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香川真司は現時点でベストな選択をした

2014年09月01日 17時01分 JST | 更新 2014年10月31日 18時12分 JST
Alexandre Simoes via Getty Images
DORTMUND, GERMANY - AUGUST 31: (EXCLUSIVE COVERAGE) New signing Shinji Kagawa (L) of Dortmund poses with Michael Zorc, Borussia Dortmund's Director Sports Sportdirektor on August 31, 2014 in Dortmund, Germany. (Photo by Alexandre Simoes/Borussia Dortmund/Getty Images)

ルイス・ファン・ハール監督のもと、苦難を覚悟でマンチェスター・ユナイテッド3シーズン目に挑もうとしていた香川真司。新体制初の国際舞台だった7~8月のギネス・インターナショナル・チャレンジカップ(アメリカ)ではボランチやトップ下でテストされ、トップ下で起用された時には彼らしい高度な技術と創造性を見せていた。しかし、マタをファーストチョイスにしたいという指揮官の思惑はどこまでも変わらなかった。

その後、同大会に出場しなかったヤヌザイが合流し、8月最終週にはレアル・マドリードからディマリアを獲得することが正式決定。アタッカーのポジション争いが非常に激化し、ファン・ハール監督から事実上の戦力外通告を突きつけられるなど、彼を取り巻く状況は険しくなる一方だった。モイーズ監督が率いた昨季から「ユナイテッドで勝負したい」と果敢に挑戦する意欲を持ち続けた香川も、さすがにこの苦境から目を背ける訳にはいかなくなったのだろう。

こうした結果、欧州移籍期限終了ギリギリになって移籍話が急浮上。アトレティコ・マドリーやバレンシアなどスペイン行きの話が盛んに挙がったが、最終的に本人が決断したのは古巣のドルトムントへの復帰だった。

2010年夏に初めて欧州の扉を叩いた際、絶大な信頼を寄せてくれたクロップ監督が今も指揮を執り、グロスクロイツ、ブワシュチュコヴスキ、ギュンドアン、ケールら当時のチームメートも残っている愛着のあるクラブで再起を図りたいと考えるのは極めて自然なこと。既に新シーズンが開幕していることを考えても、未知なるスペインへ赴くのはリスクが高い。慣れたドルトムントであれば、チームに溶け込むのも時間がかからないし、戦術理解もスムーズだ。こうした側面を考えても、香川はベストな選択をしたと言っていいだろう。

彼が在籍してリーグ2連覇を果たした11-12シーズン当時の主力のうち、レヴァンドフスキとゲッツェはバイエルンへ移籍したが、その後、ロイスやムヒタリアン、オバメヤン、インモービレ、アドリアン・ラモスらが加わり、選手層は一段と分厚くなっている。レヴァンドフスキがいた昨季は彼が1トップに入り、2列目にグロスクロイツ、ムヒタリアン、ロイスが陣取る形が多かったが、レヴァンドフスキが去ったことで、今季はまだ攻撃陣の組み合わせが流動的なようだ。30日(現地時間)のアウクスブルク戦ではオバメヤンが前線に陣取り、2列目にムヒタリアン、ヨイッチ、ロイス、グロスクロイツが並ぶ4-1-4-1の形を採用した模様だ。

クロップ監督は香川のベストポジションをトップ下だと考えており、彼を起用する時は4-2-3-1に戻すだろう。その場合、2列目は右からグロスクロイツ、香川、ロイスと並び、ムヒタリアンはボランチに下がるというのが有力視される。今後、インモービレやラモス、ボランチのシャヒンやギュンドアンが加われば、ポジション争いが激化するのは間違いない。

ただ、ドルトムントにはブンデスリーガに加え、すでに始まっているDFBポカール、さらには9月16日(現地時間)現地時間からスタートするUEFAチャンピオンズリーグもあって、9月中旬以降はタイトなスケジュールになる。となれば、メンバーを変えながら戦う必要が出てくる。昨季のドルトムントも負傷者続出に苦しんだが、今季の彼らも似たような状況に陥っている。それだけに、即戦力の香川にかかる期待は大きいのだ。

本人も一度出て行ったクラブに戻ったことで、在籍した2シーズン以上の働きを見せなければならないという自覚があるはず。マンチェスターUの2年間は揮官交代やクラブの方向性の変化によってさまざまな役割を求められ、最大の武器であるゴール前の鋭さが失われつつあった。その低調なパフォーマンスが2014年ブラジルワールドカップでも出てしまった。香川自身も日本の惨敗の責任を重く受け止めている。だからこそ、3シーズンぶりにプレーする古巣では得点により強くこだわる必要がある。

そのためにも、現在のドルトムントメンバーとのコミュニケーションを積極的に取り、お互いの特徴をいち早くつかむことが肝要だ。幸いにしてロイスもムヒタリアンも同じ89年生まれ。感覚的にも打ち解けやすいはずだ。何よりもグロスクロイツのような、香川復帰を心待ちしていた仲間がいることは大きい。彼らの期待と信頼に応え、さらなる飛躍を遂げることが、今の彼に託された最大の命題だ。

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元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

(2014年9月1日「元川悦子コラム」より転載)

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