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サイボウズ式:[往復書簡] 田原総一朗から津田大介さんへ。これからのジャーナリズムの居場所はどこにある?

2015年08月30日 00時40分 JST | 更新 2016年08月26日 18時12分 JST

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インターネットが生んだジャーナリスト、津田大介さん(41)。早稲田大学在学中からIT関連のライターを始め、1999年に有限会社ネオローグを設立。音楽業界の動向を追ったブログを皮切りに、2003年よりジャーナリストとして活動する。2011年より有料メルマガ「メディアの現場」を配信、2013年には政治メディア「ポリタス」を立ち上げ、社会を読み解くための視点と深く知るための論点を投げかけている。絶妙なバランス感覚で、インターネットを主戦場に世の中に問いかけるジャーナリストだ。

Twitterにメルマガ、Webメディア......新興メディアを開拓して居場所をつくり、新聞、テレビ、ラジオといった既存のメディアでも物申す。あらゆるメディアを手段として駆使し、変化し続ける"メディア人"の代表とも言える。

ジャーナリストの田原総一朗さんは、自分が築いてきた「メディアの解放区」を津田さんにつくってほしいと期待する。インターネットを舞台にこれからのジャーナリズムを模索し続ける津田大介さんに、テレビを中心にジャーナリズムの歴史を築いてきた田原総一朗さんが迫る―――。

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※メディアの第一線で活躍する「これまで歴史を築いてきた人」と「これからの時代をつくっていく人」。その過去、現在、未来を探る、Web時代のチャットのような往復書簡を、現代ビジネスとサイボウズ式の2つのメディアでお届けします。津田大介より田原総一朗さんへ「"メディアの解放区"はどうやって作ればいいんですか?」。

変わらないメディアの役割と変わるメディア環境

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田原:メディアは媒介であるということは昔から変わらないけれど、体質は大きく変化したよね。テレビや新聞からWebメディアへといった手段の話ではなく、誰でも発信できるようになったことが大きい。

いままでは、情報を発信できるのは、一部の限られたマスコミと言われるメディアのなかの人だったのが、今ではTwitterでも新聞でもテレビであっても、誰でも情報発信ができるようになった。津田さんはまさに、インターネットから誕生したジャーナリストだよね。

津田:確かに、僕はもともと政治・経済のジャーナリストではなく、パソコンやインターネットをテーマとする雑誌のライターから始まりました。雑誌ライターの時代は、個人の意見を書くことはなく、雑誌側からも求められていない。つまり、ジャーナリストではなかった。

でも、自分の主戦場だった雑誌がどんどん休刊しているのを目の当たりにして、だったら自分の意見も世の中に問いかけたいなと思い、ブログを始めて、インターネット時代の音楽業界の変化など、自分の意見や分析を綴りました。それがきっかけで2004 年に初の単著『だれが「音楽」を殺すのか?』を刊行することになり、その本がIT系のジャーナリストとして、僕の名刺代わりになったんです。

2009年に『Twitter社会論 ~新たなリアルタイム・ウェブの潮流』を出してからはソーシャルメディアの専門家のような位置づけになりました。いまはラジオにも出演していますが、「しゃべる仕事」も、もともとはネットラジオから始まっているんです。その意味で、僕はインターネットがあったから、今、ジャーナリストとしての活動ができているんですね。

僕みたいなキャリアは特殊かもしれないけれど、田原さんが言うように誰でも発信できる時代だからこそ、もっとたくさん面白い人が出てきてもいい、と思っています。

これからの期待するメディア人

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田原:僕が最近注目している若手で言うと、青木理は面白いね。彼は共同通信の社会部で記者として経験を積んでいるから実績が伴っていて、主張が空理空論じゃない。津田さんはどう?

津田:田原さんもおっしゃっていましたが、慎泰俊(五常・アンド・カンパニー/NPO Living in peace)とか、駒崎弘樹(NPOフローレンス)とか、政治に対して対案を示せるのは、行動する若手の社会起業家かもしれないですね。

2人ともネットを使って、情報発信をどんどんしていますし。憲法学者の木村草太さんのように、アカデミズムを応用して政治に対して行動を促すような言論を行う若手も出てきています。

インターネットによってチャンスが増えたという意味ではもっとネットから面白い人材が出てきてほしい、と思っているんですが、社会起業家などはたくさん出てきているけど、「独立したメディア人」というと途端に少なくなる。僕ら以下の世代で見て、様々な方面で影響力を持てているのは荻上チキさんや宇野常寛さんくらいですよね。

昔は、世の中に影響を与えるジャーナリズムの担い手は、新聞社やテレビ局の記者や学者だけだったけれど、インターネットによってメディア人の範疇が変わってきましたよね。その意味でもっとこれから面白い"メディア人"が出てくることに期待しています

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田原:今回の安保法制のデモでは「SEALDs」という学生団体のインパクトが大きかった。政治やメディアが若い人たちにも近くなってきていると感じるね。

津田:朝生に「SEALDs」のメンバーを出しても面白いかもしれませんね。安倍首相がロマンチストであればあるほど、こういった若者や市民が盛り上がってきますよね。現実が変わろうとしているなかで、メディアも変わっていかないと置いていかれます。

その意味で、新聞社やテレビにいる面白い人たちがフリーランスになってどんどん意見を言ってほしい。組織の縛りもあってなかなかモノを言えない現状があるので。

経験を積んだ人たちが田原さんのようにフリーランスになってくれたほうが、僕たち若い世代もそういう人たちとチームを組みやすくなる。でも現実はなかなか変わらない。なぜだと思いますか。

