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PTAで「もしドラ」を実践──全てをボランティア制にし父親も参加しやすい活動へ

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毎日新聞記者で嶺町小学校PTO団長(PTA会長)の山本浩資さん(左)、『PTAをけっこうラクにたのしくする本』著者の大塚玲子さん(右)

「なんとか避けて通りたい」。母親たちの間では、長いこと〝不運な事故〟のように扱われてきたPTA活動ですが、最近その魅力に気付いて動き出したのが、地域活動や子どものことに関心をもつお父さんたちです。毎日新聞で社会部の記者をしながら、お子さんが通う小学校のPTA会長を務める山本浩資さんも、そのひとり。さまざまな取り組みにより「みんなが参加しやすいPTA」を実現してきた山本さんに、『PTAをけっこうラクにたのしくする本』(太郎次郎社エディタス)の著者・大塚玲子が、お話をうかがいます。

やりたい人がやるボランティア制へ

大塚:山本さんのPTAでの取り組みは、テレビや新聞で紹介されたりして注目を集めていますが、どんなことをされたんでしょう?

山本:うちのPTAではずっと「子どもが学校にいる6年間のあいだに、必ず一度は係をやる」みたいな不文律があったんですが、これをやめて、やりたい人がボランティア式でやるようにしました。委員会をなくしたので、毎春恒例だった「沈黙の保護者会」 もなくなりましたし、役員が出席する会議数も、ずいぶん少なくなりましたね。

大塚:いま、さらっと「委員会をなくした」とおっしゃいましたけど、そんなこと、できるんですね!?

山本:ええ、以前は6つ委員会があったんですけれど、そのうち3つは廃止にして、続けたほうがいいと判断した3つの活動については、「部活」として残すことにしました。「部活」なら入部や退部はもちろん、兼部もできるし、気に入ったら何年でも続けられるじゃないですか。そのほうが、やりたい人がやりやすくなると思ったんです。

大塚:それはいいですね! お父さんもけっこう参加されてますか?

山本:ええ、役員もいまは半分(11人中5人)が男性ですし、「部活」もお父さんの参加が多いです。「安全防災部」の部長は消防士さんが、「夢マネー部」(リサイクル活動などで活動資金をつくる)の部長は外資系のMBAホルダーのお父さんがやってるんですよ。

大塚:わ、ホンモノ! みなさん、得意分野を活かして活躍されてるんですね。ほかにも、山本さんが取り組まれたことはありますか?

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山本:楽しく活動できるように、ネーミングもくふうしました。たとえば、うちはPTAじゃなくて「PTO」と呼ぶんですけど、最後の「O」は〝応援団〟の「オー」。PT「A」の「え~(いやそう)」をやめて、PT「O」で「おー!(元気な応援風)」にしたんです(笑)。そして、ぼくは「会長」ではなく「団長」。PTAだよりは「ファンファン」っていうんですが、これは「楽しむ」のファンと、「応援する」のファンをかけあわせた名前です(FUN+FAN)。

大塚:いいな~、たのしそうです!

山本:要は、「みんながハッピーなPTA」にしていきたいんですよね。

大塚:拙著『PTAをけっこうラクにたのしくする本』も、まさにそれをめざして書きました。山本さんとは、この本の取材で以前一度お会いしているんですが、そのときうかがいきれなかったお話がまだたくさんあるので、今日はまたいろいろお聞かせいただければと!

山本:どんどん聞いてください!

どうやったら惹き付けられる?

大塚:ではまず、 毎日新聞の記者さんということで、かなりお忙しそうですが、どうやってPTA会長の仕事と両立されてるんですか?

山本:以前は休日など家でずっと寝てたんですが、そこを起きるようにした、というのがまずひとつ(笑)。

あとは、新聞記者って取材の合間に移動の時間なんかもけっこうあるんですよ。そのあいだに、役員のみんなからのメールをチェックしたりできるので、意外と、なんとかなるんですね。
しかもいまは、メールの代わりに「サイボウズLive」というグループウェアでやりとりするようになったので、すごくやりやすくなりました。

大塚:お~、いつから使われてるんですか?

山本:今年の3月、この「サイボウズ式」で、狂言師の和泉元彌さんがPTAの話をされてましたよね。「サイボウズLiveを使ってる」って書かれてたので、あれを読んですぐ、うちも導入してみたんです。
今年度(先月)から本格的に使い始めたんですけど、すごくいいですよ。作業の効率が、5倍くらいあがりました。

大塚:5倍ですか!? わたしが話を盛ってると思われないか心配ですが、ほんとにおっしゃいましたからね。それは、すばらしいです。

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山本さんは、メンバーとの情報共有にグループウェアを活用しはじめた

山本:おかげで、学校に集まる回数もずいぶん減りましたね。今年度に入ってから、そういえば一度もボラセン会議をやってないです。といってもまだ5月だから、2か月しか経っていませんけれど(笑)。

大塚:それでも、すごいですよ。4・5月って、どこのPTAも会議が多いでしょう。ところで、「ボラセン」ってなんですか?

