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「iemo」の村田マリさん、大企業に買収されて窮屈じゃないんですか?

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2014年のIT業界のホットなトピックの1つに、DeNAが住まいのキュレーションメディア『iemo』と女性向けファッションのキュレーションメディア『MERY』を、合計約50億円で買収したことがあげられる。同ニュースはDeNAのキュレーションメディアという領域への期待値の高さを伺わせた。

iemo株式会社で代表取締役CEOを務めていた村田マリ氏は、買収と同時にDeNAの執行役員に就任した。同氏はいくつかのメディアで、大企業の執行役員となった今回の人事を「経験したことのない挑戦」と語っていた。それからおよそ4カ月。執行役員として村田氏はどのように事業と向き合い、何を自分の課題と感じているのだろうか。また『iemo』が大企業の1部門になったことで、事業の運営にどのような変化が生じたのか。

女性として、シリアルアントレプレナーとして、様々な岐路で選択に向き合ってきた村田氏が、これまでのキャリアの選択と決断を振り返りながら、2015年の個人と『iemo』のチャレンジについて語ってくれた。

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村田マリ氏。1978年岐阜県生まれ。岐阜、千葉、東京、名古屋で育つ。早稲田大学文学部を卒業後、サイバーエージェント株式会社に入社し、6つの新規事業開発に参画。2005年3月コントロールプラス株式会社を設立し、ウェブ制作事業を開始。2009年にソーシャルゲームへと事業転換を成功させ、2012年にgumiに売却後、シンガポールに移住。2013年12月にiemo株式会社を設立。家と暮らしのオンライン・メディア「iemo」をオープンし、2014年10月にDeNAに売却。現在、DeNAの執行役員として働いている。


「私が世の中に一番インパクトを与えられるのはWebサービス」

― 新卒でサイバーエージェントに就職。26歳で起業。2度の売却を経て現在DeNA執行役員に就任された村田さん。誰が見ても成功と思えるような人生ですが、今までどのように人生設計されてきたのですか?

「刻一刻と状況が変化するベンチャー畑で育ったこともあって、実は、長期のプランで人生設計を決めたことはないんですよね。現在では経営の分野に特化して働いていますが、女性としてのライフイベントがある中でも仕事をできるだけ継続させるために、合理的なプランを都度考えて選択してきたという感じです。ただ、『今、世の中にある選択肢から選ばなくてはならない』とは考えなかったですね。今ある選択肢の中に最適なものがなかった場合、自分が一番心地よくて、フィットする選択肢を作っていけばいいと思っていました。たとえば、起業と子育ての両立を考えて、シンガポールに移住して子育てをしながら事業をまわしてみたり、その中で『iemo』を遠隔でサービス開発したこともそうです」

― 自分で最良の選択を作ってしまうことですね。そんな村田さんが大切にしている人生や事業の判断軸を3つ教えてください。

「1つ目は『創作活動をし続けること』。2つ目は『自然体』。3つ目は『インプット』です。

そもそも私はクリエイターや職人に近い人間だと自認しています。つまり"キャリアウーマン"や"社長になりたい!"みたいなタイプではないんですよね。大学時代にパソコンを購入して、趣味でコミュニティサイトを作ってみたら、人がどんどんサイトに来るようになって、そのうちにそのコミュニティ内でイベントを始めて...。という活動がこの業界に入ったきっかけでした。単純にWebサービスで表現すること自体が好きだったんですよね。次第に興味やできることの領域が広がっていって、今も大学時代にコミュニティサイトを立ち上げた頃の延長線上にいるという状況です。極端な話、やっていることが市場に結びついてなくても、何かしらは作り続けていたとは思います。そういう意味において、創作活動であるサービスを作り続けるということが1つ目の軸になります。

2つ目の『自然体』というのは、何か壁にぶち当たったときに、その状況に抗わないということです。たとえば川の流れと逆に向かっていったり、立ち止まろうとすると体力を使ってしまいます。そんなときは、川に流されながらその中で一番心地よいところがどこなのかを探していくことが大切だと思っています。

3つ目の『インプット』については1つ目の軸と重なりますが、創作活動でアウトプットし続けるためには、それ相応のインプットがないとできないので、常に意識を高く持っています。絵を書くとか、歌を歌うとか、写真を撮るなどいろいろな創作活動がありますが、私が社会に一番インパクトを与えられる創作活動は、Webサービスを作ることだと思っています」


妊娠・出産などのライフイベントと仕事を両立させるには、緩急を意識したビジネス設計が必要

― 先ほど、「仕事をできるだけ継続できるための選択をしてきた」とおっしゃっていましたが、村田さんが以前に「2年に一度起業売却すると、子育てと仕事を両立できる」と発言されていたのを聞いたことがあります。その言葉の意味をあらためて教えていただけますか?