田原:組織っていうのは難しいね。原因のひとつはテレビ側にあると思う。テレビのワイドショーでコメンテーターは専門家ではなく、お笑い芸人やタレントが出ている。専門家は本当のことを言うから怖い、と当たり障りのないことをいうお笑いタレントを採用しているのでしょう。僕が出演する番組では、きちんとモノが言える人たちをパネリストとして呼ぶ。そして彼らの本音を聞き出す。

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津田:新聞社からフリーランスになった人が一番困るのは、データベースだと思うんです。取材で調べものをするときに、新聞社にいれば膨大な資料を検索できる。でも、なぜか日本は組織を出た人は会社の悪口を言い、会社はフリーランスになった人に冷たい。

OBが会社にいけるようなシステムにして、資料は自由に使えるけれど、スクープを飛ばしたらその媒体にも掲載する、というような取材リソースファンドのような仕組みがあったら面白いと思いますね。

スキャンダルが少なくなったのはなぜ?

田原:週刊誌はスキャンダルジャーナリズムだと思うんだけど、なんで最近スキャンダルが減っているんだと思う? ネットだとなかなか張り込みしてスキャンダルをとることはなかなか難しいじゃない。

津田:一つは訴訟リスクですよね。ここ20年くらいで、名誉棄損訴訟における賠償金額は10倍に上がっていますから。アメリカは訴訟の金額は高いですが、一般人は別として、政治家や官僚といった訴える側が無実を証明しなければいけないんです。

「SLAPP(恫喝的訴訟)」と言われているんですが、州によっては恫喝的な訴訟に対する法律があるんです。日本はただ損害賠償の金額だけがあがるので、出版社側も訴訟リスクを恐れてしまう、という側面があると思います。

メディアやジャーナリズムの考え方がアメリカと日本では違う一つの例ですね。

複雑化する世の中で感じる、伝えることの難しさ

田原:2015年の5月放送の「朝生」を「激論!"沖縄基地問題"と日本」と題して沖縄で収録したんだけど、沖縄の問題の難しさを感じたね。

ひどいと思ったのは、本土の人間は沖縄に興味がないから視聴率が上がらない。辺野古基地の問題をテーマにしたけれど、本土の人は関係ないと思っているし、沖縄の人も意外に本土や政府に対する文句を口にしない。

津田さんはポリタスで「沖縄・辺野古――わたしたちと米軍基地問題」をテーマに沖縄を追っているけれど、伝えることの難しさを感じない?

津田:それはすごく感じています。現代は世界がすごく複雑化していますよね。例えば、政治に関して昔は右翼と左翼の対立構造が明確でした。単純明快な区切りができない現代だからこそ、「朝生」のような結論の出ない討論メディアの重要性が高まっていると思います。複雑な問題をどうやって伝えていけばいいのか。沖縄の問題は伝えることが非常に難しいです。

沖縄は琉球新聞と沖縄タイムスという圧倒的に強い新聞の存在があるので、メディアの影響も大きいと思います。メディアによって沖縄の強いナショナリズムがつくられる。例えば、琉球王国のなかでも、沖縄本島と離島における差別意識のようなものも存在するわけで。

沖縄が直面している問題を紐解いていくと、本土が押しつけている問題だけでなく、沖縄の利権構造など沖縄固有の環境的要因に行き当たる。しかし、その環境はどうして作られたのかといえば、そもそも日本国から侵略されて支配され、捨て石にされてきたことが原因であるから、そのことを指摘すると沖縄の人の怒りも倍増するという......。

この複雑さを複雑なまま本土の人間が理解することが大事だと思いますし、そのためにはまず本土の人間が一人でも多くこの問題に興味を持つべきではないかと思います。

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これからのジャーナリズムの居場所は?

田原:インターネットには情報が氾濫していて、それが本物か偽物かがわからないよね。ネットの世界では、何が正しい情報かは関係ないのかもしれないね。

津田:ポリタスで「沖縄都知事選」の特集をしたときに、沖縄の方から、魂が込もった原稿がたくさん届いたんです。なかには2万字を超える原稿もありましたが、離脱率も低く、読まれるものはWeb上でもちゃんと読まれるんですね。

「ネットではライトなものしか読まれない」なんて言われますが、そんなことはないということが自分でやってわかったのは良かったです。

田原:そういう意味では、まだまだインターネット、そしてメディアにはいろんなチャンスがあるね。ジャーナリズムをやるためにはお金がいる。でもそんなの自分でひっぱってくればいい話だからね。

津田:自分のキャリアを振り返ってみても、インターネットの登場とスマートフォンの普及によって、その環境は圧倒的に変わりましたし、これからも変わるでしょう。

僕はもともと、政治メディア「ポリタス」を立ち上げる費用を捻出するために、有料メルマガを始めました。そこに限らずきちんとマネタイズしたうえで、田原さんのいう「メディアの解放区」となるようなジャーナリズムの居場所を探っていきたいと思います。これからもいろいろ教えてください。

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(文・徳瑠里香/写真・岡村隆広)

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本記事は、2015年8月6日のサイボウズ式掲載記事「[往復書簡] 田原総一朗から津田大介さんへ。これからのジャーナリズムの居場所はどこにある?」より転載しました。