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ユニクロがかかえるジレンマ

2013年10月11日 23時26分 JST | 更新 2013年12月11日 19時12分 JST

ファーストリテイリングが2013年8月期連結決算で、売上高が前期比23.1%増の1兆1430億円となったことを正式に発表しました。日本の衣料品業界では初めての1兆円超えです。ただこれはすでに折り込み済みで、ファーストリテイリングはおそらく世界第四位のグローバルなアパレル企業となることを以前にも取り上げました。そうなると関心の的は、今後のユニクロの成長戦略になってきます。

ユニクロ絶好調 :

海外の伸びは著しいのですが、好調ななかでも、国内ユニクロ事業の営業利益が前期比5.4%減の968億円で、減益は3期連続となったことに焦点があたってきます。ファーストリテイリングも14年8月期計画のなかで、国内ユニクロ事業で、客単価の引き上げを図り増収増益を目指すということです。

ここで考えなければならないのは、ユニクロのビジネスの独自性、またユニクロの強みとなっているポジショニングの問題と、客単価を引き上げるための政策がはたして一致できるのかどうかです。どちらを優先するのでしょう。

ユニクロのポジションは独特です。「おしゃれで機能的な実用ファッション」を売るビジネスです。いってみれば本来はイオンやヨーカドーが狙うべきところをユニクロが抑えたという感じでしょうか。

しかし他のアパレル企業のビジネスは違います。典型的にはH&Mですが、こちらは「最新のトレンドを手軽に買えて楽しめる」トレンド消費の需要をとらえたビジネスです。国内の多くの製造と小売を一体化させたSPAも「トレンドを売る」ことでは同じです。

このふたつのビジネスは仕組みが全く違っています。トレンドを売ろうとすると、1週間とか2週間でがらっと商品を変えてしまうといったスピード勝負になってきます。移ろいやすい消費者の嗜好や他の人と違った個性的なファッションを楽しみたいというニーズにも応えなければなりません。売れ筋トレンドを掴み、それを商品企画にフィードバックさせ、素早く打ち出していく仕組みが求められます。超高回転で変化を創りだす多品種少量生産のビジネスです。だから同じファッションを着ている人と遭遇する可能性は低くなります。

一方のユニクロは、機能での優位性や価格での優位性をつくるために、大量の原反を買い付け、計画生産で規模のメリットを追求しているビジネスです。しかしいくら実用性や機能性が特徴だといっても、ファッションである限り、消費者の嗜好傾向を完全に予測することは不可能です。

だから消費者の嗜好と外れて、売れないアイテムもでてきて、それを捌くためには値引きセールも余儀なくされてきます。これはユニクロのビジネスが抱える必然的な問題です。それが結果として客単価を下げます。

しかしそういったセールを実施することが、現在は客数を伸ばし、結果としては売上もあげているという状況です。トレンドだけでなく実用性や機能性の魅力もあるので、安ければそれでいいという消費者もたくさんいるということでしょう。アベノミクスでデフレ脱却といっても、所得が伸びたわけでもなく、輸入物価の高騰以外には消費市場には波及していないので、客単価が下がっても売上をあげたことは市場対応ができたとみなすべきではないでしょうか。

売上を上げようとすると客単価が下がるという問題を解決するには、よほどの商品構成での工夫を凝らすか、普通では想定できないような仕組みの革新がない限り難しいのではないか、下手に商品価格を上げると、マクドナルドのように客数を減らし、結果として売上を落としてしまうリスクもでてきます。

それはユニクロが本質的に抱えているジレンマです。

国内ユニクロ事業は「価格訴求型から、商品の素材の良さや機能性を伝えるマーケティングにシフトするとともに、機能性素材を生かした新しい普段着の着こなしを提案することで客単価を上げる」、また「ロードサイドのイメージを払しょくすべく、銀座店、ビックロに続き、来春、池袋、上野にグローバル繁盛店をオープンし、ブランドイメージを向上させたい」ということのようですが、それらが、消費者が期待していない、企業側の「ないものねだり」に終わった場合は厳しい結果が待っていそうで、舵取りが難しそうです。

ファーストリテイリングが売上高1兆円を突破、今後の拡大戦略は!? | SALES | BUSINESS | WWD JAPAN.COM :

低価格を売り物にしたジーユーの事業が既存店売上高が引き続き2ケタ伸び、対前期比で144%と高成長を達成していることを見ると、消費者の価格志向傾向はまだまだ根強いと思われるだけにはたして狙い通りにいくのかどうかが注目されるところです。

それよりも、大切なことは、ユニクロの成長戦略のエンジンは海外です。2013年8月決算の事業セグメント別の業績を見ると、国内ユニクロ事業は、前期比で売上高が10.2%で、営業損益で5.4%落としたのですが、海外ユニクロ事業は売上が64.0%増、営業損益も66.8%増です。この結果の差を見れば、海外ではユニクロと同じポジションをもった強い競争相手がおらず、いってみれば更地を切り開いていっている状態なのでしょう。

もちろん足元が崩れると海外事業も怪しくなるかもしれませんが、伸びているところに資源を投入するというビジネスの原則から言えば、海外事業を伸ばすことと、消費者の価格志向にあわせていくことがユニクロの成長戦略の要になってくるのではないでしょうか。

(この記事は2013年10月11日の「大西 宏のマーケティング・エッセンス」からの転載です)