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なぜフランスはテロの標的になりやすいのか?--「祈る」だけでなく「知る」ことも

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2015年1月7日、風刺漫画で知られるフランスの政治週刊紙シャルリー・エブドの本社が武装集団に襲撃され、警官2人や編集長を含む計12人が殺害された。その事件後には'Je Suis Charlie'(私はシャルリー)というスローガンと共に、テロに屈しない意思を示すため多くのフランス人が大規模な行進に参加した。

しかしながら、その10か月後である11月13日、ISISの戦闘員と見られる複数の犯人による銃撃及び爆発が同時多発的に発生、死者132名負傷者300名以上を出す惨事となった。

上記した二つ以外にも、教会襲撃を計画したアルジェリア人学生の逮捕(4月)、フランス南東部リヨン郊外のガス工場襲撃(6月)、パリ行き特急列車内でのテロ未遂行為(8月)など、昨年フランスはイスラム過激派に絡んだテロまたはその未遂行為に苦しんだ一年となった。

なぜフランスはイスラム過激派によるテロの標的になりやすいのか。


対外政策

他西洋諸国と比較して、フランスはイスラム世界と関わる歴史が長い。1830年にフランスに征服されて以来、北アフリカに位置するアルジェリアは1962年の独立までフランスの一部を成していた。8年にも及ぶ独立戦争では約70万人が亡くなり、また1961年には、独立を訴えるアルジェリア人によるデモがパリ警視庁の治安部隊により鎮圧され、橋からの放り投げ、銃殺など非情な形で約200人が殺害された。

他にも、第一次世界大戦後にはフランスは中東のシリアとレバノンを支配下に置いている。フランスは自国の国益を守るため、北アフリカを中心に旧植民地への経済的・軍事的介入を独立後も継続した。

現在は、イスラム過激派との闘いとして、西アフリカに位置するマリへの介入やイラクへの軍隊派遣、米国率いる対ISIS有志連合空爆への参加、対ISIS作戦への支持としてペルシャ湾への航空母艦派遣など、イスラム地域と広く関わりを持ち続けている。

 
世俗主義の台頭とムスリム社会を囲む緊張感

その一方フランスは、19世紀半ばに始まった移民の歴史の初期段階から、移民にも国民とほぼ同等の権利を与える同化政策を取ってきた。

同時に国内では世俗主義が台頭、イスラム教徒の女性が顔や全身を覆うブルカの公共の場での着用禁止や、シャルリー・エブドによる預言者ムハンマドの風刺画が波紋を呼んでいる。近年は極右政党であるフランス国民戦線も勢力を増しており、フランス国内のムスリム社会を囲む緊張感は衰えを見せない。

フランス国内における「格差」問題もまた、その緊張感を強めている。第二次世界大戦後、北アフリカから多くの移民がフランスへと渡り、パリやリヨン近郊へ居住。この郊外を表すフランス語「banlieue」(バンリュー)は、「移民に支配された貧民街」という軽蔑的な意味をも含んでいる。
 
フランスの対外政策、世俗主義や格差から生まれる緊張感...、様々な要因が絡まり合い、過激派誕生の一因が作られていると言えるだろう。

特にイスラム過激派によるテロが起きれば、そのテロに対する恐怖心や怒りが、フランス人口の約7.5%(約450万人)(2010年)を占めるイスラム教徒への「疑い」社会的疎外へと繋がり、更なる過激派の誕生へ繋がるという悪循環が生じかねない。実際、若者を中心に多くのフランス人市民がシリアへと渡航し、イスラム国を含む過激派組織の戦闘員となっている。
 
 
昨年11月のテロが起きた後、#PreyforParis(パリに祈りを)というハッシュタグと共に多くの人々がSNSのプロフィール写真をフランス国旗に変え、犠牲者へ追悼の意を表した。

それに対して、「なぜフランスの犠牲者に対してだけ祈りを捧げるのか?」「西洋諸国側の立場だけについている」など様々な批判・議論が巻き起こったが、私自身はその行為自体を否定することはしない。

しかしながら、祈るだけではなく、知ること、そして考えることもまた大切ではないだろうか。

テロという行為は決して許されるものではなく、そこに同情の余地が無いことは言うまでもない。

しかしながら、情報が溢れ返り、個の影響力が強くなっている時代、そしてグローバル化が不可逆なものとして進展し、世界中のあらゆる事象が連関を強めている時代を私たちは生きているからこそ、知る、そして考えるという過程を踏み、自分の意思をしっかりと掲げた上で取捨選択していくことが大切ではないだろうか。
 
(3月11日 Platnews「なぜフランスはテロの標的になりやすいのか」より転載、一部修正。)

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