山本:あ、うちでは「役員会」のことを「ボランティア・センター(ボラセン)」って呼んでるんです。「役員会」って、敷居が高い感じがするじゃないですか。それで「いい呼び方はないかな」って考えたところ、ボランティアをしたい人と、ボランティアが必要なところをマッチングさせる部署なんだから、「ボラセン」でいいじゃないかと。

大塚:たしかに! 名前を変えるだけで、ずいぶんイメージが変わりますね。ボラセンなら、やってみたくなります。

山本:「ベルマーク活動」は、「ベルママ」って呼んでます(笑)。一度「この活動はなくそう」って話も出たんですけれど、「やめたくない」って人もいたので、だったら、そういう人を中心に楽しくやればいいじゃないってことで、これも名前を変えました。

最近はもう、ぼくだけじゃなくみんながこういう発想です。いままでのPTAのおカタイやり方じゃなくて、「どうやったらみんなを惹きつけられるか」ってことを、みんなが意識してやってますね。

3.11以降、「人と人とのつながり」の大切さが身にしみた

大塚:話がちょっと遡りますが、山本さんはどんな経緯で会長になられたんですか?

山本:じつは、会長になるまでPTAって全然参加したことがなかったんです。若いころは事件記者で、子どもの幼稚園の行事も行ったことがなく。休みの日は疲れて家で寝てる、みたいな生活でした。

大塚:そういう時期もありますよね。

山本:それが2011年3月11日に震災が起きて、現地に行って取材をしたりするうちに、「人と人のつながり」っていうことの大切さが、すごく身にしみるようになったんです。それまでも、地域のつながりの大切さはわかっていたつもりで、そういうことを記事に書いたりもしていたんですけど、震災のあと、はたと「ぼく自身は、地域にどうかかわってるのかな?」と考えたら、「あれ? かかわってないな」と思ったんですね。

大塚:ええ、ええ。

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山本:それで、自分も地域活動に参加して、地域の一員として何ができるのか知りたいな、と思っていたとき、ちょうど「PTA会長をやらないか」って声をかけてもらったんです。当時、ぼくはBSの番組でキャスターをしていたんですが、それを見ていた推薦委員(PTA役員を推薦する係)の人から、「人の話を聞ける人なので、ぜひやってもらいたい」って言っていただいて。それでお受けしました。

大塚:なるほど、山本さんは震災がきっかけとなって、「地域活動」という視点から、PTA活動を始められたんですね。

山本:そうなんです。ちなみに、大塚さんはどんなきっかけで、PTAの本を書こうと思ったんですか?

大塚:わたしも、震災がきっかけの一つでした。あの原発事故で、「どうして、こういうことになったのかな?」と考えときに、みんながめんどうくさがって、向きあわなきゃいけない問題をほったらかしてきたからじゃないかなって思ったんです。それはもちろん、わたし自身も含めて。そこは自分も改めないとな、と思っていて。

山本:なるほど。それがどうPTAとつながったんでしょう?

大塚:PTAも、同じようなところがあるじゃないですか。みんな「このままじゃダメだ」って思ってるんだけど、向き合うのはめんどうだから、てきとうにやり過ごして、そのまま次の人に引き継がれてしまう。わたしもPTA会員なので、それじゃいけないなって思ってはいたんですけれど、でも、どこから手をつけていいかわからずにいたんですね。

山本:うん、うん。

大塚:そこにちょうど、出版社の方から「PTAの本をつくってみないか」ってお話をいただいたんです。それで、山本さんのようにPTAを実際に変えてきた人たちに取材させてもらえば、これからPTA問題に取り組むわたしたちにも役立つ手がかりをつかめるんじゃないかと思って、やらせてもらうことにしました。

山本:そうでしたか。大塚さんも震災がきっかけのひとつになっていたんですね。あのときを境に、地域やPTAに関心をもつようになった人は、じつはけっこういるのかもしれませんね。

子どもに関心のある父親が増えている

大塚:実際に会長になってみてからは、いかがでしたか?

