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障害者の通所施設で口腔ケア 歯科衛生士との連携で大幅改善

2015年07月10日 00時40分 JST | 更新 2016年07月06日 18時12分 JST

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ビバラックを使い口腔清掃をする職員

 横浜市神奈川区の重度重複障害者通所施設「若草」(矢口達也施設長)は、口腔清掃用機器や個々の利用者に適した歯ブラシを使い、毎日30分間の口腔ケアを行っている。歯科衛生士などと連携することで利用者の口腔状態は大幅に改善。「通所施設ならではの専門性」と家族などから高い評価を受けている。

 社会福祉法人和枝福祉会(桜井和典理事長)が1999年に開所した若草は、身体と知的の障害を併せ持つ利用者に日常生活動作の訓練や入浴、音楽・創作などの活動の場を提供すると共に、さまざまな体験を通して社会活動への参加をサポート。現在60人と契約しており、毎日約40人が5班(部屋)に分かれ過ごしている。

 口腔ケアのきっかけは、重度重複障害者への支援の一つに健康維持があり、そのためには口腔ケアが欠かせないと考え、開所準備中に区歯科医師会に協力依頼したこと。和枝福祉会はそれまで知的障害者施設を運営していたが、重度重複障害者への支援は初めてで口腔ケアのノウハウも持っていなかった。

 知識も技術もないところから始まった口腔ケアは、毎週1回派遣される歯科医師や歯科衛生士の協力を受け、個々の利用者に適した歯磨き方法を模索するところからスタートした。

 

 障害の程度や動きの早さ、口腔状態などが一人ひとり違うため、個々に合った方法を見つけるまでは苦労の連続。職員が磨き方を考え試しては、歯科衛生士からアドバイスを受けることの繰り返し。歯ブラシが本人に合っていない場合などは、家族に伝え歯ブラシを変えてもらうなど協力してもらった。

 口腔ケアを始め1年後には、歯科医師会の勧めで㈱東京技研の介護用口腔清掃用具「ビバラック」を借りて使うことになった。ビバラックは自分で歯磨きやうがいができない人の口腔清掃を安全・簡単にできる機器。少量の水を注いで歯を磨きやすくしつつ、水を吸引するので誤嚥のリスクなく歯磨きできる。

 しかし、注水タンクに水を入れたり、利用者の近くに持って行ったりとセッティングが必要。「誤嚥のリスクのある人に使ってみたが、操作に慣れるまでには相当の時間が掛かった」と指導主任の伊藤健さんは振り返る。

■利用者・家族に変化

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利用者ごとに磨き方を変える

 口腔ケアを始めて16年。歯科衛生士などとの連携で培ったノウハウは、重度重複障害者通所施設としての専門性を向上させた。昼食後30分間行われる口腔ケアの時間は、利用者の健康維持の場、家庭での歯磨きを補完する場として各種ケアの中でも高い優先順位になった。

 そんな若草の口腔ケアはさまざまなノウハウに満ちている。例えば、歯磨き時間は利用者のペースに合わせ1人当たり10分程度かける。歯ブラシも口腔内の状況に合わせ「360度歯ブラシ」など個々に適したものを使い分け、誤嚥のリスクの高い人にはビバラックを使っている。

 また、感染症予防を考慮し、職員は不織布マスクと使い捨て手袋を着用。ゴムアレルギーのある人には他の素材でできた手袋をするなどの配慮も忘れない。

 職員が代わっても歯磨き方法が変わらないよう各班の先輩が新人に教えたり、年1回歯科医師・衛生士による講習会を開いたりするなど意識や技術の向上にも努めている。

 そうした工夫や職員の努力もあり、利用者や家族に変化が出てきているという。開所当初は家庭で歯磨きができない利用者が多く、舌苔で舌が真白な人もいたが、今では皆無になった。利用者の口腔状態は大幅に改善し、歯科衛生士などが「若草に通い始めてから口腔内がきれいになった」と驚くほどだという。

 家族の意識も変わり、「歯ブラシを換えてほしい」「歯石を取るために歯医者さんに行ってほしい」などと伝えればすぐ対応してくれるようになった。

 「口腔ケアには歯科でなければできないこと、家庭で日々行うことがある。通所施設としての支援の範囲を考えなければいけない」と話す矢口施設長。家族に口腔状態を伝えたり、適した歯ブラシを提案したり、歯科に行くよう伝えたり、家庭では行き届かないケアを補うなど通所施設ならではの役割を果たしたいという。

 試行錯誤を繰り返し培った若草の口腔ケア。専門性に満ちた取り組みは、重度重複障害者通所施設の機能として普及されるべきだろう。

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