「女性はどうしても仕事への取り組み方に対して緩急がついてしまうもの。妊娠、出産、育児と物理的に休む必要が出てくる。しかも子どもを1人じゃなくて数人産むとすれば、休まなくてはいけない期間が続いてしまうし、だからといって高齢出産したり、プライベートを諦めるというのはどうなのかとも思うわけです。緩急の"緩"の部分で自分の事業を買収していただくことで、今までは自分しかできなかったことが、大企業の力を借りて代替できるんですね」

― 先日、HRナビの記事で、メルカリ山田さんが「サービスを絶対自分の手から離さない」と話していましたが、それについてはどう考えますか?

「山田さんは男性だからキャリアのスピードを緩めることは計算に入れてないはずです。年齢的に徹夜ができないというような物理的なハードルを除いて、経験値で考えれば男性のキャリアはずっと右肩上がりなんですよ。しかし女性はそうではない。だからそこの違いを意識して、男性のような長距離走的な発想ではなく、短距離走のようにあるタームを決めて仕事を頑張る。1タームが終わったらガツンとプライベートを入れる。そしてまた短距離走のようなスピード感で仕事を頑張る。そうやって緩急をつけながら働くことが、女性が仕事で右肩上がりの成長を諦めない働き方だと思いますし、そういう働き方ができるシリアルアントレプレナーは女性と親和性があると思っているということです」

― つまり村田さんのような働き方は、世の働く女性にとって、再現性があるとお考えということですね。

「どんな人でもとまでは言い切れませんが、『緩急をつける働き方』は再現性が高いと思います。多くの在宅やクラウドソーシングで仕事を受注している人が、自身の生活に応じて仕事の量を調整できるように、企業に務める女性も同様に緩急をつけられる仕組みが整っていくように思います」

― 妊娠・出産など、コントロールできないライフイベントが発生する女性がキャリアを重ねていく上で、意識しておくといいことはありますか?

「凡庸な回答になってしまいますが、汎用性の高いスキルを20代のうちにつけておくといいんじゃないかと思いますね。キャリアとプライベートとの両立をしたくても『どちらかを諦めなくてはいけないのかな?』と葛藤する女性は多いと思いますが、若いうちにそこの設計をしておくことで、妊娠がよりうれしいものになりやすいと思います」

― 20代で業務のスキルを身につけておくと人生の選択肢が増えますものね。村田さんの場合は、そこに事業売却が加わるので特殊になるわけですが、事業売却のタイミングも計画していたんですか?

「まさか! 買い手がいるかいないかは相手がいることですから、思い通りのタイミングにするのは難しいですよ(笑)。ただ、ビジネス全体のトレンドを読むことはできます。キュレーション事業は2014年、1つの山場を迎えると想定していたので、そこで買収も生まれるかな、とは考えていました。2013年の『iemo』の忘年会で、『2014年はどこか大きい企業に買収されると思います!』みたいな宣言はしていたみたいなんですよ」


大企業のリソースを使って、緩急のある事業戦略を実践する

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― 確かに2014年は『iemo』はもちろん、いくつかのキュレーションメディアが台頭した年に感じます。その中で、事業をDeNAに売却したというのは、何か決定打があってのことでしょうか?

「事業の成長ドライブをかけることができるどうかの1点のみですね。よく『買収されると、自分のものではなくなる』とか『自信があるなら、会社を大きくしたらいいよ』『IPOしたら、今よりお金を稼げるよ』と言われたりもします。でも、それよりは会社の力を利用して、サービスを早くたくさんの人に使ってもらいたい。サービスを広げるために必要なことを自分で全部用意すると、とっても時間がかかってしまうので」

― シンガポールからのリモートでの業務に関してはいかがでしょうか?

「そもそも『iemo』の立ち上げも遠隔で行っていたので、特に問題ないですね。もちろん開発する上で近くにいるほうがいいときもありますが、サービスのローンチが遅れるとかの問題に直面したことはないですね。

シンガポールにあるDeNAの支部には、私以外『iemo』のスタッフはいなくて、全員渋谷のヒカリエオフィスにいます。私は使われていない会議室を陣取って、そこでテレビ会議を行ってやりとりをしています。

毎月1回、月曜日の朝から金曜日の夜の5営業日だけ日本にいるようにしているので、対面でしかできないコミュニケーションに関しても問題ないです。帰国すると面談、営業、ランチ、会食など、対面でしかできないことに時間をしっかり割いているので、不足なくやれていると感じています」

