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増える乳がん・子宮頸がんを防げ 超党派議連1周年

2016年03月07日 22時58分 JST | 更新 2017年03月08日 19時12分 JST

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<「乳がん・子宮頸がん検診促進議員連盟」設立1周年記念講演会 議連会長野田聖子衆議院議員 ©安倍宏行>

日本の婦人科がん検診の受診率は、乳がん、子宮頸がん、共に40%程度と非常に低く、他の先進国に比べ半分のレベルにとどまっている。また、子宮頸がんの発症率は20代~30代に増えており、特に30代前半がピークとなっていることはあまり知られていない。

こうした中、2015年3月4日に将来の乳がん・子宮頸がん検診のあり方を考えるべく、超党派の国会議員連盟「乳がん・子宮頸がん検診促進議員連盟」が発足した。それから1年、3月2日に議連設立1周年記念講演会が東京千代田区の参議院議員会館にて開催された。

婦人科系疾患の予防啓発活動を行っている一般社団法人シンクパール代表理事の難波美智代氏は、がん検診の受診は市区町村により差がみられることを指摘。個別受診勧奨を行っている市区町村は全体の49%しかないこと、また、未受診者への再勧奨を行っているところは全体の6%しかないことを明らかにした。

又、シンクパールと女性の健康情報サイト「ルナルナ」が12歳から52歳の女性を対象に2月に行った共同意識調査(有効回答数8132件)によると、子宮頸がんを「名前だけ知っている」人が全体の61.3%に上り、病気についての理解が不十分であることが分かった。又、子宮頸がんの原因を「まったく知らない」人は19.2%で、「あまり知らない」人47.9%を加えると、67.1%にも上ることも明らかになった。

子宮頸がんの予防方法について聞いてみても、「知っている」との回答は31%に止まり、具体的な予防法については、「ワクチン」と答えた人が80.6%、「子宮頸がん検診」が15.8%いたものの、「避妊」と答えた人が20.6%いた。子宮頸がんはHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が原因だが、その理解が進んでいないことが浮き彫りになった。

こうした現状を踏まえ、難波氏は、職場での検診受診を促進させる環境整備と、女性のライフスタイルに寄り添った検診が必要との考えを強調し、これらが2年目の課題であるとした。

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<写真上:移動検診車、下:検診車内の内診台 ©安倍宏行>

一方、認定NPO法人乳房健康研究会が、2015年6月に全国20歳から69歳の女性を対象にネットで行った乳がん検診に関する調査(サンプル数1455票)によると、乳がん検診(マンモグラフィまたは超音波検査)を受けている人の割合は40歳以上で42%に止まり、受診しない理由の1位は「費用が高いから」、2位が「痛いから(痛いらしい)」、3位が「機会がない」となっている。受診の重要性を啓発し、環境を整えていく必要があることがわかる。その為に同研究会は「ピンクリボンアドバイザー制度」を2013年に立ち上げた。

日本医療政策機構による「働く女性の健康増進調査」(2016)によると、婦人科系疾患を抱える働く女性の年間医療費支出と生産性損失の合計が6.37兆円に上ることが明らかになった。機構は、婦人科や検診受診率の向上と、教育・普及啓発の充実、健康経営(注1)の促進の3つを今後の課題として挙げた。

今回、会場となった参議院議員会館には乳がんと子宮頸がんの検診車各1台が用意され、国会議員とその秘書ら30名近くが検診を受けた。

議員連盟の代表である野田聖子議員は「女性の活躍という言葉が躍っているが、活躍以前に女性の健康だ。(移動検診車による検診は)毎年やればもっと受診に来てくれるようになる。(議員や秘書だけでなく)国会に勤めている人なども受診すればよい。」と述べ、移動式検診車によって検診を受ける人が増えることに期待を寄せた。

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<検診車内の乳房X線撮影装置(マンモグラフィ装置) ©安倍宏行>

議連では「乳がん・子宮頸がん検診に関する意識調査」を行ったが、有効回答率は712名中59名(男性33名 女性26名)、「議員自身、もしくはご家族が定期的に乳がん・子宮頸がん検診を受けているか?」との質問に27%が「いいえ」と答えた他、「日本の検診受診率が先進国最低レベルの約4割だと知っていたか?」との質問に「いいえ」との回答が19%あったことなどを見ると、議員の間でもまだ理解が不十分であることがわかる。

議連の副会長 伊東信久議員は、回答者から、学校教育で啓発カリキュラムを設ける、生活スタイルに即して土日や仕事帰りに検診が可能な医療機関を増やす、受診インセンティブの導入を検討する、などの意見が出たという。

多くの議員が関心を持ち、超党派の議連が出来たことは評価に値するが、子宮頸がんワクチンについては広く世界各国で接種されているにもかかわらず、日本ではワクチンによる副反応問題を大きくメディアが取り上げたこともあり、厚労省は2013年から積極的な勧奨を見合わせている。その結果、現在、接種率はほとんどゼロに近いレベルにまで下がっている。

こうした現状に対し2015年12月17日に出されたWHO(世界保健機構)の「ワクチンの安全性に関する諮問委員会」による「HPVワクチンの安全性に関する声明」は、「(ワクチン接種を再開しないことで日本の)若い女性が本来防ぐことが出来るHPVによるがんになりやすい状況に置かれている。当委員会が既に指摘している通り、弱いエビデンスに基づく政策決定により安全で有効なワクチンが使用されなければ、実質的な被害が起こるであろう」と指摘している。(注2)

WHOに言われるまでもなく、このまま事態を放置しておけば女性の健康に重大な影響が出る可能性がある。女性の活躍は健康がベースとなるものだ。政官民が一体となり、低い検診受診率や子宮頸がんワクチンに対する理解を深めることが急務となっている。

(注1)健康経営

従業員の健康管理を経営的視点から戦略的に実践することにより、企業価値を高めていこうとするもの。(健康経営研究会HPより)

(注2)Global Advisory Committee on Vaccine safetyStatement on Safety of HPV vaccines 17 December 2015

WHO(世界保健機構)「ワクチンの安全性に関する諮問委員会」による「HPVワクチンの安全性に関する声明」の一部

"As a result, young women are being left vulnerable to HPV-related cancers that otherwise could be prevented. As GACVS has noted previously, policy decisions based on weak evidence, leading to lack of use of safe and effective vaccines, can result in real harm."

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乳がんを克服したミュージシャンたち