山本:最初はほんとうに、「なんで、こんなことをずっとやっているんだろう?」って思うことが、たくさんあったんですよ。

たとえば、毎年春にPTA主催の「歓送迎会」っていう催しがあったんです。離着任した先生がたとお話をする会なんですけれど。それについてみんなが「毎年人が集まらないので、なんとかして集めましょう!」って話してるのを聞いて「ん?」と思った。そもそも平日の夕方じゃ、みんな集まりにくいんじゃない?って。

大塚:あぁ、学校やPTAってそういうのが多いですよね。催しをやっても人が集まらないと嘆くけれど、「平日日中」という時間設定に、すでに難があるっていう......。

山本:そうなんですよ。あとは、保護者会でようやく委員が決まったあと、今度は委員長と副委員長がなかなか決まらないから、それを決めるためだけに、委員が全員もう一度学校に集まっていたんです。来ないと欠席裁判で委員長にされちゃうから、みんな仕事を休んだりして、必死で来るんですよ。

大塚:そうなっちゃうんですね......。

山本:ほかにもそういう「なんなんだろう、これは?」っていうのがいろいろあって、「みんな、もうちょっとハッピーにやれないのかな?」ってことを、考えるようになったんです。

大塚:はい、はい。

山本:またその一方で、子どもに関心があるお父さんがすごく増えてるなってことも感じていたんです。学校公開(授業参観)なんか、ぼくらが子どものころには考えられなかったくらい、たくさんお父さんたちが来るんですよね。それで、「このエネルギーを集約すれば、いまよりもっと楽しく、いいPTA活動をできるんじゃないかな?」っていうのも思ったんです。

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大塚:なるほど。現状のPTAのなかでのお母さんたちの煮詰まりを、未活用だったお父さんパワーでもって、ひっくり返せるんじゃないか、みたいな予感があったんですかね。

山本:そうかもしれません。それで「どうやったら、みんなが参加しやすいPTAにできるか?」ってことを考えるようになったんですが、ちょうどそのころ、ブータンの幸福度調査っていうのを仕事で取材していたんですね。それで「これをPTAに応用して、〝PTA幸福度アンケート〟をやってみよう」と思いついたんです。

大塚:おぉ、アンケートっていうのは、いいアイデアですね。

山本:ところが、役員会で提案した途端、もののみごとに反対されまして(苦笑)。「それ、だれが集計するんですか」とか、「そんなアンケートをとって、何になるんですか」とか、だれも賛成してくれなかった。

大塚:あらら。

山本:でもぼくは、みんなの声を聞いてからじゃないとスタートできないと思っていたから、絶対アンケートをやりたかったんです。それで、「どんなふうに伝えたらみんなを巻き込めるのかな~」と考えていたときに、いいことを思いついたんですよ。

大塚:なんですか、気になります。

「もしドラPTA」をやってみた

山本:「そうだ、ドラッカーでいこう!」って思いついたんです。そのとき、たまたま家で子どもたちが「もしドラ」(※)の映画をDVDで観ていて、それをいっしょに観ながら「もしドラPTAだ!」ってひらめいた。ドラッカーの言葉をうまく使えば、みんなをうまく巻き込んで、PTAを変えていけるんじゃないかなって。

※『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』の略。原作は岩崎夏海著・ダイヤモンド社。

大塚:発想がユニークですね(笑)。

山本:それでさっそくみんなに「PTAにとっての〝顧客〟のニーズを知るために、アンケートでマーケティングをしよう」っていうふうに、話したんです。

大塚:なるほど。ただ「アンケートをやろう」じゃなくて、「マーケティングをやろう」って言ったほうが、「それは必要だね」って納得してもらいやすそうですね。それで、アンケートはやれたんですか?

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山本:ええ。しかも、回収率が96%だったんです。これはふだん学校がとるアンケートと比べると、格段に高い数字なんですよ。欄外の書き込みもすごく多くて、なかにはべつの用紙をつけて書いてくれた人もいました。「それだけみんな、PTAに対して言いたいことがあったんだなー」って思いました。

大塚:やった甲斐がありましたね。アンケート結果からは、どんなことが見えてきましたか?

山本:いちばん大きかったのは、「活動時間の問題」がはっきりしたことです。昔はPTAって専業主婦の方が中心でしたよね。でもアンケートをとってみたら、いまは「フルタイム勤務の人/パート勤務の人/専業主婦の人」の割合が3:3:3で、ほぼ同じだったんです。活動できる時間帯も、みなさん、バラバラでした。

「これじゃ、みんなが時間を合わせて活動するのは、なかなか難しいよね」っていう認識を役員会のなかで共有できたので、「じゃぁ、いまの状態をどうやって変えていけばいいのか?」っていうことを、みんなで考えられるようになっていきました。

大塚:そこから、PTAがだんだん変わり始めたんですね。

後編に続く

撮影:谷川真紀子、編集:渡辺清美、文:大塚玲子

(2014年6月3日のサイボウズ式 「PTAで「もしドラ」を実践──全てをボランティア制にし父親も参加しやすい活動へ」より転載)

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