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『闇金ウシジマくん Part2』―闇金から学ぶ経営と人生 宿輪純一のシネマ経済学(40)

2014年05月06日 00時43分 JST | 更新 2014年05月06日 21時53分 JST

いわゆる闇金をテーマとした映画も多い。本作の原作は「週間ビッグコミックスピリッツ」に連載され、それがテレビドラマとなり、2012年に『闇金ウシジマくん』として映画化された。本作はその続編にあたる。舞台は東京(多分、新宿あたり)であろうか。

金融界、そして学問の世界にいるものとして、最初に申し上げるが、闇金は犯罪である。さらに主人公ウシジマは「頭めがけて金属バットをフルスイングできる」別世界の人間でもある。この映画はフィクションであり、決して真似をしてはいけない。PG12の指定もついている。PGとはParental Guidance(親の指導・助言)のことで、PG12とは12歳未満(小学生以下)の鑑賞には、成人保護者の助言や指導が適当ということである。

本作は、原作のエピソードでいうと「ヤンキーくん」編と「ホストくん」編を再構成したもの。闇金のカウカウファイナンスを中心に、ギリギリの底辺の生活の中で、ヤンキー、ホスト、ヤクザなどが金をめぐるって、当然、暴力、恐喝、誘拐、強盗、監禁など過激な事件を巻き起こす。

通常、高利貸しの代表的な金利と言ったら10日で1割(トイチ)であるが、カウカウファイナンスの社長ウシジマは10日で5割(トゴ)というバカ高い金利で金を貸す。それだけ切羽詰った人にお金を貸しているのである。当然、焦げ付きが起こり、取立ては熾烈を極める。

ある日、マサルは暴走族のヘッド、愛沢のバイクを盗み、慰謝料として200万円をウシジマに借りるように脅される。ウシジマはマサルを気に入り、とりあえず闇金で働かせることにした。しかし、うまくいかず、更に愛沢にボコボコにされ、さらなる誘拐事件に向かっていく。他にもホストと純真な少女とそのストーカーの話なども絡まるなど、さまざまなギリギリの人間ドラマが展開される。しかし、このウシジマは悪いことをしているが、ストーリーも良くできていて、途中から正義の味方に見えてくるから不思議である。

このウシジマ役の山田孝之の表情を全く変えないクールな演技がいい。彼はヒゲが濃くて、生え方に特徴がある。また『のぼうの城』(2011年)などの演技も光って、最近、2011年6本、2012年5本、2013年3本、2014年すでに3本に出演するなど売れっ子である。

本作品に登場する人物はどこか特徴がある。欲望が強く、ギャンブルやホストクラブに入れ込む、見栄っ張りで大きなことをしたい。でも、継続的な辛い努力は嫌いなようである。登場人物のひとこと「何一つ長続きしない、何一つものにならねえ」そして、このような高金利に手を出す。ある意味、病気なのかもしれない。

実は闇金に手を出した時に終わっていることが多い。企業の場合で考えるとよく分かる。もちろん、当たり前のことであるが、借りたおカネは返さなければならない。例えば、10日で1割(トイチ)の金利で借りる場合で返済する場合には、そのお金を借りて行った事業の収益率が10日で1割なければならない。このような事業はまずない。すなわち、返済することはまずできないのである。逆におカネを貯める場合には、コツコツ積み上げるか、他の人からもらうしかないのである。

日本の財政も借金の拡大が止まらないが膨らんできている。残高的に返済できるのかと不安がよぎるレベルである。これで、万が一、闇金のように金利が上がってきたら、ひとたまりもない。日本の財政赤字も年金や社会保障に使われる割合が多く、将来の成長に向かう投資の割合が少ないのもまた不安材料である。

本作は「血の通った金融教育」の題材としてもいいかもしれない。一つ難点を言わせていただけるならば、終盤でウシジマが安い飲み屋で飲むシーンがある。二人で飲んでツレが先に3000円を置いて出て行く。恥ずかしながら、筆者もそのような飲み屋を愛用しているが、あの注文だと割り勘であれば、その半額ぐらいかなと個人的に思う(笑)。

ちなみに、筆者のデスクの前に本当にウシジマ(本名)くんが座っている。漢字が違うが。彼は、真面目で優秀な金融マンである。

「宿輪ゼミ」
経済学博士・エコノミスト・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年4月から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の学生さんがもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたでも参加でき、分かり易い講義は好評。「日本経済新聞」や「アエラ」の記事にも。この2014年4月2日の第155回のゼミで“9年目”に突入しました。
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