドルの海外公演)


これは日本で成功したビッグアーティストを海外に輸出し、マス・マーケティングによって海外市場を開拓する戦略とは真逆の戦略をとっており、採用・育成段階から世界を意識したり、海外で人気を得つつある日本のサブカルチャーで注目を浴び始めているアイドルを海外に輸出しようとするボトムアップ型のアプローチです。


近年、欧米の音楽マーケットでも社会的ニーズの変化によりマス・メディアを利用したマス・マーケティングで成功するアーティストよりも、動画サイトやSNSなどを利用し、一定の熱狂的なファン・コミュニティーを起点として世界的な人気を獲得するアーティストが増加していることからも、この戦略の変更は利に適っています。


以上の点を踏まえて、このアプローチについて詳細を述べたいと思いますが、当ブログは女性アイドルがメインテーマのため、アイドルの海外進出について現時点の施策が成功するかどうかについて予測・評価します。


以前ブログ・エントリーで紹介したように、アイドルの海外進出は増加しています。


BABYMETALがレディー・ガガのスターティングアクトとして米国ツアーに参加し海外からの注目を浴びたり、博報堂の社内ベンチャーであるALL BLUE inc.の運営する海外向けアイドルニュースサイトTokyo Girls UpdateがFacebookで60万いいね!を獲得するなど、日本のアイドルに対する海外からの視線は徐々に熱くなっています。


【参考】加速するアイドルの海外進出 その裏に隠された意図とは



◎エイベックスのアイドルによる米国進出は成功するか


その中で、エイベックスに所属するアイドル・グループCheeky Paradeは今年10月にニューヨークのブロードウェイにて初の米国公演を行うことが決定しました。





 Cheeky ParadeはエイベックスのiDOL Streetというアイドル・ファミリーに所属しており、2013年に武道館公演を行ったSUPER☆GiRLSの妹分として2011年から「小生意気で攻撃的な」をコンセプトに活動しています。

 メンバーの9人中8人はSUPER☆GiRLSのオーディションで敗退したメンバーで構成されており、落選組として活動しはじめたにも関わらず、大半がエイベックスの運営するダンススクールであるエイベックス・アーティストアカデミー出身者です。

 その後、落選組としてのスタートに対し悔しさをバネに努力してきたため、現在では1,000グループ存在すると言われる女性アイドルの中にあっても評価の高いパフォーマンス力や、EDMを中心としたライブで盛り上がれる曲、演出、ライブ廻しを基に、現在では着実に姉分のSUPER☆GiRLSの人気に肉薄している注目すべきグループです。



今回は、このCheeky Paradeについてニューヨーク公演を成功させ、海外におけるプレゼンスを高めることが出来るかについて述べます。



2014年までに日本のアイドル・グループの海外進出は増加していますが、これは日本文化が深く浸透している東南アジアやヨーロッパを中心とする一方、米国で単独公演を実現するアイドル・グループは数少なく、BABYMETAL、モーニング娘。、Cheeky Paradeの3グループのみです。(アニメイベントなどの日本文化振興イベントの一環イベントは除外)



アイドルが米国市場で成功するための要因を考えると、以下の3点であると考えます。



① 独自のコンセプトを保有し、分かり易い一貫したコンテンツであること
② 米国内における知名度を有していること
③ 海外に対する適切なマーケティングを実施していること


この各項目について評価を実施します。



① 独自のコンセプトを保有し、分かり易いコンテンツであること



米国人はエンターテイメントにおける消費活動に関しては、日本、ヨーロッパや東南アジアに比べ単純なストーリーや独自かつ明瞭なコンセプトを好む傾向があります。この点を各アイドル・グループで比較した場合、



-BABYMETAL

 彼女たちは、楽曲的側面では、現在では古臭くオタクが聞く音楽と考えられ停滞したヘビーメタルに対して、日本独自のKawaii文化という一見背反するコンセプトを組み合わせることにより、Kawaii×メタルというイノベーションをもたらしました。初のMVをリリースすると日本を超え、伝統的なイメージを大事にしていた海外のヘビーメタルファンに賛否両論をもたらし、その中で徐々に海外ファンを増やしてきました。

 また、グループを構成する人数もMVやライブにおけるビジュアル面で重要であり、3人組という分かり易い構成であることも米国で受け入れられた要因であると考えられます。



-モーニング娘。

彼女たちは結成17年目を迎え、現在の日本のアイドル・グループの源流を形作ったといっても過言ではない歴史あるグループです。その歴史の長さから楽曲的、衣装的バリエーションも豊富で、その豊富やメンバーの入れ替えのシステムが日本のアイドルファンを長くの間飽きさせずに着実な人気を維持してきました。

 2,3年前からアメリカでも人気のEDMを楽曲に取り入れられるなどして楽曲的には米国人にも受け入れられる余地は大きく、ライブ公演で魅せることをメインとして活動し、それが日本や海外で評価されているモーニング娘。のため、ライブ好きな米国人に受け入れられる可能性は高い。

 しかし、長い歴史によって作られたイメージが分かり易い一貫したコンセプトであるかというとそれは否定せざるを得ず、米国人にとっては受け入れやすいとはいえません。

 構成人数も同様に10人組とビジュアル面で複雑であるため、モーニング娘。を知らない米国人に受け入れられる可能性は低いと考えられます。



-Cheeky Parade

 彼女たちは米国人に人気のあるダブステップを中心としたEDMを取り入れており、ライブでの盛り上がりを重視した楽曲とダンススクール出身者による高いパフォーマンスはライブ好きな米国人に受け入れられる余地は高い。

 また、フランスで紹介された「ukigumo」のPV数が7週連続ランキング1位を獲得するなど海外で注目されているヒゲドライバー氏を作曲で重点的に起用し、日本のお家芸の8bitゲーム系の映像演出するなど、海外で人気を得ているでんぱ組.incやきゃりーぱみゅぱみゅとは違う文脈のジャパンカルチャーを志向しているため、独自のコンセプトとして米国人に受け入れられる可能性は高い。

 しかしその一方、人数構成は9人組とビジュアル面で複雑であるため、この点に関しては米国人に受け入れられる可能性は低いと考えられます。



② 米国内における知名度を有していること



この評価項目は①独自のコンセプトを保有し、分かり易い一貫したコンテンツであること及び③海外に対する適切なマーケティングを実施していることの結果論でしかありませんが、単独公演を成功させるためには単純に米国内の知名度や人気があるかどうかが重要