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撮影と事前打ち合わせのみを対面で行い、インタビューはDeNAのオフィスでテレビ会議形式で行った。

― 現在の村田さんの『iemo』とDeNAの別事業に対する業務の比率と、執行役員として4カ月間過ごされての率直な今の気持ちを教えてください。

「業務としては、DeNAの仕事が3割、『iemo』が7割ですね。私がベンチャー畑の人間だからか『ベンチャーのほうが楽しいですよ。挑戦できますよ』といったコメントを求められることが多いのですが、ベンチャーの中で事業を立ち上げ運営させるのと、大企業で事業を立ち上げ運営させるのでは、全然スケールが違いますね。

今まで自分の会社でサービスを作ってきた場合、リソースは全て自前だったけれど、DeNAに入ったら、人・お金・他の事業部のノウハウ・プログラムのソースなどなど、ナレッジがそこらじゅうにゴロゴロ転がっているんです。たとえば、この人がどうしても必要! というオファーを出すことももちろんですが、部署移動をわざわざしてもらわなくても、スケジュールさえ空いていれば、社内の部署横断でミーティングをしてもいいんです。

この前日本に帰ったときは、私は動画コンテンツについて興味があったので、南場さんが5年かけて口説いたという『Showroom』の総合プロデューサー前田裕二さんに、朝9時から社内のカフェで質問攻めをしました(笑)。ここに入れば、業界の最先端の生の情報がいくらでも手に入るんです。

大企業のメリットを活かしつつマインドはベンチャー精神で、事業に全力でコミットする。予算に対しては今も厳しく絞めて、早く黒字化させるように頑張る。でも、攻めるときはちゃんとお金も人的リソースも投入して攻める。それができるのはすごくやりがいがありますね。予算も時間も緩急をつけて、事業に注力していけることに感謝しています。起業家だった私と大企業とのこんな組み方もあったのかと自分自身驚いていますし、非常にいいマリアージュが生まれていると感じています」


衣・食・住など専門分野に特化したメディアをC2C→C2B2Cの構造に

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― 2015年はDeNAの中で『iemo』をどのように成長させていきたいと考えますか?

「2014年はメディアとして認知されるべく、コンテンツを多くの人に楽しんでいただくフェーズでした。今年は『iemo』を使って家や暮らしのあり方を変えるユーザーを生みたいと考えています。モバイルで家や暮らしの情報にリーチできるという状態から歩みを進めて、ユーザーが新しい方法で家を購入できたり、工務店、インテリアコーディネーター、ディベロッパー、ハウスメーカーなどの専門家と出会い、暮らしをカスタマイズできる場やマッチングサービスを提供していきたい。C2Cの形から、C2B2Cの形にシフトしていければと思っています」

― 他メディアでもこれからは「バーティカルメディアが来る」と語っていらっしゃっていますが、DeNAの仕事では何を目指していきたいのでしょうか?

「『MERY』を運営しているぺロリでは、Eコマースの従来のあり方を変化させていく仕組みを作っています。DeNAは衣は『MERY』、食は『CAFY』、住は『iemo』と衣食住の特化型のキュレーションメディアを揃えたので、今年は他のジャンルも展開していきます」

― 具体的には何のジャンルですか?

「まだ言えないのですが、春先以降にリリースになりますね!」

― 最後に、今後DeNAでの村田さんの挑戦を教えてください。

「国内のベンチャー企業がメルカリgumiみたいに大金を調達できるケースはまれです。今後は『iemo』みたいに買収されて、大企業の中でサービスを大きくしていくことや、そのノウハウを使って新たにサービスをスタートさせるケースが増えてくると考えています。その先駆けとして活動できていると思うので、大企業の中で自分が持っている事業をどうスケールさせていくかが私のチャレンジだと思っています。

ベンチャー業界の周りのみんなが『村田いつやめるの? 窮屈じゃないの?』と聞いてくるんですが(笑)、ベンチャーを立ち上げて1、2年のフェーズでは経験できない挑戦ができて、とてもエキサイティングな毎日なんですよ。大企業には資金と優秀な人材が眠っているからこそ、そこを交通整理して、キュレーションしていくことが私のミッション。新たな環境で、インプットして、ダイナミックにアウトプットをする。画材(人、モノ、ナレッジ、資金)がたくさんある最高の環境で創作活動ができていて、今村田は最高に楽しいんですよ」

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(text:杉本綾弓)


(2015年2月27日HRナビ「『大企業のリソースが事業に緩急をもたらす』。2015年の『iemo』とこれからの村田マリの挑戦」より転載)